こんにちは。
国際統合リハビリテーション協会認定インストラクターの岡澤です。
僕は現在、訪問リハビリにほぼ専属で携わっています。
縁あって、臨床2年目から訪問リハビリに関わっているので、
16年目の現在まで、たくさんの利用者さん宅へうかがってきました。
今は新卒で、訪問リハビリの事業所に勤務するリハビリセラピストもでてきていますね。
リハビリ業界では、
地域で活躍できるセラピストに増えてほしいという希望があるようなので、
その影響かもしれません。
ただしこの訪問リハビリ。
週1~2回と限られた回数しか、直接的な関わりが持てないということから、
なかなか結果がでにくいという悩みを、
多くの訪問リハビリに携わるセラピストからうかがいます。
今回のコラムは、そんな悩みを解決するきっかけになるかもしれません。
あなたの関わっている利用者さんの中にこんな方はいませんか?
お嫁さんのことを「おかあさん」と呼ぶ人は。
自分の息子さんのお嫁さんですので、
本当は、利用者さん自身がお嫁さんから見ると、
「お義父さん、お義母さん」のはずです。
しかしそれが逆転してしまっているんです。
いつからそう呼ぶようになったのか、利用者さんに聞いても、
「わからない」という答えがほとんど。
こんな話を聞いたことがあります。
「家族内の呼び方は、一番年下のものを基準にする」
つまり、3世代(孫、両親、祖父母)が同居している場合、一番年下は孫になります。
孫から見たら、
家族の呼び方は、「お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさん」となります。
おじいさんからすると、おばあさんは妻になりますが、
呼び方は孫に合わせるため、自分の妻のことを「おばあさん」と呼ぶ。
ということです。
その習慣が残っているため、
お嫁さんのことを「おかあさん」と呼ぶのかなと思っていましたが、
たくさんの利用者さん宅を回らせてもらう中で、
あることに気づきました。
それは、お嫁さんのことを「おかあさん」と呼ぶ方は、
なにかしらの家事を手伝ってもらっている方が大半でした。
特に、食事の用意、洗濯を手伝ってもらっている方が多い印象を受けます。
そして、手伝ってもらっていることを申し訳なく思っていたり、
不本意に感じている方が多いのです。
この一見大したことのなさそうな呼び方も、
生活のマネジメントという観点から見ると、ヒントになります。
在宅ADLを変えるときの手順に大きく関わるのです。
例えば、
歩行が安定してきたため、食卓まで歩く生活スタイルを提案するとします。
リハビリセラピスト
「〇〇さん、大分歩けるようになりましたね。
食事はベッドじゃなくて、テーブルまで歩いて摂りませんか?」
と提案したとき、こんな言葉を聞いたことありませんか?
利用者さん
「うん、いいと思うけど…。おかあさんに迷惑かからへんかな…。」
家事の援助をしてくれるお嫁さんは、キーパーソンである場合が多いでしょう。
利用者さんが、普段身の回りのことを手伝ってくれているお嫁さんに気を使っている場合、
利用者さんとセラピストとの話だけで、
在宅ADLが変わるということはまずありません。
そうなんです。
在宅ADLの決定権は、本人でなく、
キーパーソンであるお嫁さん(おかあさん)が握っている可能性が大いにあります。
在宅ADLを変えるためには、
お嫁さんの「これだけ動けるようになったなら大丈夫ね。」の言葉を
リハビリの関わりの中で引きだす必要があります。
具体的には、
お嫁さんの目に留まるような場所で動作練習を行うとか、
「これくらい動けるようになったんですよ。」という趣旨の話を
セラピストからお嫁さんにするといった関わりが必要です。
在宅ADLを向上させようと思っていてもなかなか変わらない場合は、
ADLの決定権を握っているのが誰なのか、
考えてみるときっかけが見えてくるかもしれませんよ。
お読みいただきありがとうございました。
国際統合リハビリテーション協会認定インストラクター
認定理学療法士(地域理学療法分野)
岡澤 頼宏