前回まで「リスク」、「安全」、「危険」と言葉の確認をしてきました。
今回はようやく「医療安全確保」のお話し。
順次動画で解説もはじめておりますので、あわせてご視聴くださいね。
前回までのまとめ
- 実は分野や人によって違った意味で使っているので、注意が必要!
- 医療で言うリスクマネジメントは、医療事故の未然防止または事後の対処に限定!
- リスク=危険ではない。
- リスク=目的に対する不確かさの影響。
- 安全とは受け入れ不可能なリスクがないこと。
- 患者は安全が当たり前に得られるものと思っている。
- 事故は起こるもの。絶対の安全はない。
- 危険の予測と事前対処が大事。
などとお伝えしてきました。
*コラムにない部分は動画講義で紹介しています。
思っていた「リスク」のイメージや意味と違っていたのではないでしょうか?
医療の現場では「危険」の意味で使われていることが多いようです。
情報交換の際、相手と自分との間に言葉の意味の取り違いがないか十分確認しましょう。
医療安全の取り組みは必須!
新人さんは入職して一月半。
そろそろ委員会と言うものがあることにお気づきですね。
委員会は医療機関には必ずあるもので、医療安全、感染予防、褥瘡対策、栄養管理、防災などが入院基本料に関わっているものです。
それらを適切に運営しているからこそ、医療機関は診療報酬を得ることができるんですね。
適当にしていてはイケナイことですし、「医療サービス」を維持する意味でも継続して取り組んでいきましょう。
具体的にどんな取り組みをしたらいいの?
医療安全の取り組みは、……
- 組織横断的に、改善や質向上の努力をする。
- 根本的な解決を目指す。
- 個人や部署だけではなく、全職員で取り組む。
- 全職員の柔軟な対応や発想の転換を求める。
などが教科書的には挙げられます。
それぞれ何を意味しているのでしょう?
1)組織横断的に、改善や質向上の努力をする。
個人の能力を高めればいいわけではありません。特定の部署だけができていればいいわけではありません。
誰かや、どこかの部署で起きた事は、形を変えてあなたの現場にやってきます。
対岸の火事ではなく、自分事として改善する努力、現状維持に満足しない努力をしていきましょう。
2)根本的な解決を目指す。
いわゆるリスクマネジメント委員会やヒヤリハット報告は、犯人探しの場ではありません。
個人の吊し上げをする場ではありません。イジメの温床にしていい場ではありません。
……新人さんには毒が強すぎた? うん。ごめん。
犯人探しをしている時点で、対症療法的な対応に止まります。
リハビリと一緒で、根本原因がどこにあるのかを見つけて、その改善をしない限り同じ事を繰り返します。
もう、これ以上言わなくても分かりますよね。
3)個人や部署だけではなく、全職員で取り組む。
繰り返しになってますね。ええ、大切な事なので繰り返します。
組織をまたいで情報交換する。
全職員が「改善って何」、「質向上って何」など、意味や意義を共有する。
全員が目的を共有することで、根本的な原因探しを常に行える。
なので基本的にイジメや吊し上げはなくなるはずなんですよね~
4)全職員の柔軟な対応や発想の転換を求める。
現場の皆さんの傾向として、既存の考え方ややり方を変えたがりません。
「え?今うまく行っているのに何で変える必要があるの?」
よく聞く言葉です。
ですが、そのやり方……
・誰かの犠牲の下に成り立ってませんか?
・多少の手間がある事に目を瞑っていませんか?
・分かっているのに面倒と思っていませんか?
過去、うまくいった方法が今でも効果的な方法なんてことはあり得ません。
時代とともに、スタッフの世代交代とともに、常にやり方は変えていくものです。
今回の新型コロナウイルス感染症による、生活スタイルの変化がいい例ですね。
未然防止に取り組むポイント
医療安全を確保しようとすると、未然に防止する取り組みがカギになります。
なるべく事前に予測できることを洗い出し、起きる前に防ぐ、あるいは回避する準備をしておきます。
そのために「マニュアル」が存在しているのですが……
- マニュアルの無い現場
- マニュアルが形骸化している現場
- マニュアルを忌避する現場
が散見します。
うん……訴えられたら即アウト!
トカゲの尻尾切りされかねません。
なので、マニュアルを必ず見直して、未然防止の為の取り組みが全員で統一されているか確認していきましょう。
その時に確認しておきたいポイントは4つです。
- 危険・事故の予測および予知
- 危険・事故の防止または回避
- 危険・事故対処と拡大防止
- 危険・事故の再発防止
これらそれぞれの対策、行動指針が記載されているかチェックです。
マニュアルに数字を振って確認するのもいいですね。
で、基本的には一つの事象に対して1~4の順番に全て記載されているのが望ましいです。
足りない部分や、今とマニュアルで違う運用をしているものを洗い出し、更新していきましょう。
なぜそこまで安全にこだわるのか?
実は第1回で紹介した「安全の反対語は?」の回答を新たに修正させていただきます。
「危険:予定外、想定外の事態が発生すること」
ではなく……
「予定外、想定外の事態が発生した結果、危険」
なので、危険も予定外、想定外の事態も含む。
……つまり、危険だけを指すものではないので、医療の特性に倣って、
「安全」の反対語は「不安全」
とします。
事実、変化し続けるものに侵襲(介入)するのが医療であり、医療は不安全行為です。
リスクと治療効果を考え、選択する行為が医療なのです。
だからこそ、専門職として不安全行動をしない事が、安全を確保し、未然に防ぐ事につながります。
不安全行為だから、安全にこだわり、不安全行動をしない。
それが医療に携わる全ての人の義務だからです。
でも問題が……
でも、問題があるんですよね。
それは今回紹介したように、「個人の努力だけではどうにもならない」からです。
だからこそお勧めするのは「仕組み化(マニュアルを整える事)」であり、そこに加えて個人がどんな努力をすると良いのか、なんです。
それらを担保するためにも……って、誌面が足りなくなりました。
ここから先は、次回にしたいと思います。
(つづく)
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