気になったニュース、発表、論文についてピックアップしてお届けします。
本日は2つ。
1.変形性膝関節症の痛みに対する薬物療法の長期効果
2.アキレス腱断裂に対する、手術/非手術での再断裂率リスクの比較
です。
1.変形性膝関節症の痛みに対する薬物療法の長期効果
変形性膝関節症に対しての薬物療法はよく行われます。
ガイドライン上では、あまり推奨度の高くないものもありますが・・・
関連記事:【変形性膝関節症】膝の痛みに対してガイドラインで推奨される治療法
リハビリの臨床で「膝の痛み」を訴える方は多くいらっしゃいますが、長期的に内服薬を服用している方も多く担当したことがあります。
内服薬の長期的な効果はあるのでしょうか??
Association of Pharmacological Treatments With Long-term Pain Control in Patients With Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis.
(JAMA. 2018 12 25)
の報告で、長期的な疼痛緩和についてプラセボと比較した結果について報告されていました。
投薬カテゴリは以下のとおり
鎮痛薬
抗酸化薬
骨活性薬(ビスホスホネート、ラネル酸ストロンチウムなど)
非ステロイド系抗炎症薬[NSAID]
関節内注射薬(ヒアルロン酸やコルチコステロイドなど)
変形性関節症治療用遅効性薬(グルコサミンやコンドロイチン硫酸など)
推定疾患修飾薬(cindunistatとsprifermin)
NSAIDのセレコキシブと変形性関節症治療用遅効性薬のグルコサミンに疼痛減少効果との関連が確認されましたが、プラセボとの比較では全ての推定値に不確実性が確認されました。
関節裂隙の狭小化に対しての効果については、グルコサミンやコンドロイチン硫酸、ラネル酸ストロンチウムに効果が認められたようです。
変形性膝関節症の薬物療法における効果については不確実な部分が報告されています。
著者は「変形性膝関節症に対する薬物療法の有効性に関する不確実性を解決するには、より大きなRCTが必要」と述べています。
長期的な効果としては不確実だとしても、短期的には効果を認められているものもあります。
変形性膝関節症の治療には、物理療法や運動療法が推奨されますが、クリニックなどでは運動指導できる専門家が常駐できていない場合が見受けられます。
効果が不確実な薬物療法を続け、最終的にTKA・・・というコースは医療経済的にみてどうなのか??と思ったりします。
そう考えると、リハビリ職者の人材不足が起こっているのかもしれませんね。
2.アキレス腱断裂に対する、手術/非手術での再断裂率リスクの比較
アキレス腱断裂に対して、手術or非手術療法での比較を調査した報告です。
アキレス腱断裂の手術療法と非手術療法における再断裂、合併症、機能的アウトカムを比較する目的で、文献をシステマティックレビューして、メタ解析を行っています。
RCTによる調査が944件、観察的研究では14918件が解析の対象となっていました。
再断裂のリスクでみると、手術療法では2.3%、非手術療法では3.9%と手術療法の方が有意に発生率が低かったと報告されています。
ただ、その差は大きいものではないようです。
合併症の発症率で見ると、手術療法は非手術療法よりも有意に高い数値を示しました。
主な原因は感染症です。
荷重時期に関しては、早期荷重も後期荷重も手術療法に関しては再断裂率は減少傾向でどちらも良好な結果となっていました。
早期関節可動域訓練を伴う加速的リハビリテーション時の再断裂率に、手術群と非手術群に差は認められませんでした。
アキレス腱断裂に対する治療方針の決定は、その患者固有の事情を配慮しながら共同して意思決定を行う必要があると著者は考えています。
データ上は、手術療法も非手術療法もさほど成績に違いはないようです。
こういう風に、治療成績やリスクに関してのデータがまとめられてくると意思決定の手助けにはなってきますが、「大差ない」場合、どちらを選ぶのか迷いますよね。。。
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