From.IAIR 福留良尚
膝の痛みや変形によって日常生活に支障がある人、「65歳以上の女性3人に1人が悩んでいる」というデータがあります。
厚生労働省 :平成25年国民生活基礎調査概況「第9表 性・年齢階級・症状(複数回答)別にみた有訴者率(人口千対)」より
外来リハはもちろん、膝が変形されている高齢者も多く、リハビリテーションにおいて痛みのコントロールや日常生活での問題を改善することは、重要な目標となります。
膝のリハビリにおいて、一昔前は「大腿四頭筋の強化」が提唱されていました。
(現在も積極的に行っている施設があることを耳にします)
確かに、大腿四頭筋の筋力はあるに越したことはないでしょう。
しかし、高齢で膝に変形があり、歩容が安定しない患者さんにいくら大腿四頭筋単独の筋力トレーニングを行っても、動作やADLに結びつかない経験をしたことはないでしょうか?
過去の筆者を含め、運動療法の技術が未熟だったのかもしれませんが、実はかなり非効率的であるということが今なら理解できます。
膝の機能
膝は股関節と足関節の間にある関節で、運動方向は一軸性(屈曲-伸展)です。
身体は前後左右、捻じれ、上下運動とあらゆる方向への運きを必要としますので、大腿四頭筋の筋力があっても、拮抗筋であるハムストリングスとの協調性や、股関節、足関節との連動が上手くできなければ、それは日常生活では使えない筋力です。
ここは重要なポイントです。
「日常生活で使いこなせない筋力トレーニングは意味がない」
プロのスポーツ選手や山登りを趣味にするような人であれば、大腿四頭筋の筋力アップが必要でしょう。
ですが、普通の生活をしている中高年がボールを蹴ったり、険しい山道を登っていくことがあるでしょうか?
普通の平地がスムーズに歩ければ、何ら問題はないでしょう。
大腿四頭筋の筋力トレーニングをするということは、そういったパフォーマンスの向上を目的にするということです。
20代細身の女性の大腿四頭筋の筋力で、スクワット10回も出来ないでしょう。
しかし、彼女達は膝に痛みなんて抱えていません。
何故なら、膝に掛かる負担を柔軟にコントロール出来ているからです。
筋力アップ≠痛み軽減
高齢者の膝が痛いからと大腿四頭筋のトレーニングを強いるのは、セラピストとして思考停止状態と言っても過言ではないのかもしれません。
変形性膝関節症の運動療法
では、変形性膝関節症の患者さんに対してどのようなアプローチが有効でしょうか?
大腿四頭筋に対して、膝の負荷をコントロールするだけの機能を復活させるには、先ほどからお話している通り単独の筋力トレーニングはあまり有効ではありません。
先ず試して頂きたいのは、筋間の固さをとる筋膜系のアプローチです。
ご存知の通り、筋肉は筋膜を介して連結しています。
解剖の教科書のように綺麗に分かれていることはありません。
大腿四頭筋で観察してほしいポイントは3カ所です。
外側広筋と外側ハムストリングス
内側広筋と内転筋群
大腿直筋と腸腰筋
この3カ所の筋間を丁寧に触診して、圧痛や固さがないかを評価してみてください。
そして、そこを押さえながら膝の自動屈伸運動を行ったとき、動きがスムーズになったり患者さんが軽くなった感じがしたら、そこは治療ターゲットとしてアプローチしてください。
方法は筋間を開くような縦断マッサージでOKです。
適切なアプローチ方法は、研修会の中でお伝えしています↓↓↓↓
筋膜の固さがあると、いくら静的なポジションでMMT4以上あっても、立位や歩行といった動的な場面になると途端に使えなくなります。
筋肉隆々のスポーツマンが故障するのはこれが原因です。
せっかく鍛えた筋肉も、実際のパフォーマンスで使えないと全く意味がありません。
それでは最後まで読んでいただけて感謝です。
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一般社団法人 国際統合リハビリテーション協会
理事 理学療法士 福留良尚
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