最適な質問

返事をくれない患者さんへの最適な質問は?【5年目を過ぎた療法士の君へ】(35)

新人「自己実現って何なんでしょうね……」
後輩「えぇ?どうした??」
新人「患者さんにこの先何をしたいのか聞いても、ハッキリした返事がもらえなくて」
後輩「それで自己実現?考えすぎじゃない?」
先輩「それは乱暴でしょ!」
後輩「先輩はそう言うけどさ~飛躍しすぎな気がするし」
先輩「いやいや、障害受容過程だってあるじゃない」
新人「あぁっ、スミマセン、間が抜けてますよね……」

 

今回の新人さんの悩み、新人時代だけではなく、どんなに経験を重ねても、直面しますね。

「クライエントさんにこの先何をしたいのか聞いても、ハッキリした返事がもらえない」

10人のクライエントさんがいれば10通り、100人いれば100通りの理由があります。

 

IAIRの提案しているC-Touch(相手にとって心地よい触れ方)のように、主体はあくまでクライエントさん自身です。

「全ては患者が知っている」とは誰の言葉か忘れましたが、知っている人から知っていることを引き出したいものです。

 

今回は、どんな質問をしたらよかったのか、各人の視点からお話します。

 

7年目:後輩視点「理由の明確化がカギ」

可視化

「考えすぎ」と言った後輩君は、個人の性格もあり、社交的に、ややズケズケと踏み込んでいくタイプ。

そのため、感覚で行なっており、再現性が低いやり方かもしれません。

ですが、質問内容やその時の態度は参考になるでしょう。

なぜなら、彼は「理由」を探り出すことがカギだと直感的に知っているからです。

    • 質問1「退院したら何をしたいですか?」
    • 質問2「おぉ!そうなんですね!何だってまたそうしたいと思ったんですか?」
    • 質問3「その理由って、どのくらい大切なものなんですか?」

7年の経験から、彼は「理由を持っている人の方がリハビリがうまくいっている」と感じているからです。

人は表面的な理由の裏に感情的な欲求を隠していると言います。

それが見つけられるといいですね。

 

13年目:先輩視点「その人の状態に合わせて提案したい」

提案

マズローの五段階欲求が好きな先輩さん。

生理的な欲求(ニーズ)が満たされていくと、社会的な面や自己実現に向けての欲求(ウォンツ)に変わっていくもの。

下位の欲求が満たされないとその先を考えられないとも言い換えられます。

先輩さんは、その人の障害受容過程のどこにいて、そのプロセスに合った対応をしたいと考えています。

    • 質問4:「今、一番困難だと感じていることは何ですか?」
    • 質問5:「それが他のどんな困難を作り出していますか?」
    • 質問6:「その時、どんな気持ちになりますか?」

クライエントさんの持つ困難な状況は次に取る行動のあしがかりになると信じています。

障害受容過程を考慮せず暴走した経験のある彼女も、その人が今本当のところ何を望んでいるのかを知ろうとしているんですね。

 

1年目:新人視点「自己実現にカギがある?」

自己実現

新卒1年目の彼女は、小学校から始まる教育課程から皆と異なり、個性や自己実現が重視されていました。

ですが、受けてきた教育の違いを頭でわかっていても、直面した問題から体感し始めているとも言えます。

世の中の多くの人は「目標」や「自己実現したいこと」が明確になっていない事に気がつきます。

    • 質問7:「あなたがこれからの人生をおくるうえで大切なことは何ですか?」
    • 質問8:「その大切な事を邪魔している事は何だと思いますか?」
    • 質問9:「その邪魔なものがなくなったら、まず何をしたいですか?」

実際、彼女らも個性や自己実現と言われてきても、社会的な影響、宗教的、地域的な影響を受け、自己実現が阻まれながら生きてきました。

患者さん、クライエントさんに対する問いというよりも、自身に対する問いだったのかもしれません。

 

20年目:科長視点「時間軸を考える」

時間軸

聞き耳を立てていたけど、今回は発言しなかった科長。

彼は密かに考えていました。「時間軸」を。

一般的には「過去-現在-未来」という連続した時間軸のなかを生きていると思いがち。

リハビリを組み立てるにも、非可逆的時間経過の軸を考えますね。

ですが、今回はその人のあり方や人生の目的に関わる部分。

違った視点で考えているようです。

    • 質問10:今、一切の制限が無いとしたら、何をしたいですか?(未来)
    • 質問11:そのしたい事をサポートできる過去の体験はありますか?(過去)
    • 質問12:今、何をしますか?(現在)

新人さん、後輩君、先輩さんそれぞれの考えを内包しつつ、またそこにこだわりすぎない。

そんな立ち位置の質問にも見えますね。

管理職のスタッフ指導の視点が強い気もしますが。

 

まとめ

今回は返事をなかなかいただけない方にどんな質問をするのか、をそれぞれの視点でお話をしました。

それぞれの視点があるように、更にクライエントの方の数だけ質問の数が増えていきます。

タイトルに「最適な質問」とありますが、テンプレートやスクリプト、パスのようなものの紹介ではありません。

その方を前にし、その方のお話をしっかり伺う事、とにかく聴く事がカギです。

相手にどれだけ関心を持てるかどうかだけの話。

拍子抜けと思わず、改めてあなた自身の質問が最適かどうかを確認しましょう!

齋藤 信
IAIR理事 齋藤 信

追伸

今回のようにクライエントさんの背景に迫り、真の目的を発見する方法があります。

多因子(マルチファクター)を分析し、リハビリに活かしてみませんか?

https://iairjapan.jp/iair-hands-off


Saito Makoto

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精神科作業療法に従事する。そのなか、臨床実習指導と院内改善指導に携わり、統合的な視点で医療の質向上をマネジメントする取組みを10年にわたり行ってきた。 IAIRに参加することで、病ではなく人をみる視点を手に入れ、同時に組織も人と同じく、病を抱えていることに気づく。共に育む「共育」をテーマに、療法士一人一人が組織に関わるための多角的な視点を持てるよう、人財育成とマネジメントに関する発信を行っている。
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