福田陽介

リハビリのゴール設定「自立」「介助」の意味

問診を行い、初期評価を行って、クライアントの現状がつかめてきたら、いよいよゴール設定です。 私は理学療法士なので、理学療法士がやりがちなゴール設定の話をします。   ◇ゴールは自立?介助? ・トイレ動作自立 ・歩行介助 ・独歩   移動能力に関して、これらの達成目標をあげる場面が多いですね。   それぞれの定義を整理すると、なんだか矛盾を感じることがあります。   ◇動作に介助を要する 「介助」とは、誰かの助けを借りながらであれば動作が行える状態、とします。   それくらい何かの機能制限があったり、環境による制限のために助けが必要だったりする状況が目標になる訳です。 シビアな状況です。   「誰かの助け」を必要とする状況だと自宅での生活は難しさが増します。   「誰かの助けなしには生活できないレベルが目標」という判断をすることは、療法士にとって簡単ではないです。 だけど、「機能制限がある」「家屋環境が複雑」であると「介助での動作遂行」を目標にせざるを得ない。   しかし、現実には「一人でできる」ことを本人、家族は強く望みます。     ◇独歩ってなんだ? 「独歩」 私はこの言葉の使用に関して、何度ももめました。 カンファレンスで、計画書の作成で、後輩からの相談で・・・   独歩って、 「独りで歩く」 ことができるという意味だと思っていました。     ところが、カンファレンスに出席した時に *独歩自立 とかいう目標を見せられて、めまいがしそうになった記憶があります。     相手は冗談を言っている訳ではなく大真面目に話しています。 相手は「道具を使わないで独りで歩く状態」を独歩と表現していました。 最初は驚き、次に怒り、最後には呆れました。     使う言葉というのは、その正当性ではなく、集団が使いやすいかどうかで決定されるのだ、ということを思い知らされた瞬間でした。     「一人で歩くことが自分でできるようになる」という表現に違和感を感じませんか? 私の方が間違っているのでしょう、おそらく。     独りで歩けるなら、なんの道具を使ってもいい これなら筋は通ります。     そういう意味では「歩行器を使って独りで移動できる人」は「独歩」な訳ですよ。 ところが、そういう時は「歩行器歩行自立」と表現する。   独歩ってなんだ? その答えが「道具を使わないこと」らしいのです。   5〜6年くらい前の話なので、今は違うと思いますが、とにかく驚き、いちいち訂正していた記憶があります。   最終的には、統一した書類作成のため、表現も統一化へ向かい、私の思いはどこかへ葬られてしまいました。     ◇自立 一番語りたいのが、この「自立」ってやつです。   自立の意味を皆さんはどうお考えですか? ある場所でPTOTSTを対象に聞いてみたら、誰も答えてくれませんでした。 (これは自立の意味がわからないのではなく、私のことが嫌だったのだと思います。わからないはずがないので)   ある方が答えてくれたのは 「選択できること」 という答えでした。     おそらく多くのリハビリ現場ではそのように取り扱われてはいないでしょうし、私の解釈は違います。     リハビリ現場では「自立」は「独りで、自分でできる」状態を指しています。     私の解釈では、自立とは「頼れるものがたくさんある」状態を指します。 例えば、歩行という動作でみた時に ・何も使わず手ぶらで歩く ・杖をついて歩く ・歩行器を使って歩く ・誰かの肩を借りて歩く ・誰かに手を引いてもらって歩く ・何かを伝って歩く というように、頼れるものがたくさんあることを自立した状態と言います。   そうなると、先ほどの「介助」の定義と食い違いが生まれちゃいますね。。。     私が言っているのは「自立した人間」のことであり、「動作の状態」ではないのです。     動作を例に挙げると、 歩行器を使えば一人歩けるが、他の道具では歩けない というのは「歩行器歩行自立」なのですが、歩行器に依存しています。 依存した状態が強ければ強いほど、在宅生活は困難になります。   動作を遂行するための多様性が作れるかどうかも、リハビリに求められるところですね。     「なんでも独りでできる、独りでやる」のは、誰も頼れないという意味で「自立」ではない。 独りでやろうとすることは「自分自身に依存」していると言えます。 「自分でできるから」といって、頑なにサービスを拒むことも「自分に依存している」といえますね。   ◇自立と依存 動作としての自立と、人間としての自立を分けて考えてみました。   リハビリのゴールにとって究極的には「医療や介護からの自立」が目標になると思うんです。 ・ナントカ病院じゃないと治らない ・ナントカ先生のリハビリじゃないとよくならない ・ナントカ法じゃないと回復しない ・ナントカサービスを使わないと生活できない これらは全て、ナントカの部分に依存しています。     一つの何かに依存するのではなく、頼ることができる場所、モノ、ヒトを多く持つことが自立という状態です。 リハビリテーションがもしも「人としての自立」を目指すのであれば、少なくとも「リハビリテーションに依存」することがないように介入していかないとですね。     例えば、徒手的な介入は依存を生みやすい、という話を耳にしたことがあります。 これは、徒手的な介入による効果や感触に対してクライアントが依存してしまうというより「施術者が徒手的介入」に依存しているからではないか?と思います。     徒手介入が必要ないのではなく、徒手介入の受け止め方、使い方を間違えてはならないという話です。 徒手技術に依存するヒト多いですからね。。。   正しい使い方はこちらをどうぞ https://iairjapan.jp/first   依存しない徒手介入方法はこちらをお勧めします。 https://iairjapan.jp/events/category/exp お近くの会場をお探しください。     *お知らせ リハビリや世の中のことを斜めから見つめたメルマガ「福田のメルマガ」 毎週月曜日11:30にこっそりと無料でお届けしています。 登録はこちらから。...

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ただの反復動作や筋トレではない最適化されたアプローチ

◇正常動作と異常動作 リハビリを担当することになった人の評価を進めていくと、症状と動作の関係に目がいきます。 動作分析という言葉があるように、相手の症状を理解して解決するために「動作」に着目することが一つの突破口になります。 関連記事:動作分析の前にこれをやろう!姿勢観察の方法   その際によく聞く言葉が「正常動作と異常動作」。 ・正常から逸脱した運動が症状の原因になっている ・症状の特徴が以上となって動作に現れる という考え方から生まれている言葉かと思います。   正常動作って何でしょうかね??? 多くの人が使っているのは「平均的に行われる動作」を指しているようです。   ◇動作と運動 動作とは合目的的な運動のこと 運動とは空間を移動すること と解釈しています。   そういう意味では「正常な動作」というのは「目的が達成されている運動」ともいうことができます。 つまり、「結果的に目的が達成されるのであればその過程は問わない」とも言えますよね?(強引でしょうか・・・)   そう考えた時、異常動作というのは目的が遂行されない動作をさすでしょう。     ◇反復動作 リハビリの現場では正常動作、つまり「目的が遂行できる動作」の獲得を目指してトレーニングが行われます。 よく目にする場面が「できていない動作を補助をしながら反復する」作業です。   反復するという課題は、無意識下で運動を自動化するために選択されているのでしょうけども、「遂行できない動作」を反復しても「誤った動作」の自動化に繋がってしまいます。 欠損してしまった能力を代償するための道具を使用した動作の反復は理解できます。 目的を持たない「ただの自動化」を目指した反復には意味を感じません。     ◇筋トレやROM ex 目的を遂行するための動作には、それを行うだけの基本的な運動と、それを基礎付ける身体機能(構造面)が必要になります。 膝関節が全く屈曲しない人に対して「正座をする練習」を課題にすることが全く意味ないということは、わかっていただけると思います。   ベースとなる身体機能、それを操る能力は最低限備わっていることがスタートラインですし、その部分の設定と準備はセラピストに求められることです。   ただの筋トレやROM ex、あるいは筋膜リリース、ナントカテクニックを駆使しても動作に結実しないと何の意味もありません。 例えば、筋トレでは「フォームと負荷」が大切となります。 そのフォームと負荷が日常動作に結びつくか?という疑問が生まれます。 PNFのテクニックはADLに結びつけやすいですが、一般的なレジスタンストレーニングは限定的な印象です。   ◇動作を意識づける 相手の動作の質を変えていこうとするときに「意識づける」ことがよく行われます。 言葉による意識づけが。   「背中を伸ばして歩きましょう」 とか。   部位に対して行うアプローチと、言葉による意識づけは、よくセットで行われます。 しかし、最終的な目標は、日常生活での自動化な訳ですので、そのやり方でたどり着くのは困難だと経験しています。   スポーツ界でも行われるようになったのは、単純なストレングストレーニングではなく、シチュエーションをベースにしたラーニングアプローチです。 相手が無意識に行えるような環境の設定をして、相手自身に気づいてもらう(学習)やりかたは「相手に最適化」されていると言えるでしょう。 おそらく、対象者とセラピストの両方がかなり頭を使わないといけなくなります。   「背中を伸ばして」と声をかけるのではなく 「背中を伸ばさないとできないようなメニューと環境」をつくり、やってもらう   というように。     ◇相手の記憶や経験、習慣を変えていくために、リハビリ室でできることはあるか? もちろん。 たくさんあります。   先ほども触れましたが、最低限の準備は必要です。 そこまでは教科書的な技術で対応可能でしょう。 その先は、相手の体、相手の認識、なによりも相手の目標によってシチュエーションを変えていかないといけなくなります。   私自身の手応え的には「快刺激」を頼りにしていくと良い結果が現れています。 平均的な動作から逸脱した動作(異常動作)を平均的な動作(正常動作)に近づけるという発想とは違うトレーニングはお勧めできます。       最低限の身体的アプローチを学ぶなら https://iairjapan.jp/iair-course-info     *お知らせ リハビリや世の中のことを斜めから見つめたメルマガ「福田のメルマガ」 毎週月曜日11:30にこっそりと無料でお届けしています。 登録はこちらから。  ...

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【臨床経験年数別】何をテーマに学んだらいいのか?

◇臨床経験によって何を学ぶべきかは異なる 実際にお会いしたり、インターネットを眺めていると、リハビリ業界には勉強熱心な人が多いです。 そういう方々からとても刺激を受けますし、私も勉強しなきゃなぁ、と戒めております。   ただ、中には 「勉強しなきゃいけないとは思っているけど、何勉強していいかわからない」 という方もいるようです。   理学療法士になって18年が経過した私自身の経験と反省がベースですが、過去を振り返りながら、それぞれのタイミングで勉強していたことをご紹介します。   ◇「いつか役に立つ」っていつ役に立つ? 勉強熱心な人は、時に勉強することが理由になってしまいます。 「いずれ必要になるからと思って資格をとろうとする」というのがわかりやすい例ですね。   いつか役に立つことを見越して勉強しても、どういうわけか記憶に残りにくいんですよね。 それは「実践」が積めないからなんです。   「いつか役に立つことを見越して」の勉強ではなく、「今、必要な勉強」に力を注いだ時の方が実力がついていった感覚がありました。 それは、学んだことをすぐに「実践」できたからなんですね。   ◇臨床1〜3年目の勉強テーマ そういう意味で、好きなことよりも「必要なこと」に力を注いでいたのが、社会人デビューしてすぐの頃でした。 このころの私は、「何が好きか」も定まっていなかったのです。 好きなことを勉強しようにも、何が好きかわからない。 そうはいっても、職場ではタスクが生まれる。   だから「その時の必要性」に基づいて勉強しました。 勤務先での就業ルール、先輩が行なっている手技の理解、先輩が使う言葉の理解、医師が話す言葉の理解、カルテに書いてある内容の理解。。。 そういったものを勉強していましたね。   将来のあれこれよりも、目の前のこと。 なので、勤務している場所によって身につけるべきことは違います。 リハビリを担当する対象者の状態によって、身につけるべきことが違います。 そんな時期ですね。     ◇臨床3〜5年目の勉強テーマ 3年くらいしてくると、興味の持てる分野っていうのが出てきたんですね。 といっても、先輩への対抗心で、職場であまり取り入れられていないリハビリアプローチを行おうとしただけなんですけど・・・(先輩の言うことが聞けないだけ) まぁ、動機はどうあれ、 「自分の頭で考えて、自分の手で結果を導く」 という気持ちが芽生えたものです。   こうなると「好きなこと」を中心に次から次へと情報をむさぼりました。 若かったのでやる気はあったんです。   それが何かっていうと、、、バイオメカニズムとかのいわゆる「科学的」な知見。 それと、武術などの「科学で表現しきれない」身体運用。   そういう相反する内容を同時に学んでいました。 頭おかしくなりそうでしたけど・・・     ◇臨床5〜10年目の勉強テーマ 職場で後輩ができたり、その後輩から頼りにされはじめる時期だったかと思います。 このくらいの時期は「中堅」とか呼ばれ始めるんですよね。 このくらいの時期になると「自分だけが上手くいく」だけでは、周囲から評価されなくなってくるんです。   後輩、学生への指導力 患者さんへの指導力 上司への提案力   というものが「必要」になってきたりします。   この辺で、方向性に悩んだような記憶があります。 職人のごとく我が道を極めようとするか、後進の育成に注力しようとするか。   今となってはの話ですけど、我が道を極めようとすることと、後進を育成することって両立できると思うんです。 (私はその当時、できませんでしたけど。。。) どっちかに決めることないんです。 だから、やっぱり「好きなこと」に注力していいと思うんですよね。     勤務する場所を変えて、担当する人の層がガラリと変わりました。 脳神経外科の専門病院から整形外科専門病院に、しかも県を超えて。   自分の方向性を定め、得意なことと不得意なことを分ける為にも、ガラリと変えてみるのは、いい経験だと思います。 「経験を生かして」と言いながら、自分が経験してきた枠の中で、職場を変えるよりも激しく成長のチャンスが訪れます。     この辺の年代で「これからこの職業とどう向き合っていくか」みたいなことがテーマになってきたりしてました。 いわゆる「学問の勉強」とはちがって「自分自身を見つめる」ことを始める時期でしょう。   「プロフェッショナルの条件」とかはよく読んでいましたね。   ◇臨床10〜15年目の勉強テーマ このあたりから、役職に就くようなケースが増えることでしょう。 つまり「組織の中の役割」を意識せざるを得ないです。   部署の運営を任されたり、もう少し小さな事業グループの責任者を任されたり、他部署との交渉窓口になったり、雇用されている組織の中での貢献を期待されるようになります。   一人の療法士として、患者さんのリハビリテーションを担当していればよかった日々から、複数の療法士をまとめ、集団としての行動を評価される日々へ。。。   個人の努力(技術研鑽)が自分自身の評価に直結しなくなってくるんです。 技術的な部分はできて当たり前・・・みたいな空気とでも言いましょうか。 自分以外の療法士を、組織から求められる結果にたどり着くように導いて、初めて評価される立場になっていく。   そういう経験をすると、いわゆる「自己啓発系」の本、経営者向けの教材とかに目がいくようになります。 (私の場合、新人の頃に心がやさぐれて、自己啓発系に出会いましたけど、なんのことを言っているのかさっぱりわからなかった・・・。自分に必要なことやタイミングって人それぞれですね)   手技を極めようとすることで、組織へ生かすことも十分可能なのですけど、その手技から組織運営へ応用することや気づくことに時間がかかってしまいます。 私はサッカーが好きで、サッカーの解説やリーダー論みたいな部分から、組織運営に生かそうとしたことがあります。 普通に管理運営や組織論の勉強するよりも頭に入りやすかったですけど、現場に行かす時の変換に苦しみましたね。   結局、普通に管理運営を学んだ方が近道かもしれません。   「影響力の武器」とか「人を動かす」とかは王道ですね。 マンガのジャイアントキリングが好きな方には「今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則」とかわかりやすいですよ。   他にも色々読みましたので、興味がある方はご連絡ください。 fukuda@iairjapan.jp     ◇臨床15〜20年目の勉強テーマ 人によっては経営までかかわり、法人としての運営に関与していく場合も出てくるでしょう。 もっと早く経営に関わるケースもあるかもしれません。   ここで生きるのは勉強よりも「実践」です。   まさにTry & Error。 早く行動を起こして、(失敗、成功を問わず)早く結果を得ることが、組織を前進させていきます。   ある程度の勉強量に達すると、気づくことがあります。 みんな同じことを言っていると。   そうなると、どこで差が生まれるのかと言えば、 実践 に他なりません。   「成功の量」とか「成果の大きさ」という経験よりも、「失敗を含めて」どれだけ実践して、そこから何を学んだか。   が、物を言います。 私は、ちょうどこの時期なので、「実践」に勤しんでおります。     ◇まとめ 私の経験と反省を踏まえまして、まとめます。   ・経験年数によって若干の差はあるけど、「好きなこと」を勉強すると頭に入りやすい。 ・何が好きかわからなかったり、何をしたらいいか検討もつかない場合は、「今、必要なこと」に集中すると道が開ける。 →そうすると「やりたいこと」よりも「やりたくないこと」がはっきりする。 ・「やらされていること」が好きになれたら、その組織で芽が出やすいから頑張る。 ・「自分がやりたくないこと」しか評価に結びつかない環境は、離れた方がいい。       国際統合リハビリテーション協会(IAIR)は、肉体に現れている症状を解決するテクニックをお伝えしているだけではありません。 「社会に貢献できる人材」 の育成を行なっています。   学ぶ人それぞれのタイミングに合わせて、最適な経験をしてもらえるように体系化された講義内容になっています。 https://iairjapan.jp/iair-course-info   体の症状に対して解決方法を学ぶ「Bクラスコース」が開講しています。 お近くの会場をご確認ください。 https://iairjapan.jp/calendar     *お知らせ リハビリや世の中のことを斜めから見つめたメルマガ「福田のメルマガ」 毎週月曜日11:30にこっそりと無料でお届けしています。 登録はこちらから。  ...

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大腿骨頸部骨折患者の予後に関係する因子

◇大腿骨頸部骨折 病院や施設でリハビリを担当していたら、一度はこの診断名を見たことがあるのではないでしょうか? 直接の死因にはならなくても、「寝たきり」の理由になることが多く、適切な治療、リハビリテーションが求められます。 例えば、受傷から手術までの待機時間が、予後に影響を与えることなども報告されています。 参考:大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)   以前、整形外科医と話をしていたとき、 「昔は80歳くらいの人の手術でもドキドキしたけど、今は90歳でも普通になったね」 というくらい、医療現場でも認識が変わってきています。   ◇生活習慣 私の個人的な経験ですが、大腿骨頸部骨折を起こす人は圧倒的に女性が多かったです。 そして、女性の中でも肥満の人が多い。 さらに、すでに認知症を併発しているか、骨折を機に認知症へ進んでいくケースをたくさん経験しました。   骨折、肥満、認知症、これらがどの順番で起こってくるのかはわかりませんが、印象としてはセットになるほど、予後が悪いです。   例えば、肥満ではない人、認知症ではない人、介護者などの協力が得られる人は比較的予後が良好なケースが多いです。 こういうのは統計が取られているでしょうから、先ほどのガイドラインなどで調査してみてください。     予後の良、不良に肥満、認知症が絡んでくるとしたら、受傷前後の日常生活に注意すべき点があるかもしれません。 その部分に関しては決定的なものを調べることができていませんでした。 少し、気になったので、調べてみます。   ◇筋、骨、脳 骨は「オステオカルシン」というホルモンを分泌します。 オステオカルシンは代謝を調整する働きがあり、(最近話題の)インスリン感受性に関係します。 オステオカルシンの増加に伴いインスリンが低下するという相関が、肥満児の調査から報告されています。 これは骨格の状況がエネルギー代謝と関係があることを示しています。 (引用:Osteocalcin–insulin relationship in obese children: a role for the skeleton in energy metabolism)   上記より、肥満を導いた代謝異常の陰には骨格の異常が潜んでいそうだ、と考えられるわけです。 インスリン抵抗性を生んでいる体ではオステオカルシンの働きも少ないと考えます。   インスリンは言わずと知れた同化ホルモン。 肥満の原因となりうるホルモンです。 インスリン抵抗性とは、何らかの理由でインスリンの働きが得られにくい状態となり、体内にインスリンが大量に存在している可能性を指します。   肥満ーインスリン↑ーオステオカルシン↓ (=骨代謝異常)   そのオステオカルシンは、脳機能との関連も報告されています(マウスですけど・・・) (引用:Modulation of cognition and anxiety-like behavior by bone remodeling)   若い人の血液(オステオカルシン多)を高齢者に注射すると、改善がある!みたいな報告があるのなら、つい最近、献血した私の血液も報われるかもしれません・・・     骨の同化を促す対策が、認知機能や不安行動に効果的であろうことが示唆されていますが、一般の人の認識のように「カルシウム食べればいいんでしょ」というのは推奨できません。 カルシウムのサプリメント摂取は心疾患のリスクとの関係が報告されています。 (引用:Effect of calcium supplements on risk of myocardial infarction and cardiovascular events: meta-analysis)     骨を強化するにはレジスタンストレーニングが良い、という報告はこれまでもたくさんみてきました。 何は無くとも「荷重」することが、骨、筋、脳にとって良い効果が期待できます。 そう考えると、不活動は全くいいことがありません。 臥床傾向がみられていれば、どうにかしてそこから脱却していかないと、肥満、骨折、認知症のパターンに入っていく恐れがあります。。。   骨密度の低下とインスリン抵抗性は関係がありそうですね。 これは言い換えると、「肥満と認知症と骨折」がつながるとも言えます(無理やり?)   友人や身内でそういう方がいらっしゃったらぜひ、遊びに連れ出してください。 散歩とかでも構いません。 レストランのバイキングとかに連れ出したら逆効果ですよ・・・   ◇骨は内分泌器官? 骨から分泌されるオステオカルシンは膵臓に作用し、インスリンの分泌を促します。 そのインスリンはグルコース代謝に関与するのはもちろんのこと、骨芽細胞にも働きかけ骨吸収を促進することが報告されています。 (引用:Insulin Signaling in Osteoblasts Integrates Bone Remodeling and Energy Metabolism)   オステオカルシンはテストステロンの分泌にも作用し、骨量の調整に寄与するというループが完成します。 わかりやすい図を引用します。 引用:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3850748/   骨は体を支持する器官として、移動や姿勢保持に重要な部位ですが、ホルモン分泌の「内分泌器官」、代謝調整する器官としても重要な存在であることが見えてきました。   ◇大腿骨頸部骨折後のトレーニング エネルギー代謝、骨吸収にも関係するオステオカルシンの産生は、レジスタンストレーニングが有効だそうです。 これは若者のデータなので、そのまま「高齢者のリハビリ」に当てはめられませんが、参考にはなります。 高強度でやっている時よりも、トレーニング日ではない休息日にオステオカルシンが上昇しています。 引用:Effect of Resistance...

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局所的?全体的?必要なアプローチはどっち?

◇局所を見て全体を見ず 聞いたことがありませんか? 「木を見て森を見ず」 部分的なこと、あるいは狭い視野でのあれこれだけを見て、全体的なことを把握できないことを指していう言葉ですね。   西洋医学は局所を診ている。 東洋医学は全体を診ている。   なんて表現している人もいますけど、そんな風に対比させながらじゃないと脳は理解しづらいのですよね(一部の天才を除き)。 西洋医学が局所しか診ていないわけではないし、東洋医学が全体しか診ていないわけではありません。     ◇局所を知らずして全体が見れるのか? 天邪鬼な私は「木を見て森を見ず」といった言葉を、「お前は視野が狭いなあ」という意味合いで使っている人を見ると反論したくなります。   「木を知らずして森がわかるのですか?」 つまり 「部分的なことをわからないで、全体的なことが把握できるのですか?」 ということ。   結論を言ってしまうと、「部分的な見方と全体的な見方を行ったり来たりしよう」、ということになるのです。   「各組織、細胞レベル」での知識や情報収集も、「人」としての情報収集も必要であり、相互の関係性を見なければいけないよねって思っています。       以下は実話に基づくフィクションです。 70歳を超えても好きな仕事をしながら、夫婦で愉快に暮らしている人がいました。 ある日、腰からお尻にかけての痛み、歩いている時や姿勢変換時の大腿部の痛み、しびれがあり、僕は電話で相談を受けました。     ひとまず整形外科の受診を勧めました。(これも重要なテクニックの一つ、責任ある態度だと考えています) その後、脊柱管狭窄症の診断を受け「腰の骨が潰れて変形している」との説明を受けたそうです。     その人は結構ショックを受けていました。 整形外科からは消炎鎮痛剤が処方され、通院での電気治療を勧められたそうです(よくあるパターン)     オーダーがあったので評価を始めていきましたが、痛みのせいか、習慣のせいか、立位姿勢は矢状面上も前額面上も左右非対称が強かったです。 本人に聞くと、他の人から指摘されることは多かったが、自分はそれほどずれてる気はしないと感じていたようです。     立位姿勢を他動的に正中位にすると、痛みとともに強い抵抗感を感じました。 この非対称は疼痛回避のための姿勢なのかもしれません。 (関連記事:動作分析の前にこれをやろう!姿勢観察の方法)   筋の状態も非対称が強く、痛みがある方の下肢は安静仰臥位でも常に力が入っている状態でした。 痛みに対する脳の防衛反応を予想します。 (問診していってそう思いました)     数ヶ月(3〜4回?)のセッションで、痛みに変化が現れました。 私が中心に行っていたのは腰仙移行部と臀部の筋緊張を緩和すること。 運動の乏しい関節と疼痛の原因を過剰な筋収縮にあると予想したからです。     過剰な筋収縮は、習慣的な不良姿勢によるものと推測しましたが、本人が「不良姿勢」と認識できていない以上、修正はすぐにはできません。     筋膜、軟部組織、結合組織へのアプローチで組織に物理的な余裕を作り、フィードバックを行いながら関節運動(主に他動)を繰り返しました。 脳への再学習のためです。     痛みの低下とともに立位姿勢の非対称が修正されてきた頃、筋緊張にも変化が現れました。 私が行う圧刺激に対しての防御収縮が起こらなくなってきたのです。 閾値が下がったのでしょうか?     その頃になってようやく「自主トレ」を積極的に行ってもらうことにしました。 その人と会うのは1回/月あるかないか。 いい加減な運動が習慣になるのは避けたかったので、脳が関節運動を再学習できてからにしようと思っていたのです。 (痛みは脳にとってノイズです) 目安は「他動的に正中化した立位姿勢時の反応」です。     他動的に正中化させても痛く無くなってきたときに自主トレにGoサインを出しました。   その間、鎮痛剤は継続していません。(医師の指示も積極的なものではありませんでした) 最終的には、日常生活にも仕事にも全く影響なくなりました。     ◇地図を広げて目的地までの経路を特定することに似ている 全体的なストーリーを描き、大きなプランを立てながら、それを局所の反応に落とし込んでいき、反応を見る。   木を見ながら森を思え、森を見たら木を想像せよって感じでしょうかね。     「全体を語るなら、局所がわかるようになってからだ。局所を知らずに全体を語るな」 私が若いときに、ある大先輩から聞いた言葉です。     ミクロな見方 マクロな見方 それをつなぐ考え方 実践する技術 支援する態度 理解してもらう説明   そういう一つ一つを「統合」していくことがリハビリテーションなのだと思います。     体のケアを担当する場合、そういうこと(統合)が必要になるでしょうし、そういうのがない場合、私はどうしたら良いか分からなくなってしまいます。   例えば細胞の研究をすることも、それを理解して現場で活かすことも、必要です。 一人で全部できるわけがないので、各分野で発表されていることを取り入れて「統合」して、患者さん利用者さんに還元していく。時間がかかったっていい。   「難しい」の一言で、未知のことを遠ざけ、自らに新しい見解や手段を導入しないのは、与えられた任務に対して無責任と言えます。     興味のある分野のサイトをのぞいてみるとか、できることからスタートしていき、アウトプットしたりしながら、自分の仕事を全うしていきましょう。       統合を身につけるためのカリキュラム https://iairjapan.jp/iair-course-info 【福田陽介無料メールマガジン】 毎週月曜日11:30にこっそりとお届けしています。見逃してしまいがちな世の中のことなど、リハビリとは関係のないことも書き綴っています。登録はこちらから。...

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動作分析の前にこれをやろう!姿勢観察の方法

動作分析の難しさをあげるとすれば、それは「対象が動いているから」と言うことができます。 目で追わないといけない部分がたくさんあるのに、対象が動いてしまうので、どこを見たらいいかわからなくなってしまう。 そんなことがありませんか? 対策として「姿勢観察をする」ことを提案します。 この記事では、姿勢観察によって得られたことを考察する方法についてお伝えします。   動作分析にも通じる部分がありますよ。     ◇姿勢観察から考察へ 姿勢観察の結果を考察する際に、どんな考え方をベースにするかで、方向性が変わってきます。 数ある考え方の中から、今日は「力学」をベースにして考えてみます。   力学と聞くだけで、距離を置きたがる方もいるかもしれませんが、私程度が説明する力学ですのでさほど難しくありません。 臨床でも活かしやすい考え方ですので、参考になるかと思います。     対象者の姿勢観察から評価考察する際に、姿勢をそのまま取り扱うのは困難を極めます。 なので「単純化する」という作業を一番初めに行います。 人間の体を剛体モデル化して、図示するのは「単純化」に他なりません。 (極めて簡単に表現すると、「確認できたことを絵に描く」ということです)     先ほども触れた単純化のために、ランドマークの触診が必要なのです。 参考記事:姿勢評価に関係する筋膜の考え方     ◇姿勢観察の結果を紙に書く 単純化は人体の部位を各文節に分けて行います。 頭部 体幹 上肢(上腕、前腕) 骨盤 下肢(大腿、下腿、足部) どういう風に単純化するかは好みですけど、○とか□で十分です。     そして各部位にどのような力がかかっているかを推測していきます。     *圧縮と伸張の組み合わせがほとんどです。     対象者が主訴を訴えている部分にどのような応力が生まれているかを推測していきます。     同じ姿勢だとしても、各部位にかかる応力は異なります。 例えばこの図の姿勢でも 右と左ではこのように異なります。 どの部位に働くどんな応力が、どの組織に加わって主訴になっているのかを推測します。   ◇原因なのか結果なのか 現場ではいわゆる左右対称で正中化した姿勢を「基準」にしてどのくらい逸脱しているかで「不良姿勢」かどうかを判断していると思います。   その姿勢が ・主訴の原因を作り出しているのか ・主訴を和らげるためなのか で、プログラムの方向性は変わってきます。   何かの機能制限を代償するための姿勢であった場合、単純な正中化は主訴の軽減に結びつきません。   なので、対象者の姿勢を「原因と結果」に分けることが重要です。 つまり姿勢をアウトカムにするのです。   方法は単純です。 ★(術者が)対象者の姿勢を他動的に正中化させてみる。 この方法の結果   と考えることができます。   これでプログラムの方向性が決まりますね。         ◇仮説、予測、考察 プログラムの方向性と主訴の元になっている応力がわかったら、その応力が「どの組織」に加わっているかを特定していきます。 問診や触診や検査が必要です。     相手が(深さを含めて)どの辺にどのように感じているかを聞き出せれば、主訴の責任部位(組織)が予想できます。 さらに炎症が起きているか、浮腫なのか、筋硬結なのか、神経症状なのか、複合的なのかという「状態」も予想できてきます。     特定するために徒手的な検査を行うことでその信ぴょう性は増します。 (最近はリハビリ室でもエコー検査が行える場所もあるようですが、ほとんどの場合そうではないので、やはり徒手検査の水準は高めておきたいです)     ◇目的は診断ではなく治療介入する対象の特定 姿勢観察や徒手検査をすることは「診断」が目的ではなく、「機能制限の原因の特定」が目的です。 検査によって診断名がわからなくてもいいです。主訴を訴えている部位にどのような変化が起きているのかを総合的に判断するために、療法士も徒手検査を行うのです。     例えば、前十字靭帯損傷(または断裂)を鑑別するテストに「前方引き出しテスト」や「ラックマンテスト」があります。 これらのテストを非麻酔下で行うことの信頼性はかなり低いです。 しかし、術者の手には関節動揺が「感じ」られます。 その感触と運動分析を絡めて、予後予測やプログラムの遂行に生かすわけです。     脳神経テストも同様です。     まとめ 姿勢観察を行い、人体を単純化(剛体モデル化)して、力学の概念を使って考察していく方法を紹介いたしました。   こういった姿勢観察の評価は「止まっている」ものを考察するので比較的やりやすいです。 では動作分析(運動分析)だといかがでしょう? ハードルが上がりますね・・・   しかし、静止姿勢とは連続している運動の一部分を切り出したものと捉えられます。 そのため姿勢には運動(動作)の特徴が現れます。 静止姿勢を考察するということはとても有意義な評価です。     止まっている状態で評価しますし、紙とペンがあればできるので、ぜひ取り入れてみてください。 デジタルデバイスが進化して、スマホとアプリケーションだけでもかなり分析はしやすくなっています。 静止画像や動画を使って解析するソフトも以前より手に入りやすくなってきました。   しかし、リアルタイムに捉えるという意味では、その場で観察して考察できるに越したことはありません。 (書籍の紹介:「観察による歩行分析」)   評価結果を検証し、対象者の日常生活に行動変容を促す手段として「徒手介入」または「運動指導」が必要になります。 徒手介入を学ぶ講習会 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓ https://iairjapan.jp/events/category/exp   他の認定講習会詳細は ↓↓↓ https://iairjapan.jp/calendar     【福田陽介無料メールマガジン】 毎週月曜日11:30にこっそりとお届けしています。登録はこちらから。...

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骨盤後傾の原因になる筋肉は腸腰筋?ハムストリングス?

◆骨盤後傾は症状の原因? 姿勢や動作の観察や分析を少し勉強すると、問題点の一つとして「骨盤後傾位」という評価結果があがってくることが多いですね。 骨盤後傾位(姿勢)が症状、機能制限の「原因」なのか「結果」なのか、見極めていかないことには方向性が立ちません。       例えば、成長期によくみられる膝の痛みは「オスグッド病」という診断がつくことが多いです。   軟骨が剥離していき、その炎症で痛みが出ているとされています。   運動を活発に行っているジュニア世代に多いですが、運動を激しく行っていなくても「成長痛」なんていう風に呼ばれる膝の痛みもこれです。       安静(休息)を取ると痛みが引くことが多く、運動を再開するとまた痛みが出る、というの繰り返すのがよくあるパターンだとか。。。   そんなオスグッド病のケースの多くは骨盤後傾位で運動しがちだそうです。 (小学生サッカー選手におけるOsgood-Schlatter病発症の身体的要因に関する研究)     子供だけでなく、 立ち上がり動作で膝の痛みが出る人 立位保持が安定しない人 変形性膝関節症(膝OA)などで歩行時に痛みが出る人 の立位姿勢や動作を観察すると骨盤後傾位だったりします。     さて骨盤後傾位は膝の痛み、機能制限の原因でしょうか?     ◆骨盤後傾とは? 一応定義上は、 矢状面上(横から見たとき)でASISよりもPSISの位置が2横指程度上にあれば、中間位(ニュートラル)であると言われます。 ASISに対してPSISが2横指以上高い位置にあれば前傾位、1横指よりも低い位置にあれば骨盤後傾位となります。   以上が骨盤の傾きを見る大体の目安になります。     ◆骨盤後傾位になる理由はハムストリング? 骨盤後傾の理由の筆頭に上がってくるのが「ハムストリングスの短縮」かと思います。 関連記事:「ハムストリングスが硬い人は、何故足腰が痛くなるのか?」     確かに、オスグッド病の子供達はSLRで40〜45°くらいだったりします。     ハムストリングスが短縮していれば、起始と停止が近づくことになります。   坐骨結節が膝窩の方に引っ張られるわけなので、空間的に骨盤後傾になります。     骨盤後傾位となると、相対的にASISの位置が高くなります。   大腿直筋の起始と停止の距離が離れていきます。 (脛骨粗面(膝蓋腱付着部)と下前腸骨棘の距離)     そうなれば、脛骨粗面部に伸張応力が加わり、軟骨が剥離していくのは想像できます。 ◆と、いうことは骨盤後傾は結果・・・? 骨盤後傾を生み出したハムストリングス短縮が膝の痛みの原因なのですね・・・?   ここで思考停止してしまうとハムストリングスのストレッチ以外の作戦が出てきません。     他に原因はありませんか???   ◆腸腰筋 ハムストリングスの短縮と同様、骨盤後傾の理由として考えられるのは腸腰筋筋力低下。     大腰筋と腸骨筋からなる腸腰筋は股関節の前方を通ります。   腸腰筋の働きによって骨盤は前傾方向に保たれます。       筋組織が機能的に働くためには「収縮・弛緩(つまり伸び縮み)して筋長が変化」できることが必要です。   習慣的な姿勢や運動は、筋組織をある「一定の状態」に向かわせてしまいます。 膜組織を繋ぐ結合組織で動きが乏しくなり、膜組織間の滑走が失われていきます。       骨盤後傾位は誰もがとりがちな姿勢です。   その姿勢だと、抗重力位で筋活動が少なくても靭帯や関節包のテンションで姿勢保持が可能なので、休息を取る姿勢として選択されたりします。   その姿勢が続いてしまうと、筋機能の低下が起きてきます。       ◆痛みとその姿勢の関係は? 私の臨床経験上、骨盤前傾位でも骨盤後傾位でも関係なく、腸腰筋とハムストリングスの機能不全が起きている時に膝の(下肢の)痛みにつながっている印象があります。     ある姿勢、あるポジションで動いていないことが問題としてあがります。 動かなくなってしまった原因は何なのでしょう?     骨盤前傾、骨盤後傾という姿勢だけに惑わされずに「筋が機能しているか」という視点で評価を進めてみると症状の原因にたどり着けることが多いです。     姿勢の観察自体はさほど難しくありません。 「その姿勢は結果か原因か?」 と考えていくところにちょっとした難しさがあります。     原因か結果かを検証するためには、体に変化を生み出せばいいですね。 つまり動かしてみる(自動でも他動でも)ことです。     体が動くことを意識してもらう取り組み(アプローチ)は、多くの場合「それ」が原因なのか結果なのかを示すので、リハビリの方向性を明らかにしてくれます。     ◆腸腰筋のチェックをするには 端座位で骨盤前傾を保ったまま片方ずつ股関節屈曲運動を試してみてください。腸腰筋機能低下があると股関節屈曲が起こりにくいです。   このとき、MMTのように抵抗を加える必要はありません。     運動を評価していき、「原因」として起きているのか、「結果」として起きているのかを見定めていかないと、「ただ行なっているだけ」のリハビリになってしまいますので、気をつけましょう。     運動は筋収縮によっておきます。 筋収縮によって、周辺組織がどのように動くのか? それを知ることがROM制限や痛みなどの解決にたどり着く近道です。 生きている人間の体で結合組織がどのように動いているのかを研究しているDr. Jean-Claude GUIMBERTEAU先生の講演が日本で初開催されます。 https://iairjapan.jp/dr-jean-claude-guimberteau 自分の行なったリハビリによって、人間の体内で何が起きているか知らないまま、アプローチはできませんよね? 詳細、お申し込みはこちらから →https://iairjapan.jp/dr-jean-claude-guimberteau     https://iairjapan.jp/pelvis     【福田陽介無料メールマガジン】 毎週月曜日11:30にこっそりとお届けしています。登録はこちらから。...

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腰や膝に生じる「動き始めの痛み」は、ある時間と関係があると予想される

◇動き始めの痛み 患者さん、利用者さんからの訴えでこのような発言を聞いたことがありませんか? 「動き始める時に〇〇が痛くて・・・」 「だけど、動いちゃうと平気なんです」 そう、動き始めの痛み。。。   そして、リハビリ室で、痛みの出る動作を再現しようとしても、再現できない。。。 色々な動作をやってもらっても、 「あれ、痛くない・・・」 「おかしいな・・・」   このようなやり取りを経験したことがあるのではないでしょうか?   その場合、この「主訴」はどう扱われるのでしょう? 原因がわからないまま?   わからないままだと、その日のプログラムが立案しにくいですね。     ◇ある時間と疾患の関係の調査 注目したい報告をご紹介します。 American Journal of Epidemiologyより 「Prolonged Leisure-Time Spent Sitting in Relation to Cause-specific Mortality in a Large U.S. Cohort」   余暇時間を座って過ごす場合の、時間と疾患の関係を調査した報告です。     座っている時間が長いと、死亡リスクが高まるという報告は過去にもされていました。   そのためか、企業では会議を立ったまま行なったり、デスクワークが立ったまま行えるようにスタンディングデスクというものを用いたりしているようです。     さきほどの「Prolonged Leisure-Time Spent Sitting in Relation to Cause-specific Mortality in a Large U.S. Cohort」では、主要な疾患との関係を調査しています。   その結果もダウンロードできますので、ご覧ください(英語ですが・・・)   ◇6時間以上・・・ 興味深い数字を発見しました。 このデータは [余暇を座って過ごす時間が3時間未満の人]を基準にした時 [同じく座って過ごす時間が6時間以上の人]がどういう疾患を発症しているかをみています。     ガンは約10%発症率が上昇します。 心疾患は約20%発症率が上昇します。 自殺は約67%上昇・・・   とのこと。。。   そして、注目は、 【筋骨格系疾患 58% 上昇】 【神経系疾患 54% 上昇】 だそうです。     長い時間座っていることの弊害ははっきり出ています。 6時間以上の座位はありえないことだと考えますでしょうか? 事務仕事の人は、可能性高いですね。 家庭でテレビをみて過ごしている人は、可能性が高いですね。 介護施設などで、車椅子座位で過ごす人は可能性が高いですね。     誤解が生まれないように伝えます。 3時間未満の座位時間でも、各疾病は発症しています。 座位時間を短くすれば、「発症しない」という考え方ではありません。   ◇対策は 対処法はそれほど難しくないです。 座り続けなければいいので、細かく立ち上がったりするなどして、姿勢を変える、運動を行う、時間が設けられればいいのです。     6時間以上の座位時間は、3時間未満の座位時間の人に比べて、約60%ほど筋骨格系の疾患を有する危険が高まるわけです。   何故なのでしょう??   長く続く座位時間は、筋骨格系、神経系にどのような変化をうむのでしょう? 同一姿勢の持続は結合組織の組成を変化させる可能性が考えられます(理論上は)。   動きは小さくてもいい、 負荷は軽くてもいい、 筋力がつかなくてもいい、 とにかく、止まっていないことが推奨されます(と、いいながらこのコラムを座ったまま書いています)。   ◇動き始めの痛みへの対策 冒頭の主訴を訴える方に出会ったら、生活パターンを細かく聴取してみましょう。 座っている時間、じっとしている時間はどのくらいあるのか? 3時間以上持続する座位時間が日常的ならば、その生活パターンは見直した方が良いでしょう。   例えば、1時間座っていたら、5分は立っているなど。。。     結合組織の組成のメカニズムを知っていると、説明はより聞いてもらえるようになります。 説明を聞いてもらうには、「技術的に信用される」存在であったほうがよいです。     一言で言うと「1日のうちに何度も立ち上がって、ふらふらと歩きま回ろう」というのが対策です。   最近、座っている時間が長いな、という方は気をつけましょう。       *参考文献 Prolonged Leisure-Time Spent Sitting in Relation to Cause-specific Mortality in a Large U.S. Cohort   *お知らせ リハビリや世の中のことを斜めから見つめたメルマガ「福田のメルマガ」 毎週月曜日11:30にこっそりと無料でお届けしています。 登録はこちらから。...

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いつのまにか硬い関節になってしまっている時、こんなことが起きている

関節が硬い・・・ 直接の原因ではなくても「関節可動域制限」は、生活の制限になることは多いです。   なぜ硬い関節ができあがるのでしょう?   ◇硬いのは関節?筋? 関節が動きにくい場合、その原因をある程度特定しないことには、効果は生まれないでしょう。   桶の中の水がどんどん減っていく時に、減ってしまう理由を考えずに、減ったぶんだけ水を足していてもどうにもならないことと似ています。     関節の動きが制限されている時、 関節そのものに原因がある場合 関節以外に原因がある場合 にわけて考えます。     関節そのものの原因を疑う時、考えられるのは、骨の変形(軟骨の摩耗など含む)、関節包などの肥厚、滑膜の増殖、などでしょうか。     関節以外の原因を疑う場合は、筋の柔軟性低下、神経障害、などが考えられますかね。     関節の動きが制限されている時に、「とにかく動かす」というのは解決策として適しません。 どうせ動かすなら「何を」動かすのかを明確にするとよいです。     ◇膜組織の滑走を阻むのは 機能制限を作り出す結合組織の変化[筋膜の滑走] の中でも触れましたが、運動を制限している時というのは、筋そのものが硬いというよりは、筋膜とそのほかの組織の間にある結合組織の影響を疑います。   結合組織が、伸張、移動、分散することで、組織間の滑走が生まれ、筋収縮(または伸張)が制限なく行われます。 筋と筋の間 内臓と内臓の間 筋と骨の間 筋と関節包の間 etc 何かと何かの間に存在する組織の振る舞い次第で、運動が決まる部分もあります。     では、どのような時にその結合組織の振る舞いが妨げられるのか? 癒着や瘢痕化が一般的な原因として挙げられます。   癒着や瘢痕化は炎症後に見られる反応です。 関連記事: 「【炎症を理解する】炎症反応を整理してリハビリに生かす」 「【炎症を理解する】炎症初期に体で起きていることは治るための第1歩だった」 「【炎症を理解する】炎症症状のピークが過ぎた時こそ要注意!の理由」 「【炎症を理解する】そのリハビリテーションは回復の妨げになっている」     炎症は、怪我や病気、感染などが治っていく過程で重要な働きです。 しかし、炎症が正しく経過しないと、 弱すぎる組織で損傷を繰り返す 強すぎる組織で運動の制限となる ことが起こります。     ◇いつのまにか関節が硬く・・・ 普通に生活しているだけでも、知らず知らず関節が硬くなってしまう、そんな経験がありますでしょうか? 理屈的にはありえます。     変な姿勢をとった後 無理な動きをした後 どこかにぶつけた 毎日同じ場所に負荷がかかる 体内に細菌が侵入した   などなど。 激しい痛みにより動けない、とかのレベルでなくても、日々体の組織にはストレスが加わります。 組織が傷んでしまった後、修復の反応が炎症ですが、「我慢できる(痛みだ)から」というだけの理由で気にせず動いていると「瘢痕化」の道を辿ります。   丈夫すぎる組織によって入れ替わってしまう訳です。       大きな損傷のあと、分厚く肥厚した瘢痕組織が生まれることがあります。それはその後、柔軟に動くようになるのか? 現時点で私はそのような臨床体験は、極めて少ないです。     外科的な対策、心理社会的な対策、患者自身の協力、医療機関の協力など、多くの人と協力して目標を成し遂げた経験はあります。 一人の理学療法士として成し得た経験はありません。     損傷の代償、炎症のきっかけの有無は別にして、自分にできることとできないことを整理して、専門的な協力を仰ぎ、「グループで」対処するとうまくいく場合もあります。     ◇まとめ はっきりした経緯がなく、いつのまにか動かなくなっていった関節に対して、どのように考えたら良いのか。 後縦靱帯骨化症のような疾患もありますし、関節リウマチの場合もありえますので、一概には言えませんが、時間をかけて動かなくなっていった関節が、あるきっかけによって永続的に動くようになる、というのは考えにくいことです。   リハビリテーションを担当しながらよく思うのは 「動かなかった部位が再び動くように導くことはできる。しかし、この先もそれが保たれるかは相手次第。」 ということです。     体の仕組みをよく理解することは、何よりの治療であり、何よりの予防です。         関連記事: 「機能制限を作り出す結合組織の変化[筋膜の滑走]」 「【炎症を理解する】炎症反応を整理してリハビリに生かす」 「【炎症を理解する】炎症初期に体で起きていることは治るための第1歩だった」 「【炎症を理解する】炎症症状のピークが過ぎた時こそ要注意!の理由」 「【炎症を理解する】そのリハビリテーションは回復の妨げになっている」     筋膜の機能解剖と徒手療法 東京開催は終了しました。 来月は大阪開催です。 https://iairjapan.jp/fasciamoract       *お知らせ リハビリや世の中のことを斜めから見つめたメルマガ「福田のメルマガ」 毎週月曜日11:30にこっそりと無料でお届けしています。 登録はこちらから。  ...

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【炎症を理解する】そのリハビリテーションは回復の妨げになっている

炎症の最終段階は「成熟期」と言われます。 関連記事: 「【炎症を理解する】炎症反応を整理してリハビリに生かす」 「【炎症を理解する】炎症初期に体で起きていることは治るための第1歩だった」 「【炎症を理解する】炎症症状のピークが過ぎた時こそ要注意!の理由」   ◇炎症成熟期 9日目以降に始まると言われる「成熟期」ですが、持続期間は長く、1年以上続くケースもあります。 成熟期は、 線維芽細胞 マクロファージ 毛細血管 などの数が減っていきます。 組織の水分含有量も減っていきます。 腫れが引いていくのは、この水分量と関係がありそうですね。   毛細血管の減少により、瘢痕組織は白っぽい外観になっていきます。 この成熟期の目標は損傷前の機能を取り戻すことにあります。     ◇コラーゲンの合成と分解 現在、複数タイプのコラーゲンが発見されていますが、この成熟期間中に合成されるコラーゲンは圧倒的に㈵型といわれます。 ㈵型コラーゲンは、増殖期に現れる㈽型コラーゲンよりも強いコラーゲンです。     損傷部に集まったコラーゲン(増殖期〜成熟期では主に㈽型)は、成熟期全体を通して、合成と分解が行われます。 炎症期に起こるホルモン分泌により、コラーゲンの架橋結合の破壊がおこります。(酵素 コラゲナーゼによる)     ◇瘢痕組織との関係 コラーゲン合成は酸素に依存すると言われます。 つまり、酸素濃度が低下した環境では、コラーゲン合成よりもコラーゲン分解の方にバランスが傾くということですね。     毛細血管が豊富な瘢痕組織では、血液の供給が保たれると考えられ、それは、酸素濃度を保つことにもつながります。   その結果、コラーゲンの合成のバランスが上回り、瘢痕組織にコラーゲンの沈着、組織の肥厚が起こる可能性が考えられます。 酸素供給が少なければ、分解が上回り、瘢痕組織は柔らかい状態で経過することでしょう(理論的には)。     組織を圧迫することのメリットはこういう部分でしょう。     ◇炎症成熟期のリハビリテーション 瘢痕組織に対して、伸張などの機械的ストレスが加わると、その組織構造が変化します。 損傷部位に対して、適切な時期に、適切な刺激量の、ストレスが加わることは、組織の修復につながります。   例えば、修復状況に対して、大きすぎるストレスを加えてしまえば、瘢痕組織に再び破壊が起こり、炎症をやり直すことになります。   例えば、修復状況に対して、あまりにもストレスを加えすぎないと、瘢痕組織に適切な強度が生まれず、小さな外力に対して容易に壊れる組織となってしまいます。     つまり、どちらも、最大の目的である「損傷前の機能を獲得」することに到達ができません。 リハビリテーションの重要性はここにあるのではないでしょうか。 損傷部位の修復状況を確認しながら、適切なタイミングで、適切な負荷を加えていく。   ストレスは良くない、と一般的な認識では知れ渡っていますが、適切なストレスは組織の修復、成熟を促します。 リハビリテーションの担当者にはその判断が求められます。     ◇炎症の結末 炎症によって起こるそれぞれの段階は、回復に向かう次のステップにとって必要な反応です。     そうやって、必要な反応(症状として表れることもある)を経過していくと、症状が治まり(消炎して)、損傷部位が以前と同等の組織に置き換わることが可能になります。   これが、最も望ましい結末といえますね。 しかし、現実にはそのほかの結末も存在します。 それは、瘢痕形成したままの治癒、膿瘍、慢性炎症です。     ◇おわりに 炎症の回復過程における、それぞれの反応についてまとめてきました。 関連記事: 「【炎症を理解する】炎症反応を整理してリハビリに生かす」 「【炎症を理解する】炎症初期に体で起きていることは治るための第1歩だった」 「【炎症を理解する】炎症症状のピークが過ぎた時こそ要注意!の理由」   事故や怪我のあと、リハビリテーション介入が行われなかったり、介入があっても不適切なリハビリテーションが行われると、損傷前と同等の機能を持った組織に回復することが困難になります。     適切に介入するには、タイミングに応じた「判断」が必要になります。 「判断」のためには「知識」が必要になります。 そして、その知識の根拠となる学説は、徐々に新しいことが解明されていっています。 古い知識を根拠にした介入方法は、いずれ「まちがった方法」として紹介されることになるかもしれませんね。     筋膜の機能解剖と徒手療法 筋膜についての新しい知見が学べます。 https://iairjapan.jp/fasciamoract   *お知らせ リハビリや世の中のことを斜めから見つめたメルマガ「福田のメルマガ」 毎週月曜日11:30にこっそりと無料でお届けしています。 登録はこちらから。     参考図書 EBM物理療法 原著第4版...

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