精神科作業療法は2時間1単位、作業療法士一人につき25名の患者と同時に関わることができます。リハビリテーションの枠内で許されているものです。合目的にリハビリテーションを行い、患者さんの生活でより良い選択ができるようにしていくのですが……病院完結型医療から地域完結型医療と転換していくなか、リハビリテーションはあくまで3次予防です。2次予防、1次予防ではありません。さて、このままでいいのでしょうか?
◆ 予防という考え方
そもそもですが、予防が1次予防、2次予防、3次予防という言葉をご存知でしょうか?治療医学ではなく予防医学のなかから出てきた言葉です。大枠で言えば、疾病予防、障害予防、寿命の延長、健康増進などが目的であり、病気を未然に防ぐ、病気の進展を防ぐ、再発を防ぐことです。改めて分類してみると……
- 一次予防:健康増進、疾病予防(生活における健康増進)健常者
- 二次予防:早期発見、早期対処(適切な医療による早期治療)ハイリスク者
- 三次予防:リハビリテーション(社会復帰の支援、再発予防)患者
といわれています。
精神科作業療法士の多くの方が関わっている対象者は、患者であり、三次予防の対象者です。
さて、これからの時代、このままでいいのでしょうか?
(*厚労省:介護予防のための生活機能評価に関するマニュ アルより)
◆ 病院内に引きこもっていると三次予防以外に目が向かない
予防医学が精神科作業療法で話題になり始めたのは2005年頃だったでしょうか。既に10年以上前です。今でこそ当たり前に語られるようになりましたが、当時は方向性と重要性がわかっていながら着手できずにおりました。前回にも少し話題にしましたが、看護部には理解してもらえなかったのです。もちろん経営陣もですが、経営陣を納得させられるだけのプランを準備できなかったというのが正確でしょう。ですが、その結果が前回話題にした通りの精神科作業療法の現場です。作業療法士の能力を燻らせていくだけでしょう。
◆ 精神科作業療法士が二次予防に関わるには?
二次予防は医療による早期治療と先に言いましたが、早期発見に関わることはできないものでしょうか? 検診などで早期発見をと言われていますが、ストレスチェックなどは現状医師のみで、看護師と精神保健福祉士の要件が待たれているところ。一般企業等のメンタルヘルスに関わり、早期発見するには現状医師を介する必要がありそうです。
では、そこではない関わり方を模索していくと、やはり一次予防で活動することで二次予防に繋げられると考えた方が良いのかもしれません。
◆ 精神科作業療法士の行う一次予防活動は何があるか?
一次予防は健康増進、疾病予防です。となれば、現状三次予防として行っている精神科作業療法の内容を目的と対象を変えて行うことでしょう。いきなり全く違うことをするのは、ハードルが高いものです。今行っていくことを大きく変えることなく実施できることをしていくのが良いでしょう。脳科学的根拠に基づいた集団療法セッションをメンタルヘルス予防プログラムとして行うのがすぐできそうですね。
ただ、課題はその場をどのように作るのか……です。市民講座などに積極的な病院ならそのような場がすぐ作れるかもしれません。また文化祭などを行っているなら、その場で市民講座の小さな実績作りをしていくのもいいでしょう。ですが、全く行っていない病院、作業療法科だと、少しだけハードルが上がるかもしれません。一つずつ検討を重ねつつ、進めていくことをお勧めします。
◆ 本日のまとめ
色々とお話しましたが、まとめると……
- 治療から予防の視点を持とう!
- 2次予防の布石として1次予防を検討しよう!
- 1次予防は出来ることから始める!
僕ら作業療法士が関わるのは人の人生です。人生においてより良い選択をしてもらう為にも、身障系、精神科系などの分野にこだわらず、患者さんと関わっていきましょう!
作業療法士 齋藤 信
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