いる社員、いらない社員とは最近のプレジデント誌のタイトル。タイトルを見ていたら「これが療法士に置き換わったら一体どうなるのだろう」筆者は思った。近年、SNSで様々な発信をしている療法士が増えるなか、今のリハビリ業界に対して閉塞感を感じている方、やり辛さを感じている方、斜に構えてクールを装い内面で燃え上がっている方、内外関係なく幻滅し淡々と毎日を過ごす方、様々な意見や声が飛び交う。それらは事実であり、事実ではない。現実であり、現実ではない。だが確実に「いる療法士」と「いならい療法士」が存在する。今回は「いらない療法士」について考え、反面教師として学んでいこう。
いらない療法士トップ3!
まずあなたに質問したい。
「あなたにとって”いる療法士”とはどんな療法士か? そして”いらない療法士”とはどんな療法士だろうか?」
おそらく、様々な意見が出ていることだろう。講義の場面で直接意見が伺えないのが残念だ。だが両方に共通し、かつ誰もが考えてしまうものは多くない。
例えば個人の「理想の姿」という切り口だ。あなたが理想とする療法士像に合う人はいるし、合わない人はいらない、となる。
だが、そんな個人の理想で曖昧になる話をしたいわけではない。今回は現実を見てみよう。若干の独断と偏見が加味されるのは許してほしい。
だが、現実から挙げるトップ3はこれらだ。
- 50代療法士
- エビデンス偏向療法士
- 経験年数マウンティング療法士
ではなぜこれら三者なのかを紹介しよう。
50代が辞表を書かされる時代?
これは先のプレジデント誌に掲載されていた記事なのだが、50代の課長クラス社員は辞表を出さざるを得ない状況に陥っているという。
理由は叩き上げが多く、パワハラ、セクハラなど社内での苦情が絶えず、能力があっても社内コンプライアンスに合わないという理由で退職を余儀なくされるそうだ。
またバブル期の茹でガエル世代でもあり、能力と関係なく仕事が出来たため、地力がない。なのにスキルアップ、キャリアアップの勉強をせず偉そうに昔話をして説教する。ミスを若手に押し付け責任を取らない。
などなど……療法士業界でも「あるある」と思わず頷いてしまう。「あの人の事だよね」と、すぐに姿が思い浮かんだかもしれない。
中堅病院でダラダラリハビリをしてきたツケが回ってくるのは間近だ。
そんな輩は若手に論破されてイジメに走る。イジメと感じたらラッキーと思おう。まずは社員規定、職務規定をチェック。その上でサクッと上層部に報告し、問題を顕在化することだ。そして上層部がコンプライアンスを守る意志の確認をしよう。
それすらできない組織ならあなたがそこで能力を発揮するのは大きな損失だ。
誤診率30%? その解決は人には不可能?
2004年、Archives of Internal Medicineにて、フランスの医師らがICUで死亡した人々の剖検結果についての論文を掲載された。そこでは生前診断の約30%は誤診であったという報告だったとのこと。
また近年では東大名誉教授、神経内科の権威である冲中重雄氏が退官時の最終講義において「私の誤診率は14.2%である」と述べた話も話題となったのもき奥に新しい。
以前、日本IBMの方と共に仕事をした際「医師の診断の補助にAI(ワトソン)を」という話になった。IBMが開発したAIワトソンが新しい治療法を発見したニュースは2017年だったか。
確かにAIは月まで届く量の医療文献、専門研究の文書を1日で全て読み取り、新たな論文や治療法も感情抜きで収集するチカラを持つ。
それゆえ、エビデンス……科学的根拠にのみ頼った考え方しかできない人材は、AIに挑戦し続けているようなものだ。
まさにドンキホーテ。竹ひごでフェンシング。ミニ四駆でスポーツカーに挑むようなもの。
もっとエビデンスだけではない要素で考えることができないなら、思考するチカラを手放してしまったら、今ですらあっという間に仕事を失うだろう。
どうやらAIはその場で患者にオーダーメイドの薬を作るところまで研究が進んでいるという話題もある。勝てるところで戦うか、高性能な道具として活用するか、柔軟な思考が試されている。
経験年数ではない!何が格差をつくりだすのか?
まず最初に言っておこう。若者の感性は正しい。これを前提にできないなら、あなたは老化していると思った方がいい。
自分の家族以外、守るべきものなど持っていやしないのだから、自分を守るためのプライドなど今すぐゴミ箱に捨ててしまえ。
それができるなら、あなたは経験年数マウントなどすることなく、信頼される療法士になっていくだろう。逆に、いつまでも過去の栄光に頼っているなら、あっという間に世の中から取り残されてしまうだろう。
最近のニュースに頻繁に出てきている、旧い体質の団体が守ろうとしているものに対する違和感。考えられる若手は、それらにハッキリとNOを突きつけてくる。
次の時代を創るのは誰だ? 思考の凝り固まった旧世代の療法士か? 違うだろ! 今、現場で頑張ってる若手療法士たちだ。
経験年数が1年でも上になったら、後輩にカッコイイ背中を魅せ続けているかを確認することだ。
筆者は思う。ダラダラ重ねた10年選手より、夢に突き進む3年目の背中の方がカッコイイ。
10年目を過ぎたら、いい加減自己主張をやめて、後輩を育てたらどうだ? 15年目などあっという間だぞ。
AIでは再現できない領域に活路を!
結構暴言じみた発言をしているが、さてここまで読んでくれた人はどのくらいいるだろう。LINEやTwitterユーザーがメールやコラム……長文読解が苦手になってきているとの話もある。
だが翻せば、それは人が機械的な反応をする存在に退化しているのではないか? いや、退化も進化の一形態なのだから表現としては適切ではない。人としての進化を諦め、停滞しているのではないか?
IAIRの目指す療法士像は「提案できる療法士」だ。
提案と選択肢を提示するのは意味が違う。ゲームの様に選択肢が提示され……「はい」、「いいえ」のどちらかを選ばせるのは提案ではない。選択肢を提示し、相手に合わせて選択肢そのものや、ルール自体を変えることができる柔軟な思考を持つことがAIでは再現できない領域だ。
AIが好きな人に言わせれば、それすらもプログラムでどうにかなるという。
そうじゃない! プログラムじゃない。そこに情緒的、人間的な感性、論理的ではない全ての要素があるからこそ出来ることがある。
AIは夢をみるのだろうか? 過去ベースでの将来予測はできても、未来予測はできない。だが、人は夢をみる。責任と行動を伴い、志とできる。夢見た未来を現実にするチカラを人は持っている。筆者はそう信じている。
まとめると……
全くと言っていいほど、具体的な一手を提示していない。
一言でトップ3をまとめてしまえば「旧世代の思考にしがみつく療法士はいらない」だ。
ここで勘違いして欲しくないのは、伝統的作業療法など、脈々と受け継がれていく内容の全てを否定しているわけではない。むしろ伝統的なリハビリをする側は伝統を守りながら今をどう生きるかをより深く考えなければならない。
伝統的なリハビリをする方々には脱帽だ。
いずれにせよ、今回の内容だけでは答えは出ない。未来が日常になったら、次の未来の為に思考するのだからキリがない。そして独りで考えている限り思考の限界は数秒後にやってくる。
今度、時間を作るから、一緒にあれこれ考えて、一緒に何か楽しいことをヤらないか?
IAIR副会長 作業療法士
臨床共育メンター 齋藤 信
認定講座の紹介をしないコラムでいいのか(怒)!
認定講座……いやさ、直接目の前にいる患者さんの問題解決になる話を書かないでいすぎるので怒られそうだ。
考えるチカラを放棄した旧世代療法士にならないって、大事なことだと思うんだけどな……
でも、確かにその下地ができてなきゃダメだよね。経験年数マウントをしてくる旧世代を出し抜くなら、同じことしてたってダメ。単に新しい知識ですぐ追い抜かれるのが悔しいだけだから。悔しがる暇があるなら、患者さん、クライエントさん、そして本当の意味で自分の為に新しい知識を、技術を学ぼう。その場は認定講座として用意している。
>>> https://iairjapan.jp/license
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前回のテーマは「EBMとNBM」&「中国リハビリの報告」で行った。
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