◇ステロイドホルモン
炎症やアレルギー反応などの化学的イベントが体内で起きた時に、それに対応する反応を導くためにホルモンが情報伝達役として活躍します。
抗炎症作用と関係するホルモンとしては、「副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)」が代表格です。
副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)は、痛みなどの炎症を起因とした症状の時に薬物として処方さることがあるので聞いたことはあると思います。
「ステロイドを使う」とか「ステロイドを飲んでいる」と表現する方が、担当する患者さんにもいらっしゃいますね。
本来、副腎皮質ホルモンはコレステロールなどを原料にして、副腎で合成されます。
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その働きを強化しようとして、体外から薬物として投与しているわけです。
リウマチなどに代表される炎症症状が長期間続いているときは、副腎皮質ホルモンの合成に対して要求が増えます。
「現場で必要だから、たくさん分泌してください」
というリクエストが届くわけです。
他にも、精神的なストレスを受けた時などは、交感神経の働きにより副腎へ要求が増えます。
当然のことながら、要求が長期間に渡ったり、原料となるコレステロールが運ばれてこなかったりすれば、副腎でのホルモン合成が間に合わなくなります。
◇副腎機能低下の側面
ステロイドホルモンが合成できなくなることで、炎症やアレルギー反応への対策が難しくなることは予測できます。
しかし、隠れた側面としては、エネルギー代謝にも関係してくるのです。
副腎で合成される「糖質コルチコイド」は血糖値を高める働きがあります。
血液中のグルコース濃度が下がってきた時に分泌され、血糖値を一定に保つ働きがあります。
この糖質コルチコイド分泌が低下されたとしたら、下がってきた血糖値を上げることが難しくなります。
つまり、細胞へ届けるはずのグルコースが増やせないということです。
グルコースが細胞に届かないと、手っ取り早くエネルギーを作り出すことが困難になります。
◇副腎の疲労状態
副腎が疲労状態に陥り、作り出すエネルギーの量が減ることで、
・疲労感
・だるさ
を感じる場合もあるでしょう。
血糖値が上がらないことから空腹を感じ、過食に至るケースもあるでしょう。
その結果肥満につながっていったら、炎症を長引かせる要因は増えるので、悪循環を回すことになります。
次のセリフが聞かれたら要注意です。
「だるい」
「疲れやすい」
「寝ても疲れが取れない」
「朝、起きられない」
「イライラしやすい」
「つい食べ過ぎてしまう」
「ぼーっとする」
「朝は辛いけど、夕方は元気」(←コルチゾールの分泌が多いのは朝)
これらの発言は副腎が疲労状態である可能性があります。
◇副腎疲労の原因
副腎の疲労状態を起こす原因として考えられるのは
・過剰な運動
・精神的ストレス
・感染症
・長期間の炎症
・食生活の乱れ
・睡眠不足
が挙げられます。
リハビリテーションで担当する場合は、これらの原因に対して介入すると効果的である場合が多いです。
徒手的な介入や運動療法で、効果が得られない場合は、投薬の状況を確認したり、上記原因について調べてみると良いかもしれません。
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ホルモンは、ある条件(物質)に対して特異的に働くことで、生体内の反応をコントロールしています。
◇終わりに
ホルモンというのは、意識すれば分泌できたり、意識すれば抑制できるものではありません。
リハビリプログラムを進めるにあたって、体のカラクリを知ることは患者さんに複数の選択肢を提示できるようになるでしょう。
例えば、リハビリのメニューを行なっているときの脳内の活動、分泌されるホルモンを理解できていたら、そのメニューを選択肢の一つとして自信を持って提供できますね。
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