利き手交換時の書字訓練の進め方とは?

 

脳卒中片麻痺の後遺症などで、止むを得ず「利き手交換」を行う場面が作業療法士にはあると思います。その中でも、重要になってくる練習の一つが、書字。

では、書字の訓練ってどのように進めていけばいいのでしょうか。

どのようなことに留意すれば、最短で最良の結果を引き出すことができるでしょうか。

本日はそんな、作業療法士が行う書字訓練の「段階づけ」についてお話しします。

一般的な書字訓練の順番と方法

0.ペンやボールペンではなく、鉛筆から始める(HBが推奨)

1.輪郭文字の塗りつぶしをする

2.たて、よこ、ななめ、曲線を描く練習をする

3.なぞり書きの練習をする

4.複写(お手本を見て書く)

5.ひらがなやカタカナではなく、漢字から練習する

6.紙の置き方を工夫する

7.2センチ~1.5センチのマスを利用する

と言われています。

 

そもそも、左手書字時の動作を分析・評価して、可動性や運動性の確保が先では?

という、意見もあるかと思います。

が、可動性運動性の改善は、書字ができる条件には入ってくるが

非利き手での書字は、健常人でも獲得していない動作です。

失われた機能や能力を取り戻すADL訓練とは違い、新しい動作を獲得する訓練となります。

したがって「書字」そのものを訓練する必要があります。

しかし、ここで作業療法士としての分析と「工夫」が必要です。

 

なぜ鉛筆を使用するのか?

これは、一般的に使う中では、鉛筆が最も感覚フィードバックを得られやすい「書具」であるからです。

タブレットにタッチペンで字を書く場面をイメージしてみてください。ガラス面だとツルツルして書きにくいですよね、あれは、ペンと面からの摩擦による感覚フィードバックが少ないからなのです。

前段階として、クレパスやチョークで画用紙や黒板に書く

というのも、さらに段階を低くし感覚を高めたいなら取り入れるのも良いと考えられます。

そして、文字は「たて、よこ、斜め、曲線」この4つの要素で成り立っています。

要素練習として、これらを単独で訓練するのも効果があります。

特に、左手で文字を書くときと右手での違いは

「右:横線を引いて書く」か「左:横線を押して書く」かが大きな違いで、

服部*らは、この「押して線を書く」動作をいかにうまくするかが書字動作獲得のコツだと述べています。

次の段階が、「なぞり書き」。

なぞり書きをするメリットは、「体(=無意識)に動きを通じて正しい形の文字」を覚えこませることができることです。

どの位置に、どんな長さで、どんな線が引かれているか、が、文字の美しさを決定します。なぞり書きで、動きを通じて目と手を協調させて文字を訓練していくことで、正しい文字を体に覚え込ませます。

そして、お手本を見て複写。

6.の紙の置き方ですが、実は、正面にまっすぐ置くのが書きやすいとする者は全体の3分の1で、残りの3分の2は、斜め45度に置いたり、左に寄せて置いたりする「他の置き方」を好むとすることが宮前*3の研究で分かっています。

子どもの学習過程と違って、漢字から訓練を始めるのは、その字画にあります。中井*2らは、ひらがなやカタカナは自覚が少ないため、線のゆがみが目立つとし、大人が再獲得していくには、漢字から始め、漢字仮名まじり文、かな、数字の順で進めると良いとしています。

また、宮前*3らによると練習方法による上達の差もみられ、ペン習字練習帳を使用した場合、速さを要求したにも関わらず、綺麗さの上達も早かった。反対に、基礎練習に重きを置き、字の練習数が少なく、速さ、綺麗さのいずれも要求しなかったグループは、最も上達率が低かった。とのことです。

早く、綺麗に書くためには、一定のガイドが必要です。

そのガイドというのが、マス目です。

これは筆者の意見ですが、たて、よこ、ななめ、曲線の練習に

横や縦に長~く線を引く練習用紙がOT室などに常備されていますが

「字を書く」という目的の上では、その練習法はあまり適さないと考えています。

 

それであれば、マスの中に収まるように、またはガイド線に合わせて

短い線を引く練習を繰り返す方が良いと考えます。

なぜなら、手首の可動範囲はせいぜい数センチ程度、マス数個ぶんだから。。

手を紙から浮かせて字を書く場面というのは、あまりありませんよね。

 

と、色々と紹介してきましたが、まとめますと

 

1.書字の訓練は、初めから速さと美しさを求めてOK

2.段階をつけるときは、対象者に合わせて感覚フィードバックとマスでガイドを。

3.持ち方や、紙の置き方も工夫して、左手特有の「押して書く」がうまくできるようにする。

ぜひ、書字訓練の段階をつけて

最良の結果を引き出す関わりをしてくださいね。

まずは可動性の確保をしたい、機能の底上げをしたい!

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<参考文献>

古川宏ほか:作業療法のとらえかた:100-113.文光堂,2005

*服部一郎、細川忠義:図説 脳卒中のリハビリテーション:106-109.医学書院,1982

*2中井敬三、衣川博也:脳卒中片麻痺患者の利き手交換訓練の一方法ー書字訓練についてー 理学療法と作業療法9:11:775-781,1975

*3宮前珠子、佐々木光子:書字の利き手交換 第13回OT学会誌10-15.1979

 

 

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