療法士のキャリア構築

不安になる?療法士のキャリア構築【5年目を過ぎた療法士の君へ】(49)

前回のエピソードは、先輩さんの辞める宣言から、後輩くんが悩み、今の職場について考えるようになりました。

そんななか、お互いの対話が足りていないのではないか、という科長の言葉に皆、思いが動き始めたのでした。

 

科長「うん、色々考えちゃってね……僕たちはいつもここで話しているけど、話していないんじゃないかな、って思ってね」
後輩・新人「……」

先輩「そりゃあ、科長が何でも聞き役になって、OKばっかり出してるからですよ」
後輩「え?それ言っちゃうんですか?」
新人「え?そうなんですか?」

先輩「色々頭の中で考えてたって、話してくれなきゃワカラナイですよ」

新人「先輩でもそうなんですか?」
先輩「いやいやいや、エスパーじゃないし」

後輩「エスパーは置いておいて……何でもOKしてくれますけど、やっぱりどこか不安になるというか」
先輩「ほらね」
後輩「俺らの悩みとか考えている事に関心がないのかな?って……」

科長「そうか、そう思ってたのか……」

先輩「まぁ、私は長いから科長の人となりはなんとなくわかってるつもりだけどさ……」

科長「……わかった。なら、今回の事で考えた事を言う」
先輩・新人「……お願いします」

科長「その前に、君らはキャリアと言う言葉をどのように捉えている?」

先輩「そうえば、夏の前にもそんな話をしましたね……」

先輩・新人「キャリア……」

 

さてさて、回答前に質問をするとか、どこかの誰かを思い出しそうですね。
対話の話は一旦置いて、今回のテーマは「療法士のキャリア構築」です。

最近「○○キャリア」という言葉が増えてきました。
そのせいで、それぞれどんな意味を持っているのか、確認しましょう。

あなたのキャリア構築に対する認識と、進むべき道を考えるきっかけになればいいですね。

 

1年目:新人視点「意外と冷静?デュアルキャリア世代」

療法士のロールモデル2019齋藤

新人さんは20代前半。まだまだこれから先は長い。

でも、長いだけあって、物事を冷静に見て、考えています。

もちろん、先が長いのは人生。

「キャリア」の意味を他の療法士とは違った視点で見ています。

「療法士」と言うキャリアは、人生のうちの一つの軸でしかありません。

100年に渡る人生を自分らしく生きる……自己実現したい事などを人生を通しての軸と考え、その為に必要な経験やスキルを得ていく考え方です。

人生をかけて実現したい事があるなら、この二軸思考が有効かもしれませんね。

 

 

7年目:後輩視点「堅実にいきたい?パラレルキャリア世代」

働き方改革

後輩くんは30代目前。一箇所に縛られるのもなんとなく嫌かも……と思いつつも行動化できていませんでした。

パラレルキャリアと言う言葉が周囲に溢れ、キャリアを作るには「副業」ではなく「複業」でできると捉えています。

7年目になるこの現場で働きつつ、自分の経験や能力を活かせる場が他でも作れるのではないか、と密かに考えています。

まさにパラレル。本業を行いながら、並走するように他の経験やスキルが得られるよう、他分野に片足を突っ込んでみる考え方です。

かつては履歴書が綺麗な方が好まれましたが、今やその人が持つ多様性が見られる時代。

働き方改革として、パラレルキャリアが推奨されるのもわかる気がします。

 

 

13年目:先輩視点「まだまだ昭和?セカンドキャリア世代」

努力の積み重ね

昭和後期に生まれ、平成を生きた先輩は、板挟み世代からゆとり世代にかけてどちらの考えも体験しました。

とは言っても、時代的には昭和思考であり、染み付いた考え方は、次の行き方をどうしよう、です。

二軸でも、並行でも考えられずにいます。いえ、考えてはいるのですが、染み付いた思考……思い込みや習慣によって、行動の幅が狭まっています。

今や、セカンドキャリアという言葉で自身の人生を考えるのは危険信号です。

次、ではありません。並行して色々な事を経験し、スキルアップしていかなければ……数年後には使えない人になってしまうかもしれません。

やりたい事があって次に行こうとしているのですから、少し立ち止まって、冷静に「じぶんがほんとうにしたいこと」を見極めてはいかがでしょう?

 

 

20年目:科長視点「ミドルの憂鬱脱却なるか?キャリアは死んだ世代」

ミドルの憂鬱という言葉をご存知でしょうか?

毎日の仕事を奮闘する事なくこなせるようになり、手応えの無さを感じる状態に。

そして、次第に仕事に没頭できず、「このままでいいのか?」と思いつつも行動化できず、漠然とモチベーションが下がっていく。

別な言葉で言えば「キャリア・プラトー」でしょうか。

組織で働いているうちに、キャリアアップが見込めず停滞状態に陥ることを言うそうです。

さてさて、30代後半から40代の人たちには恐ろしい言葉かもしれませんね。

 

 

だったら、どんなキャリアがいいのか?

自尊心

前回のインフォームド・コンセントと同じく、日本はキャリアに対する考え方が時代遅れと言われています。

“The Career is Dead”「キャリアは死んだ」というタイトルの書籍が1996年にダグラス・ホール教授によって世に出されていたのです。

伝統的キャリア形成では、一つの組織に依存し、その組織のなかで昇進や権力を得る事が目的であり価値でした。

また組織内で何をするのか、組織から尊敬されているか、という他者からの承認がベースになっています。

伝統的キャリアは、組織の中で昇進するための尺度だったんですね。

ですが、先に登場したダグラス・ホール教授は「プロティアンキャリア」という考え方を提案しています。

プロティアンキャリアは、キャリアの所有者は組織ではなく個人であるとし、自由と成長がその価値観であると言います。

組織内で認められるという小さな枠での話ではなく、仕事の満足感や専門性を発揮できる事に意味があります。

他人から承認される事ではなく、自分を尊敬できるか?自分はなにがしたいのか?という、自尊心や自己認識を大切にしています。

働き方改革ででてきた「パラレル・キャリア」と少し違うところは、本業という概念を手放している部分でしょう。

 

 

プロティアン・キャリア論

変化

プロティアン・キャリア論の論理的革新性を

「一つの組織にとらわれず、組織内のキャリアに拘泥することなく、自分で主体的にキャリアを形成する、自律的キャリアの重要性に焦点を当てている」

と田中氏は言います。

組織の経営や管理の中枢にいる人にとっては、物騒な物言いに聞こえるかもしれませんね。

ですが、今やこれらが現実になろうとしています。

むしろ、気がついている人は、始めているのです。

はっきり言ってしまえば、医療業界は閉鎖的です。

技術ばかりが新しくなって、人の成長がしているのか疑問符がつきます。

ですが、仕方のない事かもしれません。

医療業界で同じ組織に残り続けていると、他の組織に飛び込む勇気が無くなってきますから。

田中氏の言うように「鵜飼いの鵜」になっているのかもしれませんね。

別な人の言葉で言えば「蓋をされたバケツの中で過ごしたバッタはバケツの高さ以上に飛べない」でしょうか。

すべて、組織に自分の人生を丸投げしているから起きる現実です。

 

 

キャリアを再定義する。

キャリアを創造

誰のキャリアでもない。キャリアは自分自身のものです。

プロティアン・キャリア三つのポイントを紹介します。

  1. キャリアは個人が創造するもので、組織が管理するものではない。
  2. キャリアに社会的な成功や失敗はない。仕事の報酬は目標が達成された時に得る「心理的成功」の獲得である。
  3. 仕事には遊びの要素が存在する。生活との統合が可能である。

おやおや?

 

なんだか、どこかの協会が似たような事を言ってますね。

「夢の探求・学問の探究」……リハビリ専門職として仕事を通して成長できて、それを喜びと感じられる。

そんなリハビリ専門職に溢れる世の中にしていきたい。

僕らIAIRはそんな事を思っています。

 

 

まとめ

今回は、巷に溢れる「○○キャリア」を色々取り上げてみました。

なかでも「プロティアン・キャリア」は、僕自身も最近の大ヒットです。

変化する世の中で生きる以上、自分で変化に対応し、キャリアを選択する事がカギになるのでしょう。

 

 

さてさて……次回は第50回ですね。
みんな、どんなキャリアを選択するのか……次回につづきます!

 

 

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参考文献

  1. 大町かおり他,「リハビリテーション職種のキャリア・デザイン」2017
  2. 田中研之輔,「プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術」 2019
  3. リンダグラットン他,「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」2016

 


Saito Makoto

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精神科作業療法に従事する。そのなか、臨床実習指導と院内改善指導に携わり、統合的な視点で医療の質向上をマネジメントする取組みを10年にわたり行ってきた。 IAIRに参加することで、病ではなく人をみる視点を手に入れ、同時に組織も人と同じく、病を抱えていることに気づく。共に育む「共育」をテーマに、療法士一人一人が組織に関わるための多角的な視点を持てるよう、人財育成とマネジメントに関する発信を行っている。
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