高齢者のリハビリで「筋トレ」を選ぶ前に読んでください

高齢者のリハビリでも「筋トレ」が有効でしょうか?

高齢者のリハビリでも筋肉は裏切らないでしょうか?

適切な負荷や栄養摂取に注意が払われていないリハビリもあるようです。

 

筋トレの効果と、高齢者特有のパターンについていくつかの論文を調べてまとめました。

高齢者のリハビリに携わる人は是非お読みください。

 

筋トレの効果

リハビリテーションのプログラムを立てる時に「筋力トレーニング(筋トレ)」と書くことが多くないですか?

医師からのオーダーにも「筋トレ」と書かれたりしますね。

介護予防の分野でも「筋トレ」推しの趣があります。

 

アスリートがパフォーマンスアップや怪我予防に筋トレを行うことには同意できます。

疾病状態にない人が健康維持のために筋トレを行うのも同意できます。

しかし、高齢者の生活復帰を目指すリハビリで、筋トレは効果があるのでしょうか?

 

 

筋トレ後の「筋トレした感じ」

筋トレに効果を感じることは実感としてはあります。(個人の感想ですが・・・)

 

筋トレに効果があると思い込む理由は2つあると思うんです。

1つは「やった人が疲れる」から。

筋トレ後に手足がだるく感じたり、筋肉痛を感じると「頑張った感じ」があります。

それは、脳が「何か良いことをした」と錯覚するには十分すぎる感覚でしょう。

 

もう一つは「一時的に周径が増す」から。

筋トレ後は、腕が太くなったり、太ももやお尻のボリュームが増した感じがします。

実際に周径も増しています。

腹筋なんかは割れた感じがしますし、大胸筋も大きくなった感じがします。

 

でも、これらの一連の現象は毛細血管の拡張とそれに伴う血液の流入によるものです。

硬くなった感じがするのは細胞内の代謝産物により細胞が膨れていることから、とも言われています。

(実際、そんな感じもします)

 

これら二つの理由が、「筋肉がついた感じ」という感覚を生むのだと思います。

筋力はそう簡単にはアップしません。。。

 

時間が経つと筋は元の太さに戻っています。

定期的に刺激を加え続けないといけないのです。

筋力アップは1日にしてならず!

 

筋力アップ

筋力は筋断面積に比例します。

一回、筋トレをしたことで筋断面積が増すほど、体の仕組みはシンプルではありません。

(それを可能にするのがドーピングなのでしょうか・・・)

 

筋断面積を増やすにはホルモン分泌、栄養が必要となります。

参考:「筋力低下」が症状の原因だと判断するときにに思い出してほしい生理学的解釈

ホルモンが適切に分泌されるように体を整えていくことが、筋力アップに重要なファクターです。

どの程度の運動強度にしたら、適切にホルモンが分泌されるかをコントロールするのが、リハビリ職者の関わりともいえるでしょう。

 

クライアントの年齢、体格(身長、体重)、生活の中の日内変動(サーカディアンリズム)などを踏まえてメニューを決めていきたいですね。

 

高齢者の筋力アップに必要なこと

筋力アップ(筋断面積、筋量の増大)にはレジスタンストレーニングの後の休息が必要だと言われます。

ホルモンの分泌により、トレーニングで傷んだ筋線維の修復のために栄養を取り込む時間が必要とのことです。

これをトレーニングする人たちの間では「超回復」とよんだりしています。

 

では、取り込む栄養はどのくらい摂取すると良いのでしょう?

タンパク質に注目してみます。

 

高齢者と若年層では、必要とされるタンパク質量に違いがあるようです。

高齢者であっても、若年者であっても、タンパク質の摂取量には限界があるみたいです。

ある量を超えると、いくら食べても筋として使われないようです。。。

 

引用:https://academic.oup.com/biomedgerontology/article/70/1/57/2947642

高齢者であれば、0.4g/kgを超えてタンパク質摂取しても、筋として合成されないのでは?という報告です。

 

材料となるはずのタンパク質摂取に限界があるのですね・・・

食べりゃいいってものでもない。

そもそも、消化、吸収能力自体が落ちる傾向にあります。

酵素やホルモンの働きに加え、栄養摂取量と年齢を考慮して、トレーニング負荷量を決めないと効果は得られにくいのかもしれません。

 

高齢者のリハビリで筋トレ?

さらに、以下の報告は同じタンパク質を摂取するにも、一度にたっぷりのタンパク質を取るよりは、時間を空けて少量ずつ取る方が筋合成されやすいことを示唆しています。

引用:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23459753

 

実際にこのペースを守ろうとすると、プロテインとかが便利なのかもしれません。

消化吸収能力の低下している高齢者には、プロテインは有効かもしれませんが、この頻度は、、、。

 

 

これらの報告を元に、高齢者のリハビリを「筋トレ」として立案しようとすると無理がありませんかね・・・

STGとして筋力向上が達成できる場合もあると思います。

それは筋肥大が理由か?

という話です。

 

痛みが和らぐだけで力は出しやすくなります。

その「痛み」は様々な要因を含みますので、トレーニングが何かしらの原因を取り除く可能性はあります。

 

 

トレーニングは日々フォーカスする場所を変えながら、毎日同じ部位に負荷をかけることがないように推奨されます。

通常のレジスタンストレーニングは、そのくらい強い負荷をかけるものです。

当然、血圧も心拍数も上がります。

そうなれば血管にはそれなりの抵抗になるわけで、動脈が硬くなっていることが多い高齢者にはそもそも、強い負荷のトレーニングは向かないのでは?と思います。

 

トレーニングによって血流量が上がり、ポジティブな効果が期待できたりもしますが、リハビリテーションを必要とする高齢者は多くの場合体が弱っています。

 

さらに、栄養摂取量に関しても、栄養摂取のタイミングに関しても、現在の公的なサービスでは個々に対応したきめ細かいサービスは困難です。

それはつまり、効果的に高齢者の筋力アップを導くのは、かなり難しい状況であると言わざるを得ない。。。

 

でも、ちょっと待ってください。

そもそも筋力アップしないとダメなのでしたっけ?

 

ADL能力を高めたり、介助者の介助量を減らしたり、社会復帰に向かうにあたり「筋力アップ」は一つの作戦にしかすぎませんし、もっと言えば筋力アップしなくても「活動」に変化は起こります。

 

関節を動かすことに意義がある

活動の制限になっていたり、痛みの原因になっているのは「体が(関節が)思うように動かないこと」であるのですが、その原因が「筋力低下」であるとは限らないわけです。

 

関節の動きを改善する目的で「低負荷」のトレーニングを行うのは問題ないでしょうし、筋力アップを狙わないので栄養摂取に目くじらを立てなくてもいいわけです。

 

そうなると「低負荷のトレーニングってなんだ?」となるわけですが、それは体操であったりレクリエーションで十分なのですね。

アウトカムを筋力に置かなければ。

(そういう意味では1kgくらいの重錘バンドを手足に巻きつけ、ブラブラしてるのは意外と効果的なのかも?)

 

筋力をアウトカムにすると、

筋力が向上しました。
→しかし、ADLは変わりませんでした。

ということも起こります。

 

そんなことを目指すわけじゃないですよね?

 

筋力にとらわれずに、生活や活動を見ていくときには「引き算」で考えていくといい場合もあります。

(筋力アップは足し算ですね)

 

意識できていない部分に意識を向かわせたり(認知療法、神経学的アプローチ)、硬くなっている関節の可動性を高めるといった考え方です。

「邪魔しているものを取り除く」わけです。

 

痛みの除去に関してもそうですね。

 

徒手でのアプローチが必要な場面もあるでしょうし、あえて触れないやり方も必要になるかもしれません。

どちらにしても、患者さん本人に動いてもらう場面はたくさんあります。

その運動の源は筋収縮によって起こることは間違い無いのですけど、その筋収縮の強さだけが回復のパラメータになるわけじゃ無いと思っています。

 

 

引き算の考え方

どうしても「足りないところ」を探して、それを「足して」いく解決方法を選択しがちです。

多くの場合、「余計な何か」を取り除くことで働いていなかった機能が表に出てくることも事実です。

その瞬間は患者さん本人も、リハビリ職者も嬉しい瞬間でありますね。

 

 

結合組織の運動を促し、組織間の滑走を生む「組織滑走法」は余計な何かを取り除く引き算の考え方にあたります。

組織滑走法はセミナー受講が難しい方向けに、オンラインでの講義もあります。

 

 

 

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