「不動」について考察する

「不動」について考察する

IAIRでは「不動」を鍵としてよく挙げていますが、この「不動」とはどのようなものを指すのでしょうか。

一般的に「不動」を検索すると以下のように出ます。

・動かないこと。
・他の力によって動かされないこと。ゆるぎないこと。

なんとなくイメージできるものばかりですね。

ここからは、リハビリテーション職である私たちの現場での不動はどのような場面で起きるかを考えていきたいと思います。

 

不動はあらゆる場面に起こる

私たちが最もよく目にする不動の1つとして、Ope後の長期固定による「不動」が挙げられます。

例として、TKAなどで膝のopeを行った後の関節可動域制限などは、まさに「不動」の1つ、ですね。

ここで、膝はどうして曲がらないのだろう?

という疑問をクリニカルに考えるのがリハビリテーション職の本領発揮、というわけですが、ここで挙げられる「不動」の要因は1つではなさそうですね。

ここで「膝関節が曲がらない理由」について少し考えてみましょう。

 

1. 結合組織の癒着・瘢痕化

まず最も挙がるのが、先の例でいくと、TKA ope後に伴う結合組織の癒着・瘢痕化に伴うROM制限、でしょうね。

これは誰もが考えるROM制限因子でしょう。

早期リハビリテーションとして、術創部周辺の皮膚を含む結合組織や関節のモビライゼーションを行う、などが挙げられます(ここでは評価・統合と解釈の流れ・時期などの詳細については書きません)。

 

術創部自体の炎症反応具合によっても、創部に触れるか否か、また周囲もアプローチ対象か、などクリニカルな視点での検討材料は山ほどあるにしても、どのタイミングかで創部や創部周囲の結合組織が「膝関節が曲がらない理由」に当てはまるのはほぼ確実、と言えるでしょう。

 

2. 長期の固定に伴う関節拘縮

次に挙げられるのは、長期の固定に伴う「不動」による関節拘縮、です。

ラットを使用したある研究では、不動群とope群の2群に分けて、関節可動域にどのような変化があるかを検証し、opeのない不動群において有意に関節可動域制限が多く残存した1)、という結果でした。

臨床場面においてはope後の制限因子をどうしてもopeの影響と考えてしまう方が多い印象ですが、このような研究がたくさんあることを考えると、長期固定による「不動」の影響の大きさを感じることができます。

ここで注意しておきたいのは臨床的には長期固定に伴うものは「廃用」と考えることも多いですが、廃用に伴う筋肉の萎縮とは別に高齢に伴い筋肉量が減少する「サルコペニア」についても考えておく必要があります。

 

3. 活動性低下

その次に挙げられるのは時期にもよりますが、ope後の活動性が低下したことによる「不動」です。

高齢者ですと、社会的な背景によってはope後に外出頻度が激減するケースがあります。

この場合、私たちの考えるクリニカルな要素だけでは解決できないこともあります。そして解決できないあまりに、評価項目から外してしまうセラピストもいるかもしれません。

しかし、社会的「不動」はこれからの超高齢社会にとっては非常に重要な課題の1つと言えます。

リハビリテーション職としては、必ず評価項目の1つに入れておきたい項目です。

 

以上のように、一言で「不動」と言っても様々な状態が複雑に絡み合っていることがよくわかります。

これらを考えて整理して、そして一つ一つ解決していくのが私たちの仕事と言えますが、とはいえなかなか整理するのが難しい、というのもよくわかります。

 

グラデーションを見極めるためのかんたんな基準

急性期から亜急性期・回復期・慢性期と、夕焼けのようにグラデーションに変化していく中で明確に評価していくというのは、難しいものです。

そこで、不動をある程度分け、整理する方法をお伝えします。

「身体的不動」と「社会的不動」に分けることによって、ある程度の分類をすることができます。

 

1. 身体的不動

身体的不動とはからだの局所的・及び全体的不動を指します。

上の例でいくと、1. の結合組織の癒着・瘢痕化と2. の長期の固定に伴う関節拘縮がそれにあたりますね。

癒着・瘢痕化によるものはからだのなかでも局所的な不動にあたりますし、不動に伴う関節拘縮はからだの全体的な不動になるので、厳密には分類してもいいのですが、いずれにしても「不動」に当たります。

そしてこれらの「身体的不動」をIAIRでは「immobility:インモビリティ」と表現しています。

 

2. 社会的不動

こちらは上の例でいくと3. の活動性の低下を指します。

最終的にはimmobilityに直結はしますが、独居、サービスの十分の利用ができない、社会での役割の欠如などによる社会的不動を指します。

「社会的不動」をIAIRでは「inactivity:インアクティビティ」と表現しています。

近年注目されているフレイルやサルコペニアなどもこの「社会的不動:inactivity」が大きな要因とも言われています。

 

グラデーションという理解

via GIPHY

immobilityinactivityというある程度の分類をすることによって、私たち療法士が頭を整理することができるのは非常にメリットです。

とはいえ、実際はグラデーションであるということも非常に重要な視点であることは忘れないでほしいと思います。

医療におけるエビデンス抽出のように、臨床はアウトカムを明確にバッサリ切っていくものではありませんので、

「今の時期はグラデーションのどのあたりなのだろう?」

「日々混ざる色合いの中で何を選択していこう?」

と日々リーズニングをしていくことが重要です。

 

下記の図からも分かる通り、どちらだけということではなく、ICFでも強調されているように矢印が双方向である、というのは重要な点です。

IAIRコンセプト

私たち療法士が「不動」という視点を捉えた時にimmobilityinactivityという分類で評価と治療を進めながらも、日々変化するグラデーションをどのように見ていくのか、臨床の視点を日々磨いていくことが最終的には非常に重要です。

 

1)Trudel, G., Zhou, J., Uhthoff, H.K. et al. Clin Orthop Relat Res (2008) 466: 1239.


Scroll to top