身体アプローチ

身体感覚に働きかけるプログラムを作ってみよう!(1)【作業療法とは?】(19)

前回は精神科作業療法に従事するOTさん向けに「身体に働きかける作業療法」のまとめとして、講義動画を紹介しました。

全部公開しておりますので、まだみていない方は先にご覧になってください。

 

[復習とまとめ]作業療法プログラムの裏側を紹介します!

https://iairjapan.jp/archives/43009

 

大きく分けると……

  • 前半が精神科作業療法の基本的な考え方。
  • 後半が齋藤の活用してきた「脳」のエッセンスを加える方法。

で解説してきました。

これらを踏まえ、今回から「具体的に組み立てていこう!」をテーマに進めていきます。

 

 

PT,ST,OTの皆さんへ

思考回路

まず最初に、各職種の皆さんにお断りを。

今年から精神療養病棟で疾患別リハ担当として精神病院に入職された方もいるかと思います。

おそらく、同じリハビリ専門職なのに、精神科作業療法メインのOTさんって、話が通じねぇ!とか思ったのではないでしょうか?

新人さんはそうでもないと思いますが、長く精神科作業療法に従事してきた方は、疾患別リハでどんな事をしているのかを、なんとなくでしかわかりません。

「なんでそんな事も知らないの?」と思うかもしれませんが、そもそも養成校のカリキュラムが違います。

疾患別リハに従事するOTさんは、新人時代からPTさんと一緒に経験を積んできました。

その経験があっても、PTさんには物足りなさを感じているのかもしれません。

そも経験すらない、全く畑違いな、より日常や生活に近い関わりをしているのが精神科の作業療法士さんです。

現場が違えば、経験も知識も全く違うことを前提にしたうえで、コミュニケーションを諦めないでくださいね。

……言い訳じゃないぞ! 事実だけをお伝えしています!

……たぶん。

それでも、精神療養病棟で、共に疾患別リハを行っていく足掛かりを得られると思います。

是非最後までお付き合いください。

 

 

まず最初にすること

回復段階

「回復段階」や、「段階に応じた作業療法の目的」は、前回に遡っていただくとして……ってそれは乱暴なので図を見てくださいね。

その上で最初にする事は「どの段階のグループメンバーに関わるのか?」を確認することです。

なんだ、そんな当たり前なことか、と思わないでください。

グループメンバーに合った内容で準備しなければ、各回復段階に応じた目的を達成できませんものね。

みんなで一緒に同じ山に登らなければ意味はありませんよ。

 

 

メンバーの目的が決まった後は?

プログラム作成シート

どの段階のグループメンバーに関わるのかが決まれば、おのずと目的も決まりましたね。

では、次の段階として、どんな「身体に働きかけるプログラム」を準備するのか、ですね。

作業療法マニュアル31では、図のような分類で紹介されていました。

身体感覚レベル、身体機能レベル、個人の身体活動から人とのつながり、社会的広がりへ……と、三つに分けられています。

今回は「身体感覚レベル」でプログラムを作ってみましょう!

 

 

身体感覚レベルって?

健康的な生活

復習になりますが、身体感覚レベルとして介入したい要素は、外部からの感覚的な刺激を指します。

匂い、味覚、温度、触覚、光刺激、圧や音、振動などです。

もちろん運動時の筋肉の伸び縮みの感覚も大事ですね。

色々挙げましたが、基本の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を中心に考えましょう。

「身体感覚レベルの現実感の回復」が主な目的になりますからね。

 

 

プログラムの事前準備

準備

自分自身の身体の感覚、身体に加わる刺激を安心で安全な方法で刺激していくための準備をしましょう。

具体的なコレ!という内容がいくつかありますよね。

  • 散歩、散策
  • アロマテラピー
  • フットケア
  • リラクゼーション
  • ストレッチ

などなど。

(作業療法マニュアルでは自律訓練も含まれていますね。僕はストレッチプログラムの流れのなかに含めてやっていました)

これらに五感のどれを中心に行なっていくのかがカギになります。

あらかじめ、どれのどのタイミングで五感のどこに作用するのかをまとめておきましょう。

 

 

プログラム実施にあたり留意すること

何事にも留意点があります。

今回は五感ですから、それぞれで気を配るべきポイントがあります。

またそれ以前に、関わり方の面で以下の三つを配慮しましょう。

  • 不用意な接触をしない。
  • 姿勢や運動能力の評価(良し悪しの判断)をしない。
  • 強い刺激を入れない。

五感それぞれでもう少し詳しく紹介しますね。

視覚

    • 療法士は、必ず相手の視界の中にいる。
    • 相手との心理的な距離を測りながら近づいていく。
    • 背後から話しかけるのは言語道断。
    • 強い光刺激を入れない。

聴覚

    • 大きな音を出さない。
    • 刺激の少ない静かな環境から始める。
    • 天井から降ってくる音(話しかけ)を避ける。

触覚

    • 相手に触れるのは、段階的に行う。
    • 触る前に相手の視界に入る、距離を近くところから。
    • 強い圧、痛み刺激を急に加えない。
    • 日焼けに注意。

味覚

    • 誤嚥リスク等のため、あまり早い段階では行わない事が多い。
    • 基本的に口に含むものを扱う際は少人数で行う。
    • 調理などの際、味の濃いものを好むので注意。

嗅覚

    • 強い香りのものを使わない。
    • 大脳辺縁系に作用しやすい。
    • 合わないと感じた時点でストレス因子となる。

 

 

どれから始める?

ウォーキング

さて、おそらく「どのグループにコレ!」と具体的に書き出されるものを期待されているかと思います。

難しいなぁ。グループメンバーによるものなぁ……

うぐぐ……「具体的に組み立てていこう!」をテーマにしてしまった手前、形になっている方がいいよねぇ?

僕のオススメとしては、

  • 「散歩」
  • 「アロマテラピー」
  • 「ストレッチ」

です。

なぜなら、これらは全て五感のそれぞれを感じながら行えるものばかりだからです。

例えば「散歩」でどんな身体感覚に働きかけるのかと言えば、

  • 視覚:日常とは違う風景、周囲の環境、相手との距離など。
  • 聴覚:風の音、雑然とした生活音、車等危険物の音、相手との会話など。
  • 触覚:季節の草花、移動中や公園などの構造物、手を繋ぐなど。
  • 味覚:スポーツドリンクやお茶など、散歩前後での味の違いなど。
  • 嗅覚:季節の草花、環境による違いなど。

と、こんなところでしょうか。

少し紙面が足りなくなってしまいましたので、次回詳しく解説します。

という事で、次回より「散歩」、「アロマテラピー」、「ストレッチ」をそのまま使えるプランとして順番に解説していきますね。

お楽しみに!

 

作業療法士 齋藤 信

 

 

散歩とウォーキングって違うの?

全く違います!

セロトニン面からも違いますし、そもそも目的が異なります!

そんなウォーキングの話を2000年シドニーオリンピック競歩日本代表選手の柳澤哲先生が動画で紹介しております。

 

 

作業療法に脳科学的要素を組み込む方法を動画で学べます!

脳科学的根拠に基づく作業療法

 


Saito Makoto

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精神科作業療法に従事する。そのなか、臨床実習指導と院内改善指導に携わり、統合的な視点で医療の質向上をマネジメントする取組みを10年にわたり行ってきた。 IAIRに参加することで、病ではなく人をみる視点を手に入れ、同時に組織も人と同じく、病を抱えていることに気づく。共に育む「共育」をテーマに、療法士一人一人が組織に関わるための多角的な視点を持てるよう、人財育成とマネジメントに関する発信を行っている。
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