前回のエピソードでは、科長から「キャリアとは?」と質問を投げかけられました。
受けた教育と、生きている時代、所属するコミュニティで、それぞれの視点が異なっていました。
今回は50回目なのですが、彼らのエピソードは少しお休み。
彼らの選択は一旦お預け。
改めてキャリアについて考えてみましょう!
キャリアを再定義しよう!
前回……
- デュアルキャリア
- パラレルキャリア
- セカンドキャリア
- プロティアンキャリア
と、様々なキャリアを紹介しました。
その中でも、最後に紹介したプロティアンキャリアというモデルが、今の時代に最も合った考え方のようです。
終身雇用は無理!と大企業が言っているように、一つの組織に依存するのはリスクが高いと言います。
前回から繰り返しますが、キャリアとは自分の所属する組織内で昇進することではありません。自分の所属する組織内で認められることでもありません。
キャリアとは「結果」ではなく「過程」であり、人生の軌跡なのです。
療法士にとってのキャリア構築とは?
では、キャリアが「結果」ではなく「過程」であり、人生の軌跡だと言うなら、療法士にとってのキャリアとは何なのでしょう?
とても恐ろしいことを言ってしまえば……
療法士の資格自体、人生の一部であり、過程。軌跡の一つでしかないという事実。
療法士にとって……と思った時点で、あなたは人生の軸を「療法士」にしており、療法士軸の一部に自分の人生を置いているのかもしれません。
ある作業療法士の話
彼は、やっとの思いで念願の作業療法士になりました。
期待と希望に胸を膨らませ、「自分がみんなを治すんだ!」、「リハビリをして良くなって貰うんだ」と、張り切っていました。
でも、3年目の秋口……彼はその病院を去りました。
理由は組織ぐるみの隠蔽体質。しわ寄せの全てをスタッフ個人に負わせるパワハラ体質。
当時、付き合っていた彼女には、会う度にやつれていく姿を心配されていました。
結果、心身ともに疲れ果て、燃え尽き、辞めたのでした。
辞めてみると、その病院以外にコミュニティに一切所属していなかった事に愕然としました。
誰にも、助けを求められなかったのです。
思いついたのは、養成校でした。
担任に相談した事で、ひとまず食いつなぐ為のバイト先を得ることができました。
週に1度ですが、車で片道二時間の田舎の老健でのバイト。
それ以外は、郵便局で配達の外回り。
働ども働ども、お金は貯まらず、時間と心身のエネルギーを消費していくばかり。
並行して、新たな職場も探して回りますが、目立つ求人のほとんどは、扱いの面倒そうなキズ持ちOTを雇いませんでした。
ですが、たまたま、同級生がいる事を知らずに面接を受けた職場に雇ってもらえました。
その同級生は入れ替わりで辞めていきましたが、後で聞いた話では、「真面目ですよ」と当時の科長に一言言ってくれたそうです。
彼はまだ、その同級生に再会できていないそうですが、一言お礼をいいたいそうです。
紛れもなく、人生の変わった瞬間だったのですから。
ある作業療法士の話から学ぶことはある?
ある小説家は「物語はエンタメなのだから、そこから学ぶものなどない」と言っていました。「読み終わった時、没入していた世界から現実に戻って霧散する。だから物語だ」とか言っていたはずです。
半分同意、半分ちげえだろ!と思っています。
まぁ、そこはまた別な機会に語りますが……学ぶことはある、というスタンスでもう一度読んでみてください。
今度は「キャリア構築」をしっかりと念頭に置きながら。
一つの組織に依存した末路?
一つの組織に依存するのはリスクが高い、と話しました。
実際に、彼は2年半ほどの時間、その全てを一つの病院に捧げていました。
研修会に参加出来ていれば視点の違いや、組織の外のコミュニティに所属することもできたでしょう。
ですが、彼はそうしなかった。自身の選択だったのかもしれませんが、手放して初めて分かったことだったのかもしれません。
一つに依存したことでどうにもならず、八方塞がりになっていました。
そんな彼を救ってくれたのは、組織の外の繋がりです。
狭い組織や業界の中で思考停止していても、淡い繋がりは誰もが持っている事に気付けるものでした。
もし、ここまで読んだあなたが「一つの組織に依存しすぎているのでは?」と不安になっているなら、少しだけ周囲を見回してみましょう。
組織軸から、自分の人生軸で見直せば、繋がりが見えてきますよ。
人間、社会的な活動無しに生きてくのは困難な生き物なのですから。
大切なのは社会との「関係性」
先のエピソードで社会との「関係性」にカギがあると気付いていただければ嬉しく思います。
様々なコミュニティとの「関係性」があるからこそ自分の人生軸でキャリアを変幻自在に変えていけると言います。
実際に、最近では「コネ入社」の意味合いが変わってきていると言います。
昔なら、親のコネクションで就職することは褒められたものではない、と言った風潮でしたね。
ですが、今や「知り合いが知り合いを紹介する」のが当たり前です。
あらかじめ、人となり……人格、能力、更にその人の持つ繋がりなどが分かった状態で雇いたがる企業が増えていると言います。
複数のコミュニティに所属していない、あるいは友人が少ないなどもリスクな時代のようです。
その場合、専門性に特化する事でどうにかなる事もありますが、専門家は一番だから専門家。二番ではダメ……とは言い過ぎかも知れませんが、その位に自身の市場価値を把握する事が大事になるでしょう。
三度改め、療法士とキャリア構築とは?
少しだけ言い方を変えました。
「療法士のキャリア構築」ではなく「療法士とキャリア構築」です。
先程も言ったように、全て軸で考えます。
まず確認して欲しいのは、「自分の人生軸」です。
「療法士」というキャリアは自分の人生の一部でしかありません。
人生の全てではありません。
あなたはこれまで、疾病により自身の生き方を全て変えなくてはならなくなった患者さん、利用者さん、クライエントさんにリハビリをしてきたのではありませんか?
そのなかで、仕事が全てだったのに、障害が残った事で絶望している方もいたのではありませんか?
あなたの受け持った方で、障害受容の早かった方、なかなか受容出来ずにいる方はいませんでしたか?
双方の違いは何だと思いますか?
違いの一つは、複数のコミュニティとの関係性だったのではありませんか?
療法士を人生の軸の中に持つ方のキャリア構築を考えるなら……
今一度、あなたの持つ関係性をしっかりと見直してはいかがでしょう?
そのうえで、自分の人生の軌跡を書き出すなど、可視化してみることをお勧めします。
実は今、経験年数が13年以上の方を心配しています!
実は今、経験年数が13年以上の方を心配しています。
13年目と言えば、先輩さん……セカンドキャリア世代の方ですね。
もちろん、僕と同じ40代のキャリアは死んだ世代も一応心配してますよ。
言い換えれば、変化が苦手な世代かな。
正直言って、若手は大丈夫でしょう。
何せ、スマホやSNSを使いこなしていますから。
世の中の大半の暗黙の了解やら社内ルールなんてものは、根拠がありません。
どこかのコメンテーターの言葉を借りれば「ジジイが作ったルールだから!」だそうです。
言葉が悪いのは変わってお詫びします。僕には抵抗があって使えない言葉ですから。
そんなものに縛られてきた世代は、スマホをポンポン乗り換え、新たに 出てくるSNSサービスに適応し、新しいアプリを取っ替え引っ替え使っている「チェンジ世代」には敵いません。
だから心配。
つい、変化を嫌う人達同士でちっさいコミュニティに居座っちゃいますから。
そうはならず……変化を厭わず、社会や環境の変化に適応していく姿勢を持ち続けたいものですね。
まとめ
今回もヘヴィな内容になってしまいました。
一言で乱暴にまとめるなら「関係性を大切にして、変化に適応しようぜ」です。
あなたのこれからのキャリア構築の助けになれば 幸いです。
ってことで……彼らリハ科メンバーの選択は、次回につづく!
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こんなキャリア論の話をしていますが……
こんなキャリア論の話をしていますが、元々は精神科で働く作業療法士です。
以前から作業療法を応用した講義を開催したいと準備をしてきました。
その一つがこのオンライン講義です。
作業療法士に限らず、現場によっては集団セッションのリーダーが求められます。
そんな時、効果的に脳に効くプログラム構成があります。
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参考文献
- 大町かおり他,「リハビリテーション職種のキャリア・デザイン」2017
- 田中研之輔,「プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術」 2019
- リンダグラットン他,「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」2016