皆さんこんにちは。
IAIR関東の藤田智史です。
下腿三頭筋は歩行時に割と多くのパワーを使っており、高齢者における足関節底屈筋の出力低下が加齢による歩行速度低下の主要な原因と考えられています。
では、足関節底屈筋力が向上すれば歩行速度は向上するのでしょうか?
【腓腹筋の起始・停止】
起始:
内側頭:大腿骨内側上顆(加えて大内転筋結節に付着する。また直接あるいは筋膜を介し、大内転筋と内側側副靭帯まで筋繊維を伸ばしている。
(半膜様筋腱を覆う)
外側頭:大腿骨外側上顆(ヒラメ筋に線維の一部を出している。非常に多くの場合、「ファベラ」と呼ばれる種子骨を包み込む)
停止:
アキレス腱として踵骨隆起に付着。
神経支配:
脛骨神経(L4〜S2)
【ヒラメ筋の起始・停止】


起始:
脛骨後面のヒラメ筋線、脛骨の内側縁に付着。腓骨の腓骨筋頭、ヒラメ筋腱弓に付着。
停止:
アキレス腱として踵骨隆起に付着。
ヒラメ筋腱弓の前方には、外側から内側に向かって、次に挙げるものがある。
- 脛骨神経
- 後脛骨静脈
- 後脛骨動脈
- 膝窩動脈の分枝。
神経支配:
脛骨神経(L4〜S2)
<膝や下腿への影響>
細かい付着点まで見ると興味深いのは、腓腹筋の内側頭は大腿骨の内転筋結節に付着していたり、
筋膜を介して大内転筋と内側側副靭帯まで筋繊維を伸ばしている点でしょうか。
腓腹筋内側頭と内側ハムストリングスの交差点は癒着のしやすいポイントであり
腓腹筋の問題が膝へも影響を及ぼす可能性が出てきますね。
介入の一例はこちらから
また、ヒラメ筋腱弓の前方には、脛骨神経、後脛骨静脈、後脛骨動脈、膝窩動脈の分枝。
があり、下腿三頭筋の攣縮や拘縮などはより抹消の循環に悪影響を与えます。
<足関節底屈筋力が歩行速度を向上させるのか否か?>
足関節底屈の再大パワー値は高齢者では若年者と比較すると20〜40%低下するといわれており、
実際に解析装置を用いて歩行のけり出し器における足関節底屈パワーを算出すると高齢者では17%低下すると報告されています。2)より
多くの横断研究から、高齢者における足関節底屈筋の出力低下が加齢による歩行速度低下の主要な原因と考えていられるようです。2)より
この、足関節底屈の出力が向上することで本当に歩行速度が向上するかという点に対して行われた研究があるようです。3)
大まかにいうと:
歩行の蹴り出し期に、外部から供給された力によって足関節底屈パワーを増幅させる装置を
装着して歩行速度の変化を調べた研究です。
3)より
結果は、
「若年者は装具により底屈パワーを増加させると歩行速度は向上したが
高齢者は歩行速度は変化しなかった」というものです。3)
すなわち、若年者では底屈出力を向上した状態に得られる加速を利用できるだけの身体機能や予備能力があるためと考えられ、
高齢者でただ筋力が落ちているからと言って、その部分を強化するだけは目的の動作に結びつかない可能性があり、
それに対応するだけの身体機能や姿勢制御なども考慮しながら行う必要があるということではないかと思われます。
バランス練習や応用動作などの練習を行うのもよいかとは思いますが、
機能障害を排除することによって動きやすい身体環境を整えることも1つではないかと思います。
「しっかりとしっかりとつま先で地面を蹴って歩きましょう!」
というような声掛けは、機能の高い方には適しているかもしれませんが
予備能の落ちている方に対してはあまり適していないということになりますね。
(要介護や下手をすれば要支援の方なども・・・)
研究には研究限界というものもありますので必ずこうだ!というものは
なかなかありませんが、得られた情報をどのように組み立てていくかは
それを受け取った側の解釈にもよってきますね。
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参考、引用文献・画像
1)Visible Body Muscle Premium
2)小田 伸午、市橋 則明扁)ヒトの動き百話—スポーツの視点からリハビリテーションの視点まで 市村出版 (2011/03)
3)James A.Norrisら著)Effect of augmented plantarflexion power on preferred walking speed and economy in young and older adults Gait & Posture Volume 25, Issue 4,
April 2007, Pages 620-627
4)ジャン=ピエール・バラル / アラン・クロワビエ 共著:
新マニピュレーション・アプローチ<下肢> 科学新聞社 2014年
お読みいただきありがとうございました!
IAIR 関東支部
認定インストラクター
藤田 智史
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