大脳基底核による運動制御 リハビリへの活用

From.IAIR 福留良尚

 

大脳基底核がどのように運動制御をしているのか?

例えば、

「ペットボトルを取って水を飲むまでの間、大脳基底核は何をしているのか?」

この一連の運動を3つの相に分けます。

  1. 運動プログラムの作成(体を動かす方法を考える)
  2. 姿勢制御プログラムの実行(姿勢を安定させる)
  3. 随意運動の実行(ペットボトルを取って飲む)

以下画像参照:高草木薫「大脳基底核による運動の制御」より 臨床神経学 49巻6号(2009:6)

 

脳卒中のリハビリテーションにおいて重要な視点は、この3つの相の内、どこに問題があるかをセラピストが把握出来ているかどうかです。

そのためには、大脳基底核がどのような働きをしているのかを知らなければ、それに応じたプログラムは作成できません。

「麻痺があるから出来ない」ではなく、どの相で問題が発生しているのか、一つずつ見ていきましょう。

 

運動プログラムの作成

運動プログラムの作成は、人の脳の中でも一番発達している大脳皮質で行われます。

そのプログラム作成の際に、大脳基底核は大脳皮質と連絡を取り合って、最も効率的で実現可能な方法を作成します。

この連絡を取り合うことを「大脳皮質―基底核ループ」といいます。

 

大脳皮質―基底核ループ

このループには以下の情報が行き来しているといわれます。

「運動ループ」と「認知ループ」

 

運動ループは、効率的で実現可能な運動のプランを練り上げるための情報の行き来、といえば分かると思います。

認知ループは、例えば自分とペットボトルの距離や、ペットボトルの大きさ、内容量など、外部情報を取り込んで、それに合わせた運動プランを作成します。

 

この機能が働くためには、もちろん大脳皮質と基底核の機能が確保されていることが重要ですが、次の3つを見る必要があります。

  • 覚醒:ちゃんと起きているか
  • 注意力:リハビリに集中しているか
  • 意識:モチベーションがあるか

運動プラグラムの作成、つまり脳の活動は、これらが確保されて初めて可能です。

超急性期のまだぼんやりしている患者さんには難しい課題かもしれません。

 

姿勢制御プログラムの実行

運動プログラムが作成されたら、その運動を行うための体幹や上下肢近位部の安定性を確保しなければなりません。

それ無しには、人間の活動は起こし得ません。

常に重力に抗して活動をしなければならないので、「動かす機能」と、重力に抗して「支える機能」は分けて考える必要があります。

 

この機能の中枢は、脳幹です。

脳幹と大脳基底核、そして脳幹と大脳皮質は、それぞれでやり取りを行い、ペットボトルに手を伸ばすための体幹、上下肢近位部の姿勢制御プログラムが、動きよりも一瞬早く行われます。

その時間は百分の一秒、つまり0.01秒ともいわれています。

なので、この機能は意識出来るものではありません。

意識して姿勢を正そうとするということは、本来の脳の姿勢制御機能とはかけ離れていることが分かりますか?

 

こちらの研修では脳卒中の神経生理学の部分を学ぶことが出来ます。

>>>脳卒中Basicコース

 

随意運動の実行

ここで初めて、皮質―基底核ループで作成された効率的で実現可能な運動プランが実行されます。

大脳皮質から皮質脊髄路を伝って末梢の効果器(筋、関節)に神経伝達が行われ、ペットボトルを取って水を飲むという運動が可能となるわけです。

随意運動の実現には複数の神経機構が動員されることが必要であり、基底核は、その時間的・空間的な協調的活動を調節している。この協調的活動の破綻が、基底核疾患における運動障害につながると考えられる。高草木薫「大脳基底核による運動の制御」より:臨床神経学 49巻6号(2009:6)

 

脳卒中リハビリテーション

随意運動の実行の前には、必ず姿勢制御プログラムが先行していなければなりません。

大脳基底核は、大脳皮質や脳幹と連絡を取り合って、事前にその準備をしているわけです。

しかも、その機能は無意識に行われます。

 

つまり、「ペットボトルの水を飲もう」と思う前、「喉が渇いた」「あっ、ペットボトルに水がある」と考えた瞬間には、既に姿勢制御プログラムは実行されているのです、

 

リーチの練習をする時、物に意識が向いて、手を伸ばすよう指示する前に、どんなアプローチをしているでしょうか?

どんな刺激を患者さんに送っているでしょうか?

そこを意識してリハプログラムを行っているでしょうか?

 

その視点が脳卒中のリハビリの成果を変えるといってもいいでしょう。

 

それでは最後まで読んでいただけて感謝です。

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一般社団法人 国際統合リハビリテーション協会

理事 九州地区 理学療法士

福留 良尚

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福留 良尚

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国際統合リハビリテーション協会常任理事 IAIR九州専任講師 理学療法士 コンディショニングサロン仁愛クリニカルルーム代表 3児の父 
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