運動の効果をホルモン分泌と代謝の視点で説明します

世界的に糖尿病の増加が報告され、薬物の研究や運動指導に加えて、巷では「糖質制限ダイエット」といったダイエット方法もあります。

 

糖尿病に対しては血糖値のコントロールが重要な鍵とされています。

 

血糖値のコントロールで、インスリンというホルモンが、体内では重要な役割を担っています。

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糖尿病などで血糖値が高い患者さんのリハビリを担当する時に注意するホルモンの働き

 

たとえ糖尿病ではなくても、ホルモンの働きや代謝活動にフォーカスした運動の理解は、リハビリだけでなく日々の健康管理や予防にも役立ちます。

 

 

この記事では、運動の効果をグルコース代謝とインスリンの働きという観点から解説しています。

この記事を読んで、「運動を処方される理由」をクライアントに解説できるようになると、相手の納得が得られ、その効果が高まっていくことでしょう。

 

それでは本編へお進みください。

 

疾病予防、治療としての運動

糖尿病をはじめとした生活習慣病、メタボリックシンドロームの対策として、「運動」が挙げられます。

 

「運動」にはどんな効果があるのでしょう?

 

リハビリテーションプログラムでは、「運動療法」が立案されることが多いですね。

 

効果的であると考えられているから、プログラムに挙げられるわけですよね?

 

 

運動の効果とは?

 

柔軟性の向上?

筋力の増強?

 

何にフォーカスして語るかで、その切り込み方は変わってきます。(科学的な見方ってそういうものです)

 

生化学、生理学的な視点で運動を見てみましょう。

 

 

運動と骨格筋

運動にはほとんどの場合、骨格筋の収縮が伴います。

 

 

骨格筋が収縮するときには、細胞で合成されたエネルギー源であるATPが必要になります。

 

 

そのATPは骨格筋細胞でも作られるわけなのですが、何を材料に合成される(代謝される)のでしょう?

 

 

材料の一つが血液中のグルコースです。

 

 

他にタンパク質や脂質を材料にして、ATPを合成する反応もあります。

 

血液中のグルコースが少ないと、骨格筋に蓄えられたグリコーゲンをグルコースに代謝して、そのグルコースを使います。

(その反応はグルカゴンというホルモンの分泌によって発動します)

 

 

グルコースは親水性の物質であるため、細胞膜から直接細胞内に入っていくことはできません。

 

 

グルコース専用の入り口が必要になります。

 

 

その専用入口が細胞膜にあるGLUT(グルコース輸送体)です。

 

 

そのうちのGLUT4というタンパク質は骨格筋細胞内に備わっていて、インスリンの働きにより細胞膜表面に移動してきます。

 

運動はインスリンとは別のルートで、細胞膜表面にGLUT4を移動させることが知られています。

参考:Vol.8 2型糖尿病と運動療法(1)(北海道理学療法士会)

 

 

運動による糖取り込み能力向上

運動はインスリン非依存的にグルコースを筋細胞に取り込む効果があります。

 

 

その効果は一過性(急性)だけでなく持続的にも期待ができるのです。

参考:運動と骨格筋GLUT4

筋収縮によるインスリン非依存的なGLUT4トランスロケーション作用は、運動終了後、2~3時間経過すると消失する。しかし、骨格筋は運動によって消費した筋グリコーゲンを回復させるために、その後も、活発に血糖を取り込みつづ ける必要がある。そのため、運動終了2~3時間経過した後は、活動筋において は一定濃度のインスリン刺激に対 してよりたくさんのGLUT4が細胞膜へとトランスロケーションできるようになる。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/tits1996/11/10/11_10_42/_pdf より引用)

 

運動終了後はGLUT4発現量が増加するそうです。

 

転写するタンパク質が増えるからでしょう。

 

 

そうすると、インスリンによってグルコースの入り口が増えるので、細胞にどんどん取り込まれるわけですね。

 

 

結果的に血糖値(血液中のグルコース量)の下降を導きます。

(細胞で取り込んだ後、グルコースがATPに代謝できるかはまた別の話になってしまいますが・・・)

 

 

痛みに対しての運動の効果

ここまでみてきた内容の通り、インスリンの働きによるグルコースの取り込みが効率化された(インスリン感受性の改善)場合、脂肪細胞への取り込みは減っていくことが考えられます。

 

 

そうなれば、脂肪細胞との関係が言われている炎症性サイトカインの活動に繋がらなくなっていくことでしょう。

 

それは、慢性的な痛みがある、痛みの感受性が低い、といった状況にも効果が期待できるのではないでしょうか?

 

 

あくまで、「理論的には」です。

 

 

慢性疼痛に対しての運動効果という意味では、「ただの」運動よりも「好きな」運動や「楽しい」運動がオススメです。

 

 

ドーパミンの分泌が側坐核での疼痛抑制系に関係するからです。

参考:脳内機序に基づく慢性痛の治療

 

 

終わりに

「運動効果」はいろいろな側面から語ることができます。

 

 

筋細胞を増やすような運動(レジスタンストレーニング)はグリコーゲンを蓄える量が増やせるかもしれません。

 

 

 

継続した運動はインスリン感受性に働きかけ、単純に肥満を解消できるかもしれません。

 

 

肥満の解消は、炎症性サイトカインの発現を減らし、慢性的な痛みを解決できるかもしれません。

 

 

「好き」な「楽しい」運動は、疼痛抑制系に働きかけ、鎮痛剤が効果を出さない痛みを軽減できるかもしれません。

 

 

「運動」というだけでは、様々な意味、印象、やり方があるでしょう。

 

 

患者さんに対して、どういう効果を期待するための運動を「どのように」伝えたら良いのか。

 

 

運動を指導する際には、その部分が問われるでしょう。

 

 

運動療法を効果的に進めるために

運動は機能改善にも、健康増進にも効果的であると言えます。

「効果的だ」とわかっていても、クライアントの運動に結びつかない理由はどんなことがありますでしょうか?

 

もしも理由が、

「関節がうまく動かない」

というクライアントの訴えであれば、一番の解決策は

「関節の動きを改善する」

となります。

 

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