関節には筋による関与以外にも、静的安定作用として靭帯などの
組織も関与してきますね。
膝関節ではMCLやLCL,ACL,PCL以外にどのようなものがあるのでしょうか?
【内外側膝外支帯】
この膝蓋支帯は、内側広筋や外側広筋の延長上となる組織が呼ばれます。
●内側膝蓋支帯は、もちろん内側広筋の線維の延長上にある組織です。
(外側膝蓋支帯は腸脛靭帯に隠れて見えませんね)
お手持ちの解剖図もご覧ください
解剖図では白色で描かれておりコラーゲン性の強い組織でそれ自体に収縮力はほぼないです。
内転筋結節にも付着し、膝蓋靱帯と内側側副靭帯の間に停止し、内側側副靭帯とも一部の線維が交差しているとされています。
●外側膝蓋支帯は外側広筋以外に大腿直筋、腸脛靭帯から起始を持ちます。
また脛腓関節包の一部の線維を接しているようです。
これらの線維に収縮力はなく、膝関節伸展機構の補助的な張力伝達装置として
働きます。
【内側膝蓋支帯の術後の問題】
どちらも人体にとっては必要な組織であるため存在しているわけですが、
膝の手術後にとりわけ着目すべき側があります。
それは内側膝蓋支帯の方で、
”一般的な膝関節外科の進入路のなかの前方進入路や
内側進入路では内側膝蓋支帯を経由するため,その後の炎症から修復過程に至る際に,容易に癒着しやすい環境にあると考えられる”
と2)ではされています。
TKAの術創部はまさにこの部分にありますね。
癒着を防ぐためには、膝蓋支帯の機能を考えるのが1つの糸口となります。
それは、内側広筋から続く線維であるという事です。
よくパテラセッティングを行う事はあるかと思いますが、それは筋を鍛える目的だけでなく
内側広筋が収縮することによって内側膝蓋支帯周囲の癒着防止にもつながるわけですね。
こういった文献もご参考ください
- 内側広筋の選択的収縮に関する筋電図学的検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/1995.22.2/0/1995.22.2_462/_article/-char/ja/ - 健常成人に対する内側広筋斜走線維の トレーニング肢位の検討
http://aichi-npopt.jp/dl/info_paper_back/27_02_04.pdf
【膝蓋支帯の深層部にある靭帯】
クアドの線維も合わせるとパテラで五芒星を描くように配列されていますね。
<内側膝蓋大腿靱帯(MPFL) 外側膝蓋大腿靱帯(LPFL)>
この靭帯はパテラの内方移動や外方移動を制動したりもします。
(イメージとしてはこのような感じですね。MCLやLCLの深層部に入り込みます)
文献によっては膝蓋支帯の横行線維と書かれることもあります。
パテラを外方移動すると内側膝蓋大腿靭帯が緊張し、
パテラの外側の内面が触れるようになるため外側膝蓋大腿靭帯が触れます。
パテラを内方へ動かすと逆になります。
また、内側膝蓋大腿靭帯は内転筋結節に付着しており内転筋結節周囲は組織が豊富ですね・・・
<内側膝蓋脛骨靭帯(MPTL) 外側膝蓋脛骨靭帯(LPTL)>
この靭帯はあまり特に名前を聞くこともないかと思いますが、パテラにつく靭帯として存在しています。
外側膝蓋脛骨靭帯は未発達な方もまれではないようです。
https://www.instagram.com/p/BkVPi2-n08Q/?taken-by=fisio_2.0
リアルな検体ですので閲覧にやや注意が必要ですが
こちらのページの画像が実際の解剖のようです。
【その他】
その他の筋性でない組織は、膝蓋靱帯や膝蓋下脂肪体がありますね。
膝蓋下脂肪体はACLや半月板の術後などに炎症を起こしたまま放置してしまうと
伸展制限を作ってしまう事もあるので注意です。
膝蓋靱帯の横から脂肪体を動かすようにセルフマッサージなどをお伝えすることもあります。
(炎症が強いときはもちろん控えます)
参考、引用文献・画像
- 1)Visible Body Muscle Premium
- 2)林 典雄著:関節機能解剖学に基づく 整形外科運動療法ナビゲーション 下肢・体幹
メジカルビュー社 2008 - 3) ジャン=ピエール・バラル / アラン・クロワビエ 共著:
新マニピュレーション・アプローチ<下肢> 科学新聞社 2014年
お読みいただきありがとうございました!