ぶん回し歩行になる3つの要因①

2017年10月21日 admin_ccra

片麻痺の歩行の代表的なパターンとして
ぶん回し歩行というものがあります。

麻痺側の脚を振り出す際にコンパスのように半円を描きながら振り出すアレです。
このぶん回し歩行の原因となる要因を考えてみたいと思います。

【ぶん回し歩行の3つの要因】

臨床上良く遭遇する3つの要因をまずは紹介します。

1. 麻痺側の立脚期の問題
2. 非麻痺側の立脚期の問題
3. 麻痺側の遊脚期の問題

本日はこの1. 麻痺側の立脚期の問題についてです。

ぶん回し=遊脚期なのに、なぜ立脚期の話?
と思うかもしれませんが、

遊脚期に起こる筋活動は僅かであり、
その為振り出しがうまくいくかどうかは立脚期がうまく制御できていたか、
という点が重要になってきます。

【振り出しにおける立脚後期の重要性】


脚を振り出す為に、うまく制御出来ているかどうかを評価する部分は
立脚後期です。大まかにいえば踵が浮いて振り出す手前までの期間ですね。
※厳密にいうと第1中足骨頭を荷重線が超えるまで。

ぶん回し歩行の方とそうでない方の歩行を見比べてみると
「立脚後期の時間」の違いに気づくでしょう。

正常な歩行と比べ、極端に短くなっており、
踵が浮いた時点ですぐに立脚後期が終わってしまい下肢が外旋したり、
つま先が僅かにふれている状態でワンテンポ静止したりしていることが見て取れます。

本来の立脚後期とはどのようなメカニズムなのでしょうか、

弓をイメージしてみましょう、弦を引っ張ると弓がしなって力を蓄えます。
その後弦を離すと復元力が働き勢いよく弦が動きます。

これを人の脚で考えると、立脚後期にて力を蓄えて、
前遊脚期(第1中足骨頭を超えた後)で弦のように脚が振り出される訳です。
この仕組みがあるからこそ、遊脚期の筋活動は少なくて済むようになっています。

【立脚後期のメカニズム】
立脚後期で下肢を弓として成立させる為には弓の「両端」の固定が必須です。
両端が固定されていないと弓をしならせることができません。
目の前の30cmの定規をしならせる為には両手で端を持って行いますよね?

この「両端」は今回の場合、体幹と足部になります。
立脚後期は体幹が安定して、
かつ足部がしっかりと地面を捉えていることによって成立するのです。

※赤色が弓の部分、黒い丸が体幹と足部

体幹と足部に着目するのですが、体幹は両側性支配である為、
脳卒中後遺症者で片麻痺があったとしてもある程度支持として活動が期待できます。
つまり、より着目すべきは足部の場合が圧倒的です。

【足部で地面を捉える為に】
立脚後期にて安定性と前方への推進力を得るためには、
足部と地面との固定が必要です。

足部が地面を捕らえる為=足部で地面に対して圧を加える為には。
あなたは今座ってこのコラムを読んでいますか?立って読んでいますか?
寝ている方は一度起き上がってみましょう。
どのようにすれば足部に対して圧を加えることができそうでしょうか。

・力を込めて踏みつける
・体重を載せる
・踵を浮かす
どれも圧を加えることができますが、歩行動作を考えると踵を浮かすことが適切です。
立脚後期の下肢の筋活動をみてみても下腿三頭筋の活動が非常に高いことが分かります。

つまり下腿三頭筋の活動を高めることが立脚後期の形成に重要です。
ただこれだけでは、足部で地面をしっかりと捉えることはできません。

【骨の重要性】

足部の構造を見てみましょう。
下腿三頭筋で足部(足趾)から地面に対して圧を送ることができるのですが、
踵より遠位の筋はどれも小さく、体重を支えるには全く力が足りません。
このことより、踵が浮いた状態だとこの下腿三頭筋の力を地面に伝達する為には足部の骨の安定性が保たれていないといけないことが分かります。

骨の安定性で重要なラインは「外側縦アーチ」です。


この図は荷重部位の変化を示していますが、踵から荷重がかかり、
足部の外側を通って小趾、母趾へと荷重が移動していくことが分かります。
よって、外側を移動していくに伴い、外側の支持機構が重要となってきます。

外側縦アーチと呼ばれる支持機構は
踵骨、立方骨、第5中足骨で形成されており。
安定に関わる関節は距骨下関節と横足根関節となります。

距骨下関節の回内外がスムーズに動くか、横足根関節、
とくに踵骨に対して立方骨が外反方向に動くかが外側縦アーチの形成に重要となっています。


左上の丸が距骨下関節、右下の丸が横足根関節(踵立方関節)

【まとめ】
ぶん回し歩行への介入は立脚後期を評価しよう
1.下腿三頭筋が働いているか
2.距骨下関節がスムーズに動くか
3.横足根関節が外反方向に動くか
の3点を確認しそれらに対して介入を行ってみよう。

お読み頂きありがとうございました。

次回はぶん回し歩行の2つ目の要因、
「非麻痺側の立脚期」について紹介していきます。

CCRA代表 福田俊樹

参考資料:観察による歩行分析、カパンジー機能解剖学、プロメテウス解剖学アトラス

追伸1
歩行で足を引きずらないように背屈を気にしがちですが、
立位・歩行において底屈も非常に重要です。

追伸2
踵立方関節は回復期〜慢性期では硬くなっている方がかなり多いです。
また踵骨の方へ立方骨が潰れるように偏位している場合も良く見かけ、
この部分を修正しないと、外側縦アーチが成立しない印象です。