リハビリテーションの専門家は何らかの機能的な制限、活動制限を対象にプログラムを立案して実行します。
対象者が高齢になっていたり、症状の背景が複雑になっていたりしている昨今では、必ずしも「改善」、「治癒」がゴールにならない場合もあります。
対象となる人の社会復帰がリハビリテーションのゴールではありますが、それを阻む「身体機能、心理状況」の理解は、中心になる担当者には求められることでしょう。
リハビリテーションは、なんらかの疾病を経験した状態(病気のあと、外傷のあと)が、スタートになるケースが多いですね。
つまり体内の組織の損傷から始まるわけです。
その修復課程に携わるのが、リハビリテーションの役割の一部です。
目次
組織の損傷、炎症の始まり
組織が損傷して修復に向かうまで、炎症症状というものを経由します。
炎症症状は大きく分けて
- 炎症期
- 増殖期
- 成熟期
となっています。
炎症の主要な症状としては、広く知られている主要徴候というものがあります。
炎症の徴候
- 熱
- 発赤
- 腫脹
- 疼痛
- 機能制限(機能喪失)
こういった症状が見られているということが、炎症期の特徴で、これらの症状は炎症のサイン」という判断となります。
血液データ的には「CRP」の値が上がってくるので、血液検査で判断する場合もあります。
関連記事:リハビリに役立つ血液検査データの見方2
炎症に対する誤解
期間としては様々な説がありますが、炎症の初期にあたる「炎症期」というものは短くて4日未満、長くて6日間というふうにばらつきがあります。
体感的にも、臨床経験的にも、最初の3日間くらいがもっとも症状が強い時期であろうと考えます。
この「炎症」ですが、痛みや機能制限(動かせないなど)を伴いますし、熱などの苦痛を感じるために
「あってはならないもの」
として受け取られることがあります。
しかし、炎症というのは「修復に向かうための正常で必須な反応」なのです。
もしも、「炎症」が起きないと、組織の治癒は起こりえないだろう、と表現する人もいます。
関節リウマチのように、炎症が治癒せず慢性的に起こり続ける疾患もあるので、誤解もあるでしょうけど、炎症のメカニズムを知り、しかるべき経過をたどることが、リハビリテーションにも必要です。
炎症症状の原因
さきほどの5つの症状の原因となっていることを簡単に整理します。
・熱
局所あるいは全体の熱の上昇を生んでいるのは、「血流の増加」によります。
外傷やほかの原因によって、血管が損傷されると、血管は血液の流出を最小限に食い止めるために収縮が起こります。
その後、損傷組織から遊離した化学物質の影響により血管の拡張と毛細血管の透過性亢進が起こります。
その結果、血流が増加します。
・発赤
赤く見えるのは血管が拡張していることが原因です。
なので、先ほどの「熱」が上昇する理由と同じですね。
内出血と表現されるものは、血管から流出してしまった血液成分になります。
ここでいう発赤とは分けて考えます。
・腫脹
血管透過性が亢進した結果、血管からしみ出してくる血漿成分が現れます。
こうした体液と血漿タンパクの増加が局所で起きて、血管外腔と間質組織に溜まってしまうことを「浮腫の形成」と言われ、腫脹の原因となります。
損傷の初期に起こる血管の収縮が、毛細血管でみられると血管壁同士がくっつくことがあります。
そうして行き場を失った血漿成分が血管壁からにじみ出ていくことも、腫脹の要因として考えられます。
・疼痛
血管収縮のあとにおこる、血管拡張はヒスタミンやブラジキニンなどの化学物質によって誘導されます。
その中のブラジキニンなどは、痛覚受容器を興奮させる作用があります。
プロスタグランジンは痛覚受容器の感受性を高める働きにも関係します。
浮腫の形成などにより、局所の容積が大きくなれば、それらが神経を伸張して痛みの原因となることもあります。
このように、物理的な理由と、化学的な理由で、「痛み」というものを感じています。
・機能制限
痛みと浮腫があれば、物理的な運動を制限されるのは、想像できますよね。
なので、機能制限の解決には「物理的」「化学的」対応がポイントになってきます。
炎症の対応
炎症反応のほんの入り口にしか触れていませんが、その反応が起きているメカニズムを知ることで、対処法は選択しやすくなります。
- なぜ、その薬を飲むのか?
- その薬が処方された狙いとは?
- 動かした方がいいのか、動かさない方がいいのか?
- 「痛い」という訴えの背景とは?
炎症の時期によって望まれる「物理的、化学的」対応は異なります。
根拠をもとに、リハビリテーションが展開されていくと、信頼も強まると思っています。
続き→「【炎症を理解する】炎症初期に体で起きていることは治るための第1歩だった」
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根拠を元に行うというは、「データのないことは行わない」というものではないと考えています。
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