第99回「無意識の歩行を獲得していくための学習段階」

From.IAIR 福留良尚

 

 

脳梗塞後のリハビリテーションにおいて、歩行練習をする上で大切なことは3つ。

 

  • 転ばない
  • 実用性がある
  • 歩くことが目的ではない

 

(もちろんこの3つだけではないですが..)

 

 

余談になりますが、この3つ目の「歩くことが目的ではない」について。

 

私たちセラピストは、歩くことが出来れば在宅に帰れる、外出できる、生活範囲が広がるといった展望を持ちます。

 

もちろんその通りですが、患者さんはその先の目的のために歩行という手段を用いています。

 

 

例えば、トイレに行く、そのために歩く。

 

人間の排泄は、生きる上で必ず行わなければいけません。

 

歩かなくても生きてはいけますが、生きている以上排泄しないといけません。

 

 

何のために外出するのか?

 

散歩がしたいのでしょうか、買い物に行きたいのでしょうか、それとも趣味の山登りがしたいのでしょうか。

 

歩くことが出来れば、確かにそれらの目的は達成されるかもしれませんが、リハビリの段階で歩行獲得という目標だけを掲げても、患者さんのモチベーションは上がらないかもしれません。

 

 

何故なら、人は情動(意欲・欲求)によって動作をスタートさせるからです。

 

 

具体的な脳の部位で言えば、大脳辺縁系や脳幹といった部分。

 

これらは運動指令を直接下す部分(運動野)ではありませんが、ここが機能していないと運動学習は進展しません。

 

この情動という部分を先ずは引き出すことが大切であり、その上で運動学習を進めていきます。

 

 

Fittsの3相説

 

無意識の歩行を獲得していくためには、その学習段階を知る必要があります。

 

学習を積み重ねて運動技能が向上していく様から①初期相、②中間層、③最終相に段階化したものがFittsの3相説です。

 

 

①初期相

 

認知相ともいわれ、運動課題や目的達成のための方法の言語的理解から始まります。

 

例えば、初めの一歩を踏み出すためには、その反対側へ重心を移動させなければなりません。歩き始めや座り込むときには、その課題の順番を一つずつ確認しながら練習を開始していきます。

 

 

②中間相

 

連合相ともいわれ、個々の運動が滑らかな協調運動へと移行していきます。

 

ここで重要な働きをするのが、感覚フィードバックと結果の知識(こうすればああなるといった)と言われており、自ら運動の誤りを修正出来るようになります。

 

 

何度も最初の一歩を踏み出す練習を繰り返すことで、どの程度重心移動すれば反対側の足がスムーズに、しかも安定して踏み出せるか言葉にせずとも出来るようになっていきます。

 

特にこの段階では、感覚のフィードバックをセラピストと繰り返すことが重要です。

 

圧感覚や筋の収縮と弛緩、もっと言えば固有受容器からの感覚を言語化してあげることで、患者は運動との連合を図ることが出来るようになっていきます。

 

 

初期相の「何をする」から「どのようにする」を学んでいく段階と言えるでしょう。

 

 

③最終相

 

自動相ともいわれ、基本的には中間相の延長です。

 

運動は空間的および時間的に高度に結合され、無駄がなく、はやく、滑らかになり、手続きは自動化され、運動に対する注意は減少し、言語は運動遂行に不要になります。

 

 

ここで初めて「無意識の歩行」獲得段階になってきますが、片麻痺を持っている方がここに来るには、相応の時間と練習量が必要になってくるでしょう。

 

「無意識の歩行は出来るのか?」と言われると、重度な後遺症があるとするならそれは難しいかもしれません。

 

 

「転ばない」を優先させるべきかもしれませんし、「実用性がある」歩行を目指すのも予後予測としては必要でしょう。

 

大切なのは、患者さんはどの段階が難しいのかをしっかり把握することです。

 

初期相なのか、中間相なのか、最終相なのか。

 

 

初期相であれば高次脳機能の問題があるかもしれませんし、中間相であれば感覚統合の問題や、非神経原性要素の問題もあるでしょう。

 

最終相に行かずとも、「歩行が目的ではない」歩行は出来るかもしれません。

 

情動による開始と、目的に向かうための一プロセスとしての歩行を獲得できたなら、患者さんのADLの広がりは、御自身でも拡大していけるはずです。

 

 

脳卒中に対する運動学習を学ぶならコチラがお薦めです。

 

 

それでは最後まで読んでいただけてありがとうございます。

 

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一般社団法人 国際統合リハビリテーション協会

常任理事 九州地区責任者 理学療法士

CCRA認定インストラクター

福留 良尚

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