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予防的運動はなぜ続かない?
糖尿病をはじめとするサイレントキラーと呼ばれる基礎疾患。これらは疾患別リハの対象にはなっていませんが、「予防的観点」からみると、療法士が関わった方が良いと思われます。
すでに診療ガイドラインという形で、いくつか運動療法について言及されていますが、運動を継続できている人に出会うことは稀です。
運動を継続できない理由の一番は、「症状がないため、運動の必要性&効果を感じにくい」ということが挙げられますが、果たしてそれだけでしょうか?
糖尿病診療ガイドラインを例に
ではまずは糖尿病を例に、ガイドラインが推奨している運動を確認してみましょう。
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/gl/GL2019-04.pdf
推奨している運動とは
- 週3回、計150分以上の中〜高強度の有酸素運動
- 週2〜3回、8~10種類のレジスタンストレーニングを10~15回を1セットで数セット行う。
というものです。
もっと運動できる方はインターバルトレーニングも推奨されています。
これらは、ガイドラインに記載されているものなので、効果についてはエビデンスがあります。
しかし、効果が認められている運動でも、主な対象になるであろう50代以上の方々にこの運動を継続するよう
動機付けられるかどうか?というとかなり難しいと思われます。
特に懸念されるのが、推奨される運動強度が高いということ。普段運動をしてる人でも、この基準以下の方も多いはず。
それを、運動不足な病気の予備軍に該当する方々に当てはめるのは少々乱暴な気がします。
日常生活活動によるエネルギー消費(NEAT)
そこで最近注目されている項目があります。
それが「日常生活活動によるエネルギー消費(NEAT)」です。
このNEAT、標準体重者と肥満者に大きな差があり、日常生活の座位時間が長いほど、死亡率と心血管疾患が増加することが示されています。
簡単にいうと、特別な運動よりも、日常生活で適度に活動した方がいいですよということ。
今なら皆さん実感できると思います。いわゆるコロナ太りはNEATの減少にあります。
勤務中の姿勢は別もの
ちなみに、「座位時間が長い」ということをピックアップして、職場でも立って仕事をしましょう!という活動が散見されますが、普段デスクワークの人が、スタンディングデスクを使って仕事をしても、消費カロリーには殆ど差がありません。
(座位と立位のカロリー差は0.15kcal、65kgの男性が6時間立っても54kcalしか差がない。)
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/2047487317752186
つまり、「立位」にメリットがあるのではなく、あくまで「活動」なんです。
日常生活を見直してみる
私たち自身や、親世代、祖父母世代の「家の中での活動」を想像してみてください。ほとんどの時間をゴロゴロしながらスマホを見るか、TVの前のソファーに必要なものを集めて、できるだけ動かなくてもいいようにして過ごしていませんか?
家の中で活動量を増やすのであれば、役割が必要になります。家事全般、もしくは一部でもOK。庭の手入れなんかも良いです。
可能であれば、趣味活動で外出できる機会があるとなお良し。
運動療法として有酸素運動や筋トレを勧めるより、「活動と参加」を促し、日常生活活動のエネルギー消費を増やす方が、
QOLの向上にも直結します。
患者さんに運動してもらいたいと思ったら、「PTの出番!!」というイメージですが、NEATという観点からみると、OTの方が向いているのかもしれません。エネルギー消費を「活動と参加」という観点から捉えると、また違う視点でいろんな提案ができると思います。
今まで以上にOT的な発想、リハビリテーション的な発想が疾病予防に必要になりますが、辛い運動をただ続けるよりも充実した生活を送ることができるのではないでしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
リハカレ認定講師
理学療法士 中嶋 光秀