腰痛で緩めておきたい筋の触診とアプローチ

腰痛患者に対して、ダイレクトに腰部へマッサージを加えたり、徒手的アプローチを行うのは、身体の構造や特徴を知っていれば、第一選択にはならないでしょう。

慰安であれば良いと思いますが、リハビリテーションは治療です。

 

腰部が過緊張になっている原因を考えれば、自ずと緩めなければならない部分が他に見えてきます。

本日は、腰痛患者の緩めておきたい3つの筋について私見を交えながら。

 

 

腸腰筋

起始:腸骨内面、TH12~L4

停止:大腿骨小転子

作用:股関節屈曲、骨盤前傾

 

特に緩めておきたい部分は、腸骨筋と大腰筋の間隙(かんげき)です。

大腰筋は脊柱と繋がっているため、腰部の動きや安定性に深く関与しており、インナーマッスルとして姿勢制御に関わるということも言われています。

これら二つの筋が筋間で癒着を起こし、選択的に収縮出来ない状態は、腰部への負荷を増大させてしまいます。

 

触診:患者を背臥位、股関節屈曲位とします。ASIS(上前腸骨棘)から1横指内側に指をあて後内側へと指を沈めていきます。腸骨方向(後方)には腸骨筋、身体の中心方向には大腰筋が位置しますが、腹筋群や内臓の更に深層に位置するため、直接は触れません。位置が分かりにくい時は、患者に「足を持ち上げてください」と指示しましょう。筋の収縮が感じられます。当たり前ですが、患者の痛みには注意しましょう。

 

 

横隔膜

 

横隔膜は、呼吸に関係する筋肉の一つです。

横隔膜の柔軟性は、深い呼吸をするために重要ですが、もう一つ先ほど挙げた大腰筋との連結があります。

これによってコアと言われる、体幹を安定させる機能が働くのです。

 

触診:肋骨の下縁から指をその内側に入れるように沈めていきます。そうすると呼吸によって動く横隔膜の感触が感じられるはずです。そのまま患者に深呼吸を続けてもらうだけで、緩んでくるのを感じることが出来るはずです。大腰筋と同様、背臥位、膝屈曲位で相手の痛みなどに注意しながらゆっくりと緩めましょう。

 

 

後脛骨筋

 

起始:脛骨、腓骨の上後面

停止:足根骨

作用:足の底屈・内転・打ち返し

 

何故腰痛患者の足部の筋を緩めるのか?

人が姿勢をコントロールする時、足関節・股関節・ステップの3つが機能すると言われています。そして足関節は最も先行して働く部分ですが、後脛骨筋が固くなっているとその機能が上手く働かなくなり、その代償を他の部分に求められてしまいます。足の内側縦アーチを機能させるためにも後脛骨筋の働きは重要です。

そしてもう一つ、後脛骨筋は深部の筋膜によって大腰筋と繋がっています。ここの固さは時として大腰筋の機能を阻害する因子となる場合もあるのです。

 

触診:かなり深層にあるので、筋腹の触診は難しいですが、腓骨頭下方後面から下腿中央に向かって圧を加えると触知できます。筋収縮(底屈・内反)させると、内果の後方でも腱を触知出来ます。そのラインに沿ってゆっくり圧を加えるように緩めましょう。

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