運動麻痺のリハビリに必要な知識

2018年02月21日 admin_ccra

脳卒中のリハビリにて最も目にする障害といえば、
「運動麻痺」ですね。

運動麻痺によって筋収縮が起こせずに、立位で膝折れしたり、歩行で脚を振り出せなかったり、
箸やスプーンを持つことができなくなったりする場面を見かけると想います。

運動麻痺とは「随意的に筋収縮が起こせない状態」です。
何故、筋収縮が起こせないのか、どのような原因があるのか、
紐解いていってみたいと思います。

紐解くことによって階層的な構造である脳のどのエリアの問題で運動麻痺が起こっているか、
判断できアプローチの精度も上がっていきます。

今回は効果器(筋肉)、脊髄、脳幹、大脳半球レベルに階層を分けて検討していきたいと想います。
錐体路が障害しているから筋収縮ができない、とだけ思っていた方はぜひご一読ください。

 

随意的に筋収縮を起こすには

まずは効果器〜脊髄レベルでの運動麻痺に影響する要因を考えてみましょう。

筋収縮を規定する要素は大きく分けて2つあります。
1つは骨格筋自体の構造、もう1つは神経系のシステムです。

骨格筋の構造


筋の形状(紡錘筋・羽状筋)、筋繊維タイプ(速筋・遅筋)に加え、萎縮した状態などの廃用性の影響、過剰努力などの代償による影響などが関連します。

主に廃用性の問題としてあげられるのですが、不活動になった状態が続くと神経系の問題のみならず、筋骨格の要素にもアプローチは必要です。

・臨床上大切なことは

筋収縮が起こせる適切な筋の長さや柔軟性が保たれていること、関節・周辺構造体がスムーズに動くこと、
筋、関節のアライメントが適切であることが筋収縮を起こす為の土台と言えます。

そのために例えば筋肉に関して言えば起始や停止のみならず、どんな走行で走っているか、
しっかりと筋肉の縁を辿っていける解剖学の知識や触診能力は必須です。

神経系のシステム

運動単位の動員数や発火頻度が筋収縮を規定します。

※運動単位って:筋収縮を起こす為の最終的なトリガーは脊髄前角に存在するαモーターニューロンです。
このαモーターニューロンが複数の筋繊維を支配しており、
この一つのαモーターニューロンと筋繊維群が運動時の(筋出力を発揮する際の)最小の単位となるので、
運動単位と呼びます。運動単位の動員が多いほど筋収縮は強く、発火頻度が多いほど収縮時間が長くなります。

よって筋収縮を引き起こすトリガーであるαモーターニューロンの活動は何によって左右されるかを知っておかなければなりません。
影響を与えるものとして興奮性(筋収縮を起こす)と抑制性(筋収縮を抑える)の2つに分けられます。

興奮性
・皮質脊髄路
・興奮性介在ニューロン
抑制性
・1a抑制性介在ニューロン
・レンショウ細胞
・1b抑制性介在ニューロン
・抑制性介在ニューロン

ざっくりとまとめると興奮性にせよ、抑制性にせよ、脊髄レベルで活動するものと、上位中枢(大脳・脳幹)からの入力によって活動するものに分かれます。

今回は脊髄レベル中心に活動するものについて抑えておきましょう。
(上位中枢からの介入に関しては次回以降紹介していきます)

それは反射です。

反射というものは元々外部からの刺激に反応する自動的・かつ定型的な活動と認識されていましたが、
現在では運動課題に応じて変化する特性があることがわかっています。
動作を行う上で反射があるおかげでスムーズに協調的な動作ができるようになっています。

・臨床上大切なことは

反射が正常に起こる為に皮膚や筋紡錘などの各受容器が常に正常に刺激を感知できる状態にしておく。
皮膚の色が黒ずんでいる部分、硬さがある・遊びがない部分、
筋では同じ筋の中でも硬結のある部分などは介入して可能な限り感覚情報を受け取りやすい状況にする必要があります。

また、実際に動作に必要な箇所だけでは無く、拮抗する部位(屈筋と伸筋の関係性)や
動作時に支持となる部位(歩行の遊脚側と立脚側の関係性など)に関しても介入しておくことが重要です。

まとめ

運動麻痺への介入において効果器〜脊髄レベルで考えておくことは

・目的動作に必要な筋の変性(萎縮、弛緩など)やアライメントの異常がないか確認し、解決できるものは介入する、関節の変性、アライメント異常に関しても同様である
→IAIRのB-class therapistにて習得可能

・反射がスムーズに行えるように末梢の感覚受容器が適切に情報を受け取れる状態にしておく必要がある。
→CCRAのbasic, advanceコースにて習得可能

のこれら2つのことが重要となります。

加えてこれらを区別する方法、つまり筋緊張の異常が神経因性なのか、非神経因性なのか、
そもそも異常と正常の違いとは、などを判断できる能力も養っておかなければなりません。

 

今回もお読み頂きありがとうございました。
次回は上位中枢の視点から紹介していきます。

CCRA代表 福田俊樹

参考資料:プロメテウス解剖学アトラス、カンデル神経科学