脳卒中リハビリテーション 腹内側系と背外側系 臨床への活用

臨床2~3年目の頃は、脳生理が非常に苦手でした。

「覚えないといけない」という焦りと「これが臨床の役に立つのか?」という疑問と。

そんな疑問を抱えていたから、勉強が進まなかったと今なら分かります。

 

リーチ動作の練習、立ち上がり訓練、歩行訓練、ADL訓練といった具体的な動作練習を繰り返すようなプログラムでは、CVA患者さん特有のパターン(いわゆる異常運動パターン)が出てしまい、バランスが悪い、持久力がないといった問題が出てきます。

しかし、これを繰り返せばきっと上手くなるからと反復させていることが往々にしてあるようです。

今回は、動作の基盤となる姿勢(姿勢制御)に視点を絞り、その神経活動を司っている経路についてまとめていきます。

 

内側運動制御系と外側運動制御系

Kuypersが提唱した内側運動制御系と外側運動制御系の概念は、姿勢制御を理解する上で欠かせません。

これらの名称は、各々を構成する下降路(脳から末梢への神経伝導路)が、脊髄の内側、および外側を通ることからこのように呼ばれています。

高草木薫:大脳皮質・脳幹-脊髄による姿勢と歩行の制御機構,脊椎外科(2013.12)27巻3号より引用)

内側運動制御系は、内側の腹側を通ることで「腹内側系」という呼び方もあります。

同様に、外側運動制御系は「背外側系」ともいいます。(以降は腹内側系と背外側系と呼びます)

 

腹内側系

腹内側系の機能は、体幹や上下肢の近位筋といった身体の中心部分を駆動させること。

姿勢制御を担う経路ですので、動作の基盤となる神経活動を伝達しています。

網様体脊髄、前庭脊髄路、視蓋脊髄路など、出発地点が脳幹に存在する脳幹―脊髄下降路と、大脳皮質から始まる前皮質脊髄路があります。

 

腹内側系の主力は脳幹―脊髄下降路です。

 

動作をする際には運動野が働きますが、その動作のプログラミング(どのように、どのくらいの力で、どのタイミングで)を行うのは6野の補足運動野や運動前野です。

この6野からの出力が脳幹へ伝達されることで、脳幹から始まる腹内側系が一瞬早く駆動されます。

 

その間およそ1/100秒

 

それによって動きに先行した姿勢制御が行われ、重力に抗した安定した動作遂行が可能となるのです。

CVA患者さんは、この腹内側系の活動が非常に弱くなります。

結果、体幹の屈曲虚脱(重力に抗する活動の低下)や、立位での異常運動パターン(姿勢コントロールを背外側系で代償)といった症状が出てきます。

ここからは具体的な経路について概要。

 

網様体脊髄

網様体脊髄は、脊髄の全長に渡って両側の神経細胞に作用して、体幹と両上下肢近位筋の働きを駆動させる。

静的な姿勢から、動作の間常に駆動し続け、安定性を保証している最大の経路と言われている。

両側に作用するということは、非損傷脳から麻痺側体幹への神経伝達が行われることを意味します。

この視点があるかないかで、脳卒中リハの成果を大きく変えるといってもいいでしょう。

 

前庭脊髄路

前庭脊髄路は、主に同側の近位筋の抗重力的な活動を駆動させる。

運動中の空間での頭部の位置や、体幹との関連での頭部の動きの調整に関わるとみられている。

頸部の筋緊張が高い患者さんは、この経路を上手く使えていない可能性が高いと考えられます。

 

視蓋脊髄路

視蓋脊髄路は、頸髄に伸びて眼球運動や頭頚部の協調的な運動を調節する。

網様体脊髄と共に姿勢コントロールに関わるとみられている。

 

背外側系

こちらの主力は外側皮質脊髄路、いわゆる錐体路と言われる経路です。

90%以上が錐体交叉して、主に四肢や遠位の巧緻運動コントロールを行う。

全体の3分の1は一次運動野から、さらに3分の1が運動前野、残りの3分の1は頭頂葉の一次体性感覚野からでる。

 

脳卒中片麻痺の姿勢コントロール

CVA患者さんの特徴は、姿勢制御機能、腹内側系の働きが低下し、その機能を背外側系で代償することで異常な運動パターンを形成していきます。

麻痺の回復は、背外側系に依存するように見られますが、そもそも運動をするための基盤である姿勢がコントロール出来ない状態であれば、適切な麻痺の改善には至りません。

常に患者さんは背外側系を駆動し続け、代償的な動き、無理矢理足を上げたり、分回し歩行、非麻痺側の異常な緊張など、新しい動きを学ぶ余力が無くなっている状態です。

 

適切なアプローチを提供するために

  • Brain impactによってどの経路が機能していないのか
  • それによってどのような代償機能を使っているのか

この二つの視点で動作分析をしなければ、単調な動作練習の繰り返しになってしまっても仕方ありません。

 

CCRAでは、先ず基盤となる姿勢制御に対するアプローチを学び、それから動作のためのアプローチを学びます。

脳卒中リハで患者さんが変化しない、毎日同じようなリハビリ内容になっている、そんな悩みを抱えているセラピストは、一度CCRAを覗いてみてください。

きっと脳卒中リハが面白くなると思います。

 

それでは最後まで読んでいただけて感謝です。

Author.Yoshihisa Fukudome,PTR

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国際統合リハビリテーション協会

理事 理学療法士 福留良尚

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福留 良尚

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国際統合リハビリテーション協会常任理事 IAIR九州専任講師 理学療法士 コンディショニングサロン仁愛クリニカルルーム代表 3児の父 
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