散歩

身体感覚に働きかけるプログラムを作ってみよう!(2)【作業療法とは?】(20)

前回は身体感覚に働きかけるプログラムの概要について紹介しました。

今回から、プログラムを組み立てる流れや注意点などを紹介します。

 

予告通り今回は「散歩」です。

 

 

散歩とウォーキング、その違いは?

ウォーキング

まず最初に質問です。

「散歩」と「ウォーキング」の違いは何でしょう?

少し悩んでしまいますよね。

シンプルに回答するなら、

「歩くことに集中するかしないか」

です。

もちろん、集中するのはウォーキング。

意識して歩くのがウォーキングなので、そちらはウォーキング療法士公式サイトにお任せします。

では、集中しないで歩く散歩は何を目的にしているのでしょう?

 

 

散歩の目的は?

目的

ウォーキングはどちらかと言えば「身体機能に働きかける作業療法」。

散歩は「身体感覚に働きかける作業療法」です。

ですが、同時に「社会性に働きかける作業療法」でもあるんです。

なので、散歩を患者さんに提供する際、目的となるのはこれらです。

  • 身体感覚レベル(五感)の現実感の回復。
  • 生活リズムの回復
  • 社会とのつながり、関わりの体験

一緒に散歩することで、これらが達成できる関わりを持っていきたいですね。

 

 

散歩に参加できるメンバーはどう選ぶ?

仲間

集団のレベルごとに設定する方法もあれば、一定の基準を設けてそれらを満たしたメンバーのみが参加できるようにするやり方などがあります。

僕が以前いた職場では、入職前からほぼ全員参加。毎週火曜日の午前中はみんなで散歩の日でした。

……ええ、OT処方箋は200床中180件。入職当時は職員あわせて60人程。

うん……そうなるまでの歴史はあったのでしょうが、冷静に考えると本来の作業療法の目的はどこにあったのか。

おそらく、半強制的に外に連れ出すことで、運動の機会、生活リズムづけ、集団行動を通じての社会性の回復などだったのでしょう。

ですが、参加する条件がハッキリしませんね。

 

 

目的から集団をつくるか? 集団にあらたな目的を作るか?

集団療法

目的にあわせて集団を作るのか、既存の集団にあらたな目的を作り、そこに向かってレベルアップをしていくのかで変わります。

僕の例では、おそらく目的にあわせて集団が作られた形だったのでしょう。

別な例では、SST(Social skills Training)のように、「散歩に行くためには?」と課題の共有から始めるやり方もあります。

参加するメンバーと一緒に、一定の条件を作り出し、それらを満たすことができたら参加できるプログラムとする方法です。

ええ、お気づきの方もいますよね。それって「社会性に働きかける作業療法」になっています。

身体感覚に働きかけ、現実感の回復を図る必要がある方達には、まだ時期がはやそうですね。

「身体感覚だけに働きかける」のなら、先にあげた「五感の現実感の回復」に集中してもらうため、スタッフが保護した状態で散歩に連れ出す形が良いのでしょう。

 

 

目的と対象決定の次は事前準備を

準備

目的も決まった。集団やメンバーも決まった。

次にすることは「そのメンバーとどこに行くのか」です。

少し意味が変わりますが「どこに行けるのか」で考えてもいいでしょう。

事前準備は、行く場所によって変わってきます。

いくつか注意点をあげてみましょう。

  • 自身の身体性を観察できているか配慮しているか?
  • 疲労に配慮しているか?
  • メンバーがパニックにならない情報量か?
  • 体力の持つ距離か?
  • 2時間の枠内に収まるか?
  • 途中、休憩する場所はあるか?
  • 公衆トイレなどのある公園を経由できるか?
  • 公園内で参加者全員が把握できるスタッフの立ち位置の確認はできているか?
  • 歩道はどのくらいの幅があるか?
  • 対向する人とすれ違いはどのくらいあるか?
  • 横断歩道を渡る回数は何回か?
  • 横断歩道に歩行者用信号機はあるか?
  • 緊急時の連絡手段、連絡経路は共有されているか?
  • 離院発生の防止対応は準備したか?
  • 離院発生時の対応の流れは把握できているか?
  • スタッフの役割分担ができているか?
  • 当日はスタッフ配置が多くなるよう勤務調整ができているか?
  • 当日持参する物品の確認はできているか?
  • 当日プログラム直前に準備するものは決まっているか?
  • 中止基準は設定したか?
  • 雨天時の別プログラムは準備しているか?
  • ゲリラ豪雨の対応準備はできているか?

おや?おやおやおや?

いくつかどころじゃない数になってしまいましたね。

もちろん、施設の敷地内移動なら不要なものも多数あります。

どこに行くのか、にあわせてチェックリストとしてご活用ください。

 

 

地図を例に考えてみよう

地図

少しリストが多すぎましたね。具体的に考えるにあたり、文明の利器を使いましょう。

まず、パソコンなどでGoogle マップを開いてください。

所属する病院を検索し、周辺の地図を出します。

今回は「例」なので、めぼしい公園ピックアップします。

そこに行く設定にしましょう。

地図上ではいくつかルートが出てきますね。

ですが、それを信じてはダメ。

最適なルートは自分の目で見て、事前に体験するのが大事。

なので、その地図と上記のチェックリストを印刷し、外に出ましょう。

もちろん、患者さん無しのスタッフだけで事前チェックです。

現場で現実と現物を見ると、何が必要なのか見えてきますよ。

 

 

具体的な準備物品は?

靴

実際にルートを見てくると、何が必要かが具体的になるでしょう。

ですが、共通して準備しておくものもありますね。

  • 救急バッグ。
  • 迷子になった場合の為の連絡カード。人数分。
  • スポーツ用やアウトドア用の大型ジャグ2台。スポーツドリンクとお茶。紙コップ。
  • 夏の時期のクーリング用品と保冷バッグ。
  • 虫除けスプレー、日焼け止め。
  • ゴミ袋、トイレットペーパー、ティッシュBoxなど。
  • ウエットティッシュ、タオルなど。
  • 外部使用できる院内PHSなど公用通信機器。
  • 列が長くなる場合の為のトランシーバー。

これらは必要になりますね。

 

 

スタッフは誰が?

だれが?

グループメンバーがそもそも何人なのか?

何人のメンバーさんと散歩に出るのか?

それによってスタッフの配置が変わります。

そうですね……メンバーさんとスタッフの割合で言えば、

「5:2+2」

でしょうか。

メンバーさん5人に対して、2名のスタッフで先導役と最後尾役。

加えて、救急対応に看護師さん1名。メンバーさんの誘導や観察に1名。

最低限、このメンバーで動くことになるでしょう。

 

 

スタッフが多すぎるのでは?

余裕

スタッフ配置が多い印象ですか?

そうですねぇ。

では、途中でメンバーの一人が動けなくなったらどうしますか?

一人だけそのままにして進むわけにも、全員がそこで止まってしまうにも、どちらも影響が大きいです。

その場合、帰ると言う選択と、スタッフ一人をそこに残して、更に病院に公用車の出動依頼をかけ、一旦スタッフと共に戻っていただく。

OT室で別プログラムに参加するのか、病棟に戻るのかなどその方の要望にあわせて調整。

その後、スタッフは再び合流するために移動。

おっと、その場合は車で待機するスタッフも必要という設定ですね。

 

別な例も出しましょう。

僕の経験上、健常者の散歩グループであっても、歩くペースがまちまちで、次第に列が長くなります。

その場合、最前列にいるスタッフと、最後尾のスタッフがやりとりをしながら、列の長さ、歩くペースの調整をします。

ですが、調整をするタイミングを見るにも、列の真ん中などで連絡役となるスタッフが必要になります。

場合によっては、グループを二つに分ける必要が出てきます。

最低5人のメンバーさんでも、2名と3名の2グループに分かれてしまうことだってあるのです。

これが10名になれば、同様に倍するスタッフが必要になるわけです。

 

 

プログラムのおおまかな流れ

事前準備、物品、人の配置が決まったら、おおまかな流れを確認しましょう。

2時間の枠のなかで、休憩を含め、往復して帰ってこれる。

その流れです。

では、2時間と言う枠を改めて……9:30開始設定で作ったものがこれです。

散歩プログラムの流れ

チェックリスト等を踏まえ、作成した例です。

もちろん流れなので、より詳細はグループメンバーに合わせ調整をしていく必要があります。

 

 

まとめ

今回は、「散歩」をテーマに目的からチェックリスト、流れまでを紹介しました。

より細部に、様々な関わりのポイントを加えていきたいところですね。

ですが、あくまで「身体感覚」に現実感の回復を期待するプログラムです。

身体機能面や社会性の面にも関わりたい欲が出ますよね。

メンバーの状況、レベル等にあわせて割合をコントロールできるといいですね。

 

次回は「アロマテラピー」をテーマに考えてみます。

お楽しみに。

 

 

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Saito Makoto

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精神科作業療法に従事する。そのなか、臨床実習指導と院内改善指導に携わり、統合的な視点で医療の質向上をマネジメントする取組みを10年にわたり行ってきた。 IAIRに参加することで、病ではなく人をみる視点を手に入れ、同時に組織も人と同じく、病を抱えていることに気づく。共に育む「共育」をテーマに、療法士一人一人が組織に関わるための多角的な視点を持てるよう、人財育成とマネジメントに関する発信を行っている。
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