リスクマネジメント入門

[新人さんが最初につまずく医療の話]リスクマネジメント入門(2)【新人応援】【作業療法とは?】(17)

前回は「安全」、「危険」、「事故」についてお話しをしました。

  • IAIR-CafeでオンラインLIVEセミナーをしたので、会員の皆様はご確認ください。
  • 会員ではない方は、後日YouTubeで配信します。気長に待っててくださいね。

前回は「リスク」の定義についての解説まで進まなかったため、「リスクの定義が違うような……」とコメント欄でいただきました。

そうですね。

この「リスク」と言う言葉、なかなか解釈が難しい。

まずは「リスク」について共通認識をもちつつ、「リスクマネジメント」の話に進んでいきたいと思います。

……「リスクマネジメント」の話まで進むかな……

 

 

リスク=危険じゃない!

リスクと危険は違う

リスク、リスク、リスク……と、臨床でよく聞く「リスク」とは、どんな意味で使われているのでしょうか?

「え?リスク=危険じゃないの?」

と言う顔をしなたなら、狭い意味で使っていることになります。

ISO31000では、

「目的に対する不確かさの影響」

と定義されています。

「危険」とは一言も書いていないんですね。

 

別な言葉で言えば、

「何らかの目的行動をしようとした時、あいまいな状況があり、それによって引き起こされる影響」

……うん、文章長くなっただけだ~けど、そう言うことです。

「不具合の起こりやすさとその影響」の方がいいのかな?

 

 

じゃあ、危険ってナニ?

危険

リスク=危険ではない、と言うなら危険って一体何を意味しているのでしょう?

  • 「未来において、損害や損失が発生する可能性があること」
  • 「悪い結果を招く可能性のあること」
  • 「周囲の変化により、予定外、想定外の事態が発生すること」

などを意味しているのですが……

実際には、リスク(不具合の起こりやすさ)ハザード(潜在的な不具合)の意味で使われているため更に混乱してきますね。

しまった……新しく「不具合」って言葉が出てきてしまった。これはまた別な機会に。

 

 

一度まとめます!

  • リスク「目的に対する不確かさの影響」
  • 危険「悪い結果を招く可能性のあること」

で話を進めますね。

 

 

なるべく具体的な例の話を

もう少し身近で具体的な例の話をしようと思います。

 

トイレに行きたい患者さんが、いるとします。

 

この方が「移動する為の手段を複数持っている」こともリスクです。

歩行で行くかもしれないし、車椅子を使うかもしれないし、介助を希望して移動するかもしれません。

 

それぞれを選択した時に引き起こされる影響が、良い方向に進むのか、悪い方向に進むのかこの時点ではわかりません。

 

では選択肢を減らして、車椅子を使うことになったら、今度は「複数回の移乗をする」と言うプロセスが生まれます。

ここで「移乗動作がリスク無く行えるか?」と考えがちですが、ここでは「危険」の意味に限定された表現です。

本来の「目的に対する不確かさの影響」だと、意味がおかしくなりますね。あり得ませんから。

その場合は、「無く」を「少なく」に変えなければなりません。

そう考えると、「移乗動作をリスクが少なく行えるか?」になります。

 

移乗動作をするにあたり、不確かさ、あいまいさの少ない状況を考える必要が出てきます。

「車椅子でトイレに行く」と言う目的に対して影響が出やすい不確かなものとして「複数回の移乗」が出ましたね。

 

ちなみに、この方はなぜ車椅子移動なのでしょう?

事前の評価の部分で、「介助なし歩行」、「介助あり歩行」よりも「車椅子移動」の方がよい、という判断をしているんですよね。

「歩行」よりも「複数回の移乗」の方が、この方にとって「リスク」やその「選択の結果としての危険な状況」が少ないという判断をしているって事です。

 

うぅ~む。
複雑怪奇になってきましたよね。図にしますか。

曖昧な状況

*お気づきかもしれませんが、リスクを少なくしようとして、リスクが増えていく場合もあります。

 

 

リハビリを提供するうえで安全と危険を天秤にかける

リスクを天秤に掛ける

これは前回の補足にあたります。

安全とは……

  • 「事故がないことではなく、許容し難い事故がなく、かつ、そのおそれがないこと」
  • 「予測の範囲内で安心できること」

と定義されていると紹介しました。

この図で見ていただいてわかるように、医療の提供は許容可能なリスクの範囲内で提供しています。

受入不可能なリスクを敢えて選択することは無いのです。

事故が起きる状況ってわかりますか?

許容可能なリスクの範囲内で医療サービスを提供しようとしていたのに、予測していなかった事が起きた影響として起きます。

その結果として人や組織に危害、被害、損傷を与えてしまったため、医療事故となります。

僕たちは、(例えば転倒)リスクを受け入れ、責任を引き受けてリハビリを提供します。

常に、安全と危険を天秤にかけ、何がリスクか分析しながらリハビリを提供していくことが求められています。

 

 

リスクマネジメント(危険管理)とは?

リスクマネジメント

ようやく……いえ、無理やりリスクマネジメントの話となりました。

まず、改めて言っておかなければならないことがあります。

「リスクマネジメント」と言う言葉が持つリスクについてです。

実は「リスクマネジメント」と言う言葉は分野や人によって違った意味で使っているので、注意が必要なんです!

  • 一般で言うリスクマネジメント
    事故や危険がなるべく起きないように対処すること、および事故や危機的な状況が発生した後に対応する活動を呼ぶ言葉。
  • 医療で言うリスクマネジメント
    医療事故の未然防止または事後の対処、あるいは質保証活動の一部を意味している。
  • 経済で言うリスクマネジメント
    経済学上で言うリスクは「ある事象の変動に関する不確実性」を指す。
    良い結果も悪い結果も起きる可能性があるものに対し、回避、分散、対処などを行うことを言う。

そう。リスクの意味は同じでも、株式投資の話などと一緒にすると、混乱してきます。

まぁ、やることも一緒なんですけどね。

 

あくまで医療の分野では「医療事故の未然防止、事後の対処」をするため、管理や経営を行っていくことなんです。

前回紹介したように、医療は不確実性を持っています。不安全行為なんです。

だからこそ、安全を確保することが医療人の最重要な課題となってきます。

 

 

まとまらない!

リスクマネジメントの話は、難しさ、難解さを増してきますね。

前回の冒頭で言った「医療事故(防止)対策」ではなく「医療安全確保」と言う考え方が必要だと覚えておいてください。

 

ようやく「医療安全確保」の為の活動、取り組みである……とまで着地しました。

次回からは「安全確保の取り組み」としてどんな事をしているのか、についてお話ししますね。

 

 

余計にあたまがグルグルしてきた新人さん!
スマンっっ!
次回もメゲずに読んでみてね。

 

(次回につづく)

 

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引用・参考文献

  1. 病院早わかり読本 第5版 増補版 飯田修平(2017)
    コラム筆者も再版される毎に買いなおしている本です。
    医療従事者必読書としてオススメします。
    特に新人さんは、現場で教えてもらえないことがあるアレコレが補完できます。
    「大きな病院だからできることだろ!」と言う批判もある本ですが、管理職やベテラン勢も誤解している部分を再学習できますよ。
    何より、次回はきっとCOVID-19対策が盛り込まれるだろうから、今から楽しみにしている本です。(文責:齋藤)

Saito Makoto

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精神科作業療法に従事する。そのなか、臨床実習指導と院内改善指導に携わり、統合的な視点で医療の質向上をマネジメントする取組みを10年にわたり行ってきた。 IAIRに参加することで、病ではなく人をみる視点を手に入れ、同時に組織も人と同じく、病を抱えていることに気づく。共に育む「共育」をテーマに、療法士一人一人が組織に関わるための多角的な視点を持てるよう、人財育成とマネジメントに関する発信を行っている。
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