以前、ある場所でお会いした慢性腰痛を訴える方は、
6年前より腰痛ベルトが手放せない状況とのことでした。
椅子に座っていても苦痛を伴う腰痛があり、
特に午後になると、絶対骨盤ベルトが必要な状態でした。
歩行時も、5分ほどすると痛みがでるので、
やはり骨盤ベルトが必須だったようです。
そんな、情報をお聞きしたうえで、
身心の状況を確認した後に、
ILPT腰痛治療セミナーでお伝えしている
腰痛の捉え方、考え方、治し方などを
帰りの電車の中で15分ほどお伝えしました。
それから、2週間後にお会いした時には、
「あれから、不思議とベルトなくても大丈夫になってきました。
今では、歩くのも平気、座っているのも大丈夫です!」
とかなり状態が改善し、
ご本人も不思議そうでした。
さて、今回は、
『腰痛ベルト(コルセット)依存による4大弊害とは?』
というタイトルで、お届けしていきます。
***
あなたは、腰痛ベルト(コルセットやサポーターなど)を
長期間着用している方に関わっていますか?
あるいは、過去に関わっていましたか?
・
・
・
その方は、経過はいかがでしたか?
順調な回復をされていましたか?
それとも、
痛みが慢性化、難治化して
良好な経過とは言えない状況でしたか?
・
・
◇なぜ、腰痛ベルトをつけ始めるのか?
そもそも、
なぜ、患者さん、利用者さんは、
腰痛ベルトをつけ始めたのでしょうか?
同じように腰痛を訴えていても、
腰痛ベルトを着けている人と
着けていない人の違いは
どんなところにあるのでしょうか?
・
・
私の経験では、
急性期の対応時に腰痛ベルトが処方され
それが手放せなくなっている方が多い印象です。
あなたの経験ではいかがですか?
・
・
ある医師が勤務していた整形外科では、
急性腰痛の対応がマニュアル化されており、
その中の一つとして、腰痛ベルトの処方が
あったようです。
その医師は、そこのクリニックで働く意欲がなくなり、
退職され、他のクリニックに転勤されました。
◇いつまで腰痛ベルトを使用するのか?
生活に支障があるほどの腰痛があり
痛みも強い急性期には、腰痛ベルトを
着けることは、やむをえないと思います。
問題は、どのようにやめていくかを
はっきりと指導されていないことだと思います。
急性期には、使用し、
生活にも支障がなくなって来たら
少しずつ外す【努力】をしていくことが
経験上は有効だと感じています。
外す【努力】です。
そのプロセスで得られるものは、
大きいでしょう。
努力によって、
不安感よりは、少しずつ変化があれば、
安心感や希望がもててくるでしょう。
◇腰痛診療ガイドラインでは?
そんな私の経験が、ガイドラインに載っているのか
確かめたくなったで
「腰痛診療ガイドライン 2012」南江堂
を確認してみました。
そのガイドラインには、
「腰椎コルセットの腰痛に対するRCT(患者1361例)の系統的レビューによると、
腰椎コルセットの疼痛改善に対する効果は認められず、職場復帰に対する効果は相反する報告がある。
一方、機能改善には有効であるとする報告が複数存在し、患者の機能改善に有効である可能性が高い。
慢性腰痛に対する腰椎コルセットは無治療と比較して疼痛および機能改善に効果が認められていない」
とされています。
いかがですか?
このガイドラインの内容、
どのように役立ちますか?
特に、疼痛改善については、効果がないようですね。
そして、機能改善についても、「可能性が高い」となっています。
このガイドラインを参考に、
対象の方の、状態、経過、価値観などを
しっかり確認したうえで、ベルト(コルセット)
の必要性を判断していきたいですね。
◇腰痛ベルト依存による4大弊害
では、次に、
不必要に長期に渡り腰痛ベルトを使用する
ことによる弊害をみていきましょう。
これを、知っていると、
対象の方の状態や経過などを評価するときに
役立つでしょう!
腰痛ベルト依存による弊害は、
4つのことがあげられています。
(出展:小林詔司 著「やまい一口メモ」太陽出版)
まずは、キーワードから。
1.筋力
2.不安
3.皮膚
4.動きの制限
の4つ。
この4つは、いつでも言えるようにしておくと臨床で便利ですよ!
では、少し詳細にみていきましょう。
1.筋力低下:
「骨盤周囲の筋力低下が低下する」
以前の研究では、骨盤周囲の筋力には影響しないという報告もあったようですが、
最近の研究では、腰椎、骨盤の深部筋の筋力低下が低下するという報告があります。
Rostami M, Noormohammadpour P, et.al.
The effect of lumbar support on the ultrasound measurements of trunk muscles
: a single-blinded randomized controlled trial.
PM R. 2014 Apr;6(4):302-8
2.不安:
「依存心が強くなり、それなしでは生きていけないという心理的な
不安感が常に頭から離れなくなることでしょう」
不安が長期化することは、慢性腰痛の治療にとって最もよくないことです。
下降性疼痛抑制系が機能しなくなり、痛みに過敏な状態になってしまうからです。
不安への対処のためにも、腰痛ベルトなしで生活してる自分をイメージし、
そこに向かって少しずつ【努力】していくことが肝要でしょう。
3.皮膚:
「腰臀部の皮膚の抵抗力が低下し湿疹などができやすくなる」
腰痛ベルトをつけている方の皮膚を観察してますか?
この点は、私も怠っていた時期があります。
4.動きの制限:
「下腹部を固定しているのであれば、当然内臓の活動も制限されるし体全体の動作も制限される」
固定期間が長くなると、身体の動きが制限されることは、臨床上よく観察されることでしょう。
固定されているときに、より詳細にみていくと、
筋を包む筋膜と筋膜の間、筋膜と皮膚の間をつないでいる結合組織の
滑走性が低下し、動きが制限されるといわれています。
すでに、分かってはいるかと思いますが、
不必要に長期の固定は避けていきたいですね。
内臓の動きも制限されてきます。
◇実際には、いかがでしょうか?
以上、4つの観点を紹介しましたが、
実際、あなたが関わっている方。
関わったことのある方はいかがでしょうか?
このような弊害はありましたか?
もし、
何も弊害は無く
障害になっていることがなければ、
着用を続けてもいいかとは思いますが、
私の経験では、どれかの弊害があることが
多くありました。
◇自己評価の大切さ
答えは、相手が持っています。
・ベルトを装着し始めたきっかけは?
・望んでいる状態(目標)は?
(例:不安を減らしたい。
痛みを減らしたい
体の動きを軽くしたい
便秘を解消したい
・その望みに対して、腰痛ベルトをつけることは
役立っているか?(自己評価)
を、丁寧に確認していと
答えが見えてくるでしょう。
◇装着を止める方法
先にも述べましたが、
腰痛が発症した数日間、生活への支障を減らすために、
ベルトを装着するのは、仕方がないとされています。
症状が安定し、日常生活がさほど支障なく可能と
なってきたら、徐々にできることから、
「外す」という目標に向かって
「努力」していく【プロセス】が
「不安」への対処としても
有効でしょう!
もし、医師からの指示で装着している場合は、
医師にコルセットの必要性を確認しましょう。
その他、具体的な方法については
ILPT腰痛治療セミナーでも紹介しています。
すべての人々の“ハッピー”のために。
****
複合的腰痛アプローチ
IAIR Lumber back Pain Technology(ILPT)主宰
赤羽秀徳
****
追伸
くれぐれも、腰痛ベルトを装着していることを
批判しないようにお気をつけて下さい。
信頼関係の構築を心がけ、焦らずに支援していきたいですね。
不安に寄り添いながら。。。
*ILPTセミナーやILPTメインコースの予習、復習となるとともに、
【温かなコミュニケーション】のコツなどもお届けしています。
もし、配信を希望される場合は、
こちらをクリックすると簡単に登録できます。
>>>https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=HSrpbEvIRnM
【IAIRセミナー紹介ページ】