在宅サービスや高齢者サービスで、サルコペニア、フレイルといった状態への関わりは注目されています。
サルコペニアは、医療が行われた結果生まれてしまう場合もありますので、介護や在宅だけの問題に当てはまりません。
歳をとると当たり前のように感じる「活動的じゃなくなる」、「筋力低下(力が入らない)」は、自然な老化現象と、そうではない「サルコペニア」に分類されています。
サルコペニアと呼ばれるその病態について、定義、原因、対応策を調べました。
目次
サルコペニア診療ガイドライン
サルコペニアの診療ガイドラインはネット上でも公開されています。(国立長寿医療研究センター)
診療ガイドラインはたくさんの種類がありますけど「サルコペニアの診療ガイドライン」は日本初だそうです。1)
今後5年を目処にエビデンスを蓄積し、改訂をしていく予定となっています。
参考:サルコペニア診療ガイドライン 2017 年版の CQ とステートメント2)
サルコペニアの定義とは?
そもそもサルコペニアって何?
と思われた人もいるかもしれません。
サルコペニアの定義からおさらいしてみましょう。
サルコペニアは
高齢期にみられる骨格筋量の低下と筋力もしくは身体機能(歩行速度など)の低下
と定義されています。
「え?」って思いませんでした?
高齢で骨格筋量が低下していて、かつ筋力が低下していて、運動機能に低下が見られるケースなんて、当たり前じゃないの?と感じませんか?
日常的にあまりにもそういうケースが多いので、患者さんも家族も医療者も、「自然の成り行き」と感じてしまっているのが現状ではないでしょうか?
確かに、加齢によって異化が亢進(あるいは同化の減弱)していたり、食物から栄養が吸収しにくい状況にはなっているのは自然な加齢現象のように見えます。
大きな問題があるとしたら
- 医療行為によって人為的に作ってしまったサルコペニア
- サルコペニアの状態になった後も対策が練られない
ではないでしょうか?
サルコペニアは2016年10月に、独立した疾患として国際的に認められています。
ADL低下リスクや、既存の疾患の予後に影響を及ぼすことが、報告されているそうです。
それでいて国際的な診療ガイドラインは存在していなかったそうです。
世界トップクラスの高齢化スピードを誇る日本でガイドラインが策定されたのは、頷けますね。
サルコペニアとフレイルの違い
サルコペニアを調べていると、多く目にする「フレイル」という言葉があります。
サルコペニアとフレイルの違いについて整理します。
フレイルの定義
フレイルは
高齢期に様々な生理的予備能が低下することによりストレスへの耐性が低下し、健康障害が生じやすい状態のこと
と定義されています。
介護状態の前段階とも捉えられています。
サルコペニアは「骨格筋量や筋力の低下」、フレイルは「虚弱状態」を指しています。
サルコペニアは主に身体的な側面から判断できる状態であるのに対して、フレイルは精神面、認知面、社会面、経済面などの複数の問題を含みます。
構造的にはフレイルに陥るサイクルの一つにサルコペニアが存在する形です。
フレイルの予防や進行を食い止めるために、サルコペニアの予防が重要であります。
高齢者によくみられる状態
サルコペニアの原因として
- 不活動
- 低栄養
- 疾患(代謝性疾患、消耗性疾患)
が挙げられています。
サルコペニアは骨格筋量の低下を指しますので、その原因はホルモン分泌の影響も受けます。
先ほども触れた話ですが、
「最近運動しなくなって、椅子にずっと座っていたり、寝ていることが増えた」
「食事を残す、少食になった」
というシーンは高齢者にはよく見られます。
「歳だからね。。。」と。
当事者も周囲の人もそれで納得してしまうんですよね。
また、加齢や不活発性などによる自然発生的なものもあれば、怪我や疾病に対する治療の場面で
- 不活動
- 低栄養
が生まれてしまう場面もあるわけです。3)
今後、医療現場(特に急性期)ではステレオタイプな対応をしていてはサルコペニアを多く生み出すことになるかもしれません(もうなっているかも?)
クリニカルパスのような大枠の計画を考慮しつつ、あくまで「パーソナルな」対応が求められます。
どちらかに偏るとうまくいかないわけです。
原因が多岐にわたり、かつ個々によってその内容が異なるので、画一的ではない対応が求められるのですね。
サルコペニアの対応策は?
サルコペニアになっているケースに対してエビデンスレベルが高く、推奨される治療法というのはまだ報告されていないみたいです。
しかし、予防としてできるのは「関係する人々の連携」かもしれません。
そして、
- 周囲の人が日頃から観察すること。
- 本人が観察される場に出向くこと。
- そういう場を構築すること。
なのかもしれません。
運動や栄養摂取や薬物管理が決定打にならない以上、サルコペニアの状態になってからは打つ手なしなように感じます。
そうなれば、サルコペニアの状態にしないことを目指さなければうまくいかなくて、それを実践するには他職種で連携していかないといけません。
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リハビリ現場で求められる人材
海外で「長期の身体活動プログラムは、機能制限のある高齢者のフレイルリスク減少と関連がないとする研究」4)が報告されました。
機能制限を筋力と結びつけ、運動によって筋力の維持に勤めようという考え方は効果に結びつかない可能性が示唆されます。
断片的な対応はうまくいかず、人を全体的に見た「統合する能力」を持つ人材が現場に必要だと考えます。
リハビリ担当者が薬物管理にスペシャルな知識意見を持たなくても、薬剤師と連携できるだけの知識は最低限必要だし、連携するための仕組みは必要です。
栄養士とも、看護師とも、介護士とも、家族とも、近所の人とも。
知識はないよりはあったほうがいい。
スペシャルな知識と技術に加えて、状況を俯瞰する能力、強調する能力を、現場は求めているのではないでしょうか?
境界線を認識できて、境界線を越えていけるような動き方を。
[参考]
2)http://jssf.umin.jp/pdf/jssf_guideline.pdf
3)http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03257_01
骨格筋量が減少して、食事摂取量が少なくなってきている時の代謝活動がどうなっているか?
それを知らないまま筋力強化を行えば、逆に筋量の減少を招く場合もあるかもしれません。
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