統合と解釈の具体的方法

統合と解釈を進めていくうえで欠かせないのは療法士側の「状態」です。

 

マインド、身体状況、または心情、想い、趣味、得意分野など、重要な療法士の状態の指標となります。

 

前回にも書きましたが、統合と解釈とは

二つ以上の物をまとめ、それを受け手側が噛み砕いて理解すること

です。

 

ところがせっかく統合したものの事実が、療法士側の「状態」によって、歪められるケースが多発しているのが現状です。

 

◆クリニカルリーズニングとは

「クリニカルリーズニング」

という言葉があります。

 

日本語訳では

臨床推論

と訳されたりしていますが、そのままクリニカルリーズニング、と呼ばれているケースが多いのかな、という印象です。

 

このクリニカルリーズニングとは

クリニカルリーズニングとは,セラピストがクライアントとその家族、および他の医療チームメンバーと共同し、臨床データやクライアントの意志/希望、専門的知識から導き出された判断などを基に、治療の意義、到達目標、治療方針などを構築する過程である
Mezirow J: Transformative dimension of adult learning. Jossey- Bass Publishers, San Francisco, CA, USA, 1991.

とされています。

 

また、筋膜リリースで有名な理学療法士、竹井先生の著書では

臨床では、患者の痛みや機能異常の原因を特定し、適切な治療をすることが求められる。それには複雑に絡み合った問題を一つ一つ論理的に解決していくプロセスが必要となる。このようなプロセスをクリニカルリーズニングという。「クリニカル」は「臨床」を意味し、「リーズニング」は「推論」を意味する。推論は「論理的に考えること」であり、クリニカルリーズニングは、臨床での諸現象を関連する知識・技術を用いて推論し、未知の事柄を判断し、決定していくプロセスである。
系統別・治療手技の展開 改訂第3版

とされています。

 

なんだか統合と解釈と少し似てきましたね。

 

定義は大事なので一応あげましたが、重要なのはその方法です。

 

いずれにしても療法士側の「状態」に依存するという点では同様です。

 

◆療法士の「状態」とは

統合と解釈にしてもクリニカルリーズニングにしても「患者さま」を評価するためのものなのに、なんで評価する方である療法士の状態が関係あるの??

と思われるかもしれません。

ここが一番の肝であり、落とし穴でもありますので、ここからよく注意して読んでください

 

我々は普段臨床で、先行研究や教科書などの情報を咀嚼し、それを以って臨床に出ています。

その集める情報自体に偏りが出ることが多い、という点です。こちら状態が関係する要素①、です。

 

本日はこの①について。

 

今この記事を読んでいるあなたの趣味はなんですか?

その趣味を他人に熱量高く説明して、同じ熱量になったお友達はどれくらいいらっしゃいますか?

 

人は知らず知らずのうちに、自分の好きなものをよく見てしまう傾向があります。

逆に言うと、苦手なものを自動的に見なくなる傾向があります。

 

これを「認知バイアス」、と言います。

 

◆認知バイアスの怖さ

客観的な研究方法としてrandomized controlled trial(RCT)を使用することでEvidence Levelが、、、

case-control studyとcohort studyは違う。RetrospectiveなstudyとProspectiveなstudyでは物事の因果関係という点で、、、

とか始まると、おそらく目を背けたくなる人が大多数なはずです。
(お願いですから離脱しないで最後までお読みください)

あなたの情報収集したその意識そのものがもうすでに情報の偏りを生んでいる、ということを客観的に見ているかどうか、という視点、というか観点が必要になります。

 

あなたの趣味の時間のあなた自身は、いつものあなたとどう違っていて、そしてどんな気分なんでしょう。という点を客観的に見たことがあるでしょうか。

 

評価を行う際に客観的指標だから、とかみんなが使っている手法だから、というのが、本当に目の前の患者様に当てはまるのかどうか。

目の前の患者様を見ている自分はどんな視点、観点で見ようとしているのか。

といった点を統合と解釈に入れることが重要になるのです。

 

◆臨床で重要なメタ認知の力

クリニカルリーズニングでは、「メタ認知」という考え方を重要視しています。

自己の認知活動(知覚、情動、記憶、思考など)を客観的に捉え評価した上で制御することである。「認知を認知する」 (cognition about cognition) 、あるいは「知っていることを知っている」(knowing about knowing) ことを意味する。またそれを行う心理的な能力をメタ認知能力という。 メタ認知は様々な形でみられ、学習や問題解決場面でいつどのような方略を用いるかといった知識や判断も含まれる
J Metcalfe, A P Shimamura  Metacognition: knowing about knowing. Cambridge, MA: MIT Press. 1994

 

わかりやすく言うと、自分の思考を第三者目線で肯定的にも否定的にも見れているか、というような能力です。

これが出来ているか出来ていないかで、統合と解釈の精度は大きく変わります。

そして患者様に選択肢を提案する量も方法も大きく差が出ます

よって、メタ認知能力を高めることは、リハビリテーション専門職には必須である、と言えます。

 

ところが散々クリニカルリーズニングの重要性を説く方がいるわりに、メタ認知を高める方法をお伝えしている研修会は多くありません。

 

本をたくさん読みましょう、という方もいらっしゃるくらいです。

 

本をたくさん読むのも一種のメタ認知能力をトレーニングする方法ですが、本を読んで得た情報をどう解釈しただろう、本を読んでいる自分はどう思っただろう、などといったメタ認知を行う必要が、今度はあります。

 

手技や、ある一定の概念にハマってしまうセラピストが非常に多いのが現状です。また、専門家が専門家を育てる教育システムである業界あるあるに当てはまってしまう我々の業界において、情報の階層性、優先性をどのように解釈していくのか。

 

どんな学問も、メタ認知の視点、観点を忘れないことが、療法士には求められます。

これからの療法士に求められる視点で最も重要なのはそこであり、それを以って臨床で統合と解釈することができること。

 

これが統合と解釈の最大のコツだと言えます。

 

IAIRでは特定の手技を伝えるだけでなく、メタ認知を高める方法を研修会でお伝えしている、唯一のリハビリ職種専門の臨床教育機関である、と言えます。

 

次の森本不定期コラムでは、クリニカルリーズニングにも少々踏み込んでいきたいと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

 

一般社団法人 国際統合リハビリテーション協会

会長 森本 義朗

お問い合わせ

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