体内時計に焦点を当てた、脳と内臓の働き【国際事業部 No.18】

IAIR(国際統合リハビリテーション協会)
国際事業部より

 

ハロー!
IAIR国際事業部 所属の
吉田頌平です。

私のコラムでは、
「海外のリハビリ事情」をテーマに
海外でも療法士として
活躍したいと思っている方、

海外から来られた患者さんとの対応に
困っている方へ
お届けして参ります。

 

【自己紹介】

初めてお会いする方も
いらっしゃると思いますので
簡単に自己紹介をさせていただきます。

私は2012年に
作業療法士免許を取得し、
同年6月にカナダへ留学いたしました。

2012年11月より、
カナダのクリニックへ
1年間勤務したのちに帰国、

その後は急性期〜生活期の方々を対象に
整形外科の病院・クリニックで
働いております。

現在は、
IAIR関東支部で
インストラクターを務める傍で

国際事業部を担当しており、
IAIRの国際化を推進しています。

 

【本日のテーマは?】

今回も、IAIR国際事業部のツイッターから
ほぼ毎日発信している文献の中でニュース
気になったものをピックアップしていきます。

本日のテーマは、
「代謝」です。

近年、人体の生体内リズムに関する研究が
進んでおり、
生化学の分野が非常に面白くなってきています。
(もともと面白い学問と思うのですが。)

今回は、脳と内臓における体内時計の関係を考慮しながら
代謝についてざっくり私見をまとめて参ります。

【体内時計=間脳の図式は肝臓に当てはまらない??】

まずは、体内時計について触れて行きましょう。

全身のホルモン分泌をコントロールしている「間脳・視床下部」は、
永らく体内時計の中枢であると言われてきました。

ですが、近年の報告で
肝臓は間脳にその働きを
全てコントロールされているわけではない
と騒がれています。

Jessicaら 1)は、

体内時計は、これまで
間脳・視床下部の一部である「視交叉上核」で
コントロールされていて
内臓の動きも管理されていると考えられてきましたが

肝臓は独自に24時間周期で代謝を行っており、
たとえ視交叉上核から指令がきても、
シフトワークや時差ボケ、睡眠習慣の乱れなどの
外的刺激によって
肝臓での代謝が正常に行われなくなった
と報告しています。

肝臓は間脳・視床下部とは独立して
代謝リズムを刻んでいるという点は、
なんとも不思議な感覚がいたします。

また、大塚 2) の研究では、

加齢とともに
視交叉上核に付随する血管作動性腸管ペプチド
(VIPペプチド:末梢の血管拡張や消化管液の分泌を行う)
の変性または出力低下が起こり、

中枢から末梢への情報伝達が
スムーズに、かつ正確に行われなくなるため
体内時計が崩れていくのではないか、

と、さらに詳細な過程が報告されています。

つまり、肝臓の代謝障害は

1. 肝臓そのもののリズムが間脳・視床下部とマッチングしていないため
2. 間脳から肝臓への情報伝達が十分に行われていないため

に起こり得るのではないか、ということです。
(間脳・肝臓自体に異変がない状態での仮定です。)

肝臓は脳・骨格筋と並んで、
エネルギー代謝量が多い部位ベスト3に入る部分ですので、

カロリーをベースとした食事制限を考えるときには、
この間脳と肝臓の生体内リズムを考慮することは
極めて重要となってきます。

肝臓の主要なマーカーといえば…
それは、こちらのコラムをご参照ください。

 

【体内時計の乱れが及ぼす影響??

次に、少し視点を広く、臨床的にいたしまして
全身の体内時計の乱れがどのように疾患と関わるのか?
についてまとめます。

Peianら 3)は、

2型糖尿病をお持ちの方に、
・睡眠時間が6時間以下
・主観的に良い睡眠とは感じない
という特徴が

お持ちでない方と比較して
約1.4倍、特異的に見られたと報告しています。

また、Laetitiaら 4) は、

病院に勤める夜勤勤務者419人のうち、
睡眠に関して悩む人、
食生活に関して悩む人に
強い関連が見られ、

また、
419人中196人が看護師さんで、
377人は女性だったと報告しています。

さらに、M Mackusら 5) によれば、

・偏頭痛が一時的に発生する
・偏頭痛が持続的に発生している
睡眠が十分でないと感じている方は、
どちらか1つ以上の特徴が当てはまる傾向にある
と報告しており

睡眠が偏頭痛の有無で左右されることを示唆しています。

このように、生体内リズムを臨床的に分析してみると、
シフトワークが睡眠、食生活、代謝に大きく関わっていることが
わかります。

 

【筋組織への影響??】

では、筋組織には
どのように影響を及ぼすのでしょうか?

「カヘキシア」という言葉を、お聞きになられたことはありますか?

Farkasら 6) によれば、
カヘキシアは代謝障害の一種で、
サルコペニアと異なり、蛋白異化による筋萎縮のほかに
食欲不振や炎症反応の亢進が特徴のようです。

(サルコペニアにつきましては、
こちらのコラムをご参照ください。)

特にガンや糖尿病など慢性疾患では、
継続して炎症反応が起こり続けている状態なので

炎症反応を落ち着けるために
常にエネルギーを消費する環境に陥ることとなります。

このときに活性化される「炎症性サイトカイン」は、
筋組織を分解し、炎症反応を活性化させる反応を見せます。

2017年にLoumayeら 7) が報告した内容によれば、
卵胞刺激ホルモンの分泌を促すアクチビンAという物質が、
カヘキシアを持つがん患者さんに特異的に増殖して見られたそうです。

これまでの情報をまとめると、

・睡眠が十分でないと感じている
・食が細くなった/ついつい食べ過ぎてしまう、などの悩みがある
・最近、どんどん痩せてきている気がする
・関節が腫れた状態が続いている
・局所/全身の微熱が続いている
・むくみが取れない

などの臨床所見が見られる場合は、
単なる運動不足や筋力低下とまとめる前に

普段の生活リズムのチェックや
既往歴や服薬状況をしっかりと確かめておくことが
リハビリテーションにつながるかもしれません。

 

【ワールドワイドとスモールジャパン】

ざっくりとお伝えしておきながら
結局、非常に長くなってしまいましたが

それほどに代謝を知った上で運動療法を考えることが重要、
ということが私見をまとめた感想でございます。

個人的には、
日本国内の報告は、細部をつき詰め原因を究明する傾向が強く、
海外の報告は、一般の方々に、仮定した「原因と現象」が当てはまるのかを
検証する傾向が強いように感じます。

分野によるのかもしれませんが、
情報を整理する上では
ひとつの参考にできると思います。

新たな疑問を発見するためには、
日本語での研究報告だけではなく

英語での研究報告も見逃せない、と
私自身は感じております。

IAIRは、
患者さんのために頑張りたいと願う療法士、
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全力で支援いたします!

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*参考文献・参考資料

(1) 肝臓の代謝とその障害における概日リズム:
Jessica M.Ferrell et al.Circadian rhythms in liver metabolism and disease.Acta Pharmaceutica Sinica B.2015.5(2).113-122.

(2) 大塚 邦明.老化と高齢者の時間医学.日老医誌 2013.50.288-297

(3) 睡眠の質・睡眠時間と2型糖尿病との関連:
Peian Lou et al. Relation of sleep quality and sleep duration to type 2 diabetes: a population-based cross-sectional survey.BMJ Open 2012.2.e000956.

(4) 偏頭痛と睡眠-双方向性の関連-:
M Mackus et al.1161 MIGRAINE AND SLEEP: A BI-DIRECTIONAL ASSOCIATION.Sleep.2017.40(1).A433

(5) ローエン大学病院に勤める夜勤従事者の、体重過多と摂食障害に陥る危険性の傾向:
Laetitia Rollin et al. Prevalence of Overweight and Eating Disorder Risk of Hospital Night Staff at Rouen University Hospital. J Food Nutr Disord.6(5).

(6) 主要な公衆衛生問題としてのカヘキシア:
Farkas Jerneja et al.Cachexia as a major public health problem: frequent, costly, and deadly.Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle.2013.4(3).173-178.

(6) 血中を循環するアクチビンAは、がん患者の中で生き残っている
Loumaye A, et al.Circulating Activin A predicts survival in cancer patients.J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2017. 8(5). 768–777.

 

今後、IAIR国際事業部が発信するコラムでは
海外の療法士や患者さんと
交流できるようになるために

「海外のリハビリ事情」をテーマに
皆様にお届けできればと思います。

リハビリ分野に関わりながら海外へ出てみたい!
と思われている方は、
ぜひ「IAIR国際事業部」をチェックしてください!

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

IAIR国際事業部

吉田頌平

 

【P.S.】

【新コーナー、始めます。】

さて、今回より
旅先でも英語が使えるようになるための
「本日の英単語」コーナー!

今回は、「sleep」を取り上げます。

 

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