エモリー大学のF.ドゥ・ヴァール教授の「One for All(SCIENTIFIC AMERICAN September 2014)」によると、途方も無い偉業を達成出来る集団を組織するのは人間だけ。原始時代の人間は群れで襲ってくる大型ネコ科などに怯えながら生きていたはず。なのに、弱肉強食の世界を生き抜き、自然を征服した。そこには動物以上の助け合いの力、協同性が大きな力を生み出したという。
いきなり何の話?
そう思った方ばかりかと思います。
というのも、何だってまた、療法士の業界はパワハラに満ちているのだろう、と思ったからです。
もし、僕の感覚がすでに2000年一桁代の療法士業界で止まってて、今は違うんだよ~!と言うなら、コメント欄などで教えてください。
ですが、これから2020年代を生きていく療法士に必要な事だ!と思っていただける内容になっていたら、嬉しいです。
今回のポイント
- 哺乳動物は「よそ者と協力し合う能力」を元々持っている。
- ヒトのみが持つ「評判」をもとにした協力体制が大きな目的の達成につながった。
- 自分を知ることで、2020年代に生きる療法士の在り方がわかる。
よそ者と協力できるのはヒトだけなのか?
さてさて、先程のF.ドゥ・ヴァール教授によると、協力行動を取るのは哺乳動物に潜在的な能力として持っているものだと言います。
しかも、「よそ者と協力し合う能力」をです。
ただ、野生では実際にそうなる状況が滅多に生じないから、潜在的、と言っているようですね。
ですが、オマキザルやボノボで行われた実験では、よそ者のサルに親切にして食物を分けあう能力があることが示されたそうです。
これまでは、ヒトと霊長類の違いとして、局外者や見知らぬ他人と協力するのは人だけだ、と言われてきました。
確かに、局外者に自分達のナワバリの通過を許し、彼らと食事を分け合い、贈り物を交換し、共通する敵に立ち向かうために団結する人間社会は、他のサルたちのような霊長類のパターンとは違っていますものね。
療法士はよそ者と協力できるのか?
ここだけを取り上げれば、療法士の小さな集団は生存する為に他のグループと競合する動物的な生存方法を選択しているの?と思ってしまますね
思い出してください。
哺乳動物は「よそ者と協力し合う能力」を持っているんです。
一体全体何が原因で、リハ科の院内孤立や、療法士の孤立が起きてしまうのでしょうね。
協力の先の能力がある?
「よそ者と協力し合う能力」のその先の能力をヒトは持っているそうです。
動物の協力は、個体が自分の能力や巡ってきた出番に応じた役割を果たすことで自然発生するそうです。どうやら、リーダーが今のところ観察されていないからというのが理由のようです。
ですがヒトは、協同性が高度に組織化され、階層的な協力をして大規模なプロジェクトを成し遂げる能力を持っているんですね。
加えて、動物では今のところ観察されていない方法で協力を強めているとも言います。
それは「評判」のチカラです。
評判のチカラとは?
評判のチカラとは、協同作業を繰り返すうちに、「信頼できる友」「いい加減なヤツ」と言った評判が築かれ、協力が足りない場合には、仲間から罰せられるってやつです。
こういった罰というもので、ズルを防ぐチカラとしても使われているワケですね。
変化に適応できない組織長が現状維持を望むなら、長い目で見ればその集団の協力は促進されるのでしょうね。
確かに、過去を見ていけば、そのように排除していくことで組織の安定化、協力体制、大きな目的に協力して向かう力になったのでしょう。
さて、皮肉を言ってても仕方ないですね。
2020年代を生きる療法士にとって、単なる現状維持のままでいいのでしょうか?
療法士における助け合いとは?
先の件……利他行為として見れば、療法士のあるべき姿を現していますね。
ただ、そこには個人から個人に向けての協力が主になっていないでしょうか?
集団から個人に向けて、その個人の達成したい人生という壮大なプロジェクトを達成させる為に協力体制を持っているでしょうか?
先の動物が行う、個々の能力を巡ってきた出番に応じて発揮するだけになっていないでしょうか?
かと言って、協同作業を繰り返すうちに生まれた「評判」にのみ偏重していないでしょうか?
こうやって書き連ねていくと、全てに疑問符がついて、方向性すら見えてこなくなりますね。
ですが、一つ帰結できるkey wordを見つけました。
それは「自分を知ること」です。
自分を知ることとは?
IAIRではリフレクション(今を現状と、そうなった原因を顧みること)と表現しています。
まさに今の「自分を知ること」ができれば、これまでヒトが生存してきたその先に進めるのではないでしょうか?
ヒトは他の哺乳動物、他の霊長類と違って、「評判」という形の無いものに敏感です。
そこに対して、動物的で物理的、可視化された影響を他人に与えずとも、その集団が求める目的に向かって進む力を得ることができるはずです。
「自分を知ること」で、個人の能力や役割を知ることができます。「評判」が自分にどのように向いているのかを知ることができます。
そこで初めて私と集団、集団のなかの私を確認でき、合目的なパフォーマンスが発揮できるでしょう。
もちろん、そのなかに、自己犠牲で自身を失う事は含まれません。
Win Winと言われるように、集団の目的が達成される過程で自身の目的も達成されるシゴトの仕方が、2020年代に生きる療法士の在り方ではないでしょうか。
ざっくりまとめると
ざっくりまとめると、
- 哺乳動物は「よそ者と協力し合う能力」を元々持っている。
- ヒトのみが持つ「評判」をもとにした協力体制が大きな目的の達成につながった。
- 自分を知ることで、2020年代に生きる療法士の在り方がわかる。
これら3つになります。
多様化する社会の中、あらゆる種類の協力の仕方が生まれ、個人であっても複雑なネットワークで結びつく時代です。
気づいているヒトは既に実践していると言います。
「これまで」を否定するのではありません。
「これまで」をふまえて「これから」を物語れるか。
「これまで」と「これから」を橋渡しできる療法士を目指していきたいですね。
IAIR理事 齋藤 信
hands offアプローチを活かすには?
毎回hands offアプローチ系の話ばかりですね。
とはいえ相手との信頼関係がなければ、hands offアプローチをしていくのも大変。
まずは相手に信頼される療法士を目指してみませんか?
その一つの方法が、IAIRコンセプトに基づくTGAです。
TGAの紹介はこちら>>>https://iairjapan.jp/about-tga
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