肩関節周囲炎に対する徒手的介入ポイント

From.IAIR 福留良尚

 

肩関節周囲炎に代表される「肩の過用(overuse)」に対して、一般的な対処法は、貼付剤など外用薬の使用、NSAIDsの服用による炎症症状を抑えること、痛みが強く、日常生活にかなり支障をきたす場合には、ステロイド注射なども行われる。

肩関節周囲炎の発症機序には諸説あり、

  • 第2肩関節における滑動障害
  • 結節間溝における上腕二頭筋長頭腱の滑動障害
  • 腱板疎部の障害など
(安達長夫:肩関節周囲炎,プラクティカルマニュアル肩疾患保存療法信原克哉(編),金原出版,東京,1997,pp .61−70より)

 

つまり、発症機転として炎症症状を伴うのは以下の組織と考えられる。

  • 棘上筋
  • 肩峰下滑液包
  • 上腕二頭筋長頭腱
  • 肩甲下筋
  • 烏口上腕靭帯などの軟部組織

これらの症状鑑別は、肩関節周囲炎を持つ患者利用者のリハビリテーションを行う上で重要であることは間違いないが、ここからもう一歩踏み込んで検証を行う必要があると筆者は常々考えている。それは…

 

「何故これらの組織は炎症しなければならなかったのか?」

 

例えば、四十肩、五十肩と別名で言われるように、好発年齢は40代から50代である。しかし、この年齢層の全ての人が肩関節周囲炎を発症するわけではなく、同じような仕事をしている人であっても、肩が痛くなる人もいれば腰が痛くなる人もいる。この違いが何なのかを我々療法士は鑑別し、それぞれに即したアプローチを提供しなければならない。

ここには国際統合リハビリテーション協会(IAIR)が提唱する、人の持つ多様な因子(multifactor)を見極めていく必要があるが、今回は人体の機能的な側面から肩へのアプローチを検証していく。

 

肩関節の運動

肩関節周囲炎では、ほとんどの方向への運動が障害される。

  • 屈曲(三角筋前部線維)
  • 外転(三角筋中部線維、棘上筋)
  • 内旋(肩甲下筋、大胸筋、大円筋)

腱板周囲筋に代表されるように、肩甲骨と上肢を繋いでいる筋肉は、その安定性にも働いている。例えば、棘上筋は肩関節外転の主動作筋だが、肩関節を挙上した状態で肘の屈伸運動をする際には、等尺性収縮によって肩の安定性に貢献する。

 

この視点を持てるかが非常に重要である。

 

肩の内旋に働く肩甲下筋や大円筋なども、上肢末梢を操作として使う場合に肩との間の安定性に貢献してくれるからこそ、巧緻性の高い動きが可能となる。食事での箸の操作、フライパンを使う際の手関節の動き、ハンマーを打つ際の肘の動きなどなど、多くの活動の中で肩周囲筋は安定性にも働いているのである。

これは、肩甲骨と体幹(脊柱)を繋いでいる筋肉にも同じようなことが言える。先ほどの肩関節を挙上した状態で肘の屈伸運動をする際に、肩甲骨はやや外転・上方回旋位で安定していなくてはならない。そこには、僧帽筋の中下部繊維や、菱形筋、前鋸筋といった筋肉が、等尺性収縮によって肩甲骨を常に安定させている。

 

この考えを元にもう一歩踏み込んだ検証をしていく。

 

手関節の機能制限

先程のフライパンを使う際の手関節の動きをイメージしてほしい。

底背屈・撓尺屈の動きが組み合わされた複雑な動きをすることで、フライパンを操作しているのが分かる。仮にこの手関節の動きが制限されていると想像してみて欲しい。その状態でフライパンを振ろうとすると、肩関節や体全体が動いてしまうのが分かるだろうか。

肩周辺の筋肉や体幹に近い筋肉は、安定性にも貢献すると前述したが、手首が使えない状態で何かを操作しようとすると、代償的に運動性に使われてしまうことが分かる。肩関節周囲炎の患者の多くは、この代償パターンが機転となって「肩への過剰な負荷(overuse)」となっているケースが非常に多い。

 

つまり、手関節や肘関節の高い運動性が阻害されてしまったとき、肩関節は本来の働きが出来なくなり、結果肩の過用に繋がるケースがあるということである。

 

リハビリテーションプログラム

このことから、肩関節周囲炎の根本的な問題は、肩に過剰な負荷をもたらしてしまう他の部位の運動性の低下、細かい視点で見るならば、組織滑走性の低下ということになる。

症状がある部位に対してアプローチをすることも重要であるが、何故そこに症状を抱えることになったのかを検証していくと、アプローチの視点が変わってくる。

今回のケース、フライパンを振る作業をしている人であれば、手首周辺の組織滑走性の問題はないか手根骨間や橈尺関節の包内運動、手根管の滑走性、周囲の筋緊張などもチェックする必要が出てくる。一般的に言えば、手関節の炎症症状、腱鞘炎(正式名称:ドケルバン病)を発症するリスクの方が高いが、今回はケーススタディとして引用した。

 

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それでは最後まで読んでいただけてありがとうございます。

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一般社団法人 国際統合リハビリテーション協会

理事 九州地区 理学療法士

福留 良尚

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福留 良尚

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国際統合リハビリテーション協会常任理事 IAIR九州専任講師 理学療法士 コンディショニングサロン仁愛クリニカルルーム代表 3児の父 
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