筋力低下→筋トレ?
膝の痛み、腰の痛みがあって、クリニックとかを受診すると、多くの場合「原因は筋力低下です」と言われちゃいます。
テレビ番組でも健康にちなんだ特集が増えてきて、「筋力低下」を不調の原因として、トレーニグすることを推奨しています。
本当にそうなのでしょうか?
「筋力低下」が機能制限の原因であると言い切るには、筋力の向上によって機能制限が解決されるということですよね。
当たり前ですけど。。。
でも臨床では
・筋力低下がないのに痛みがあるケース
・筋力が上がっていかないケース
・筋力が回復して来ても機能制限があるケース
を経験します。
そのようなケースに「原因は筋力低下です」
と言って
「筋トレしてください」
と伝えていませんよね?
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<参考>
筋力低下時に体内で起きていること、徒手でできることとは・・・→筋膜に対する徒手療法のための基礎知識【組織滑走法】
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原因が筋力低下だとしたら的確な指導です。。。
筋力ってどうやって上がってくるのでしょう?
筋力低下と筋量の低下
筋力について少し復習しましょう。
ムキムキのボディービルダーとスレンダーなモデルさん。
どちらが筋力がありますか?と聞かれたとしたら、どんな風に答えますか?
マッチョマンの方ですよね。
筋力は筋断面積に比例すると、養成校時代に学びました。
つまり、筋が大きかったら、それだけ力が発揮できるというわけです。
筋のサイズが大きいというのは、筋量が多いとも言えます。
ということは、筋力低下状態は「筋量が低下した状態」とも言えて来ますね。
合成と分解からみた筋力低下
私たちの体の筋が常に一定の形を保てるのは、なぜでしょう?
細胞が不変だから?
逆です。
分解と、合成のバランスが取れているからです。
筋量が増えているときは分解される筋よりも合成される筋の方が多いということが言えます。
合成のための材料とは?
材料はタンパク質ですね。
タンパク質を分解したアミノ酸を合成して筋を作ります。
消化吸収されたアミノ酸は主に腸内で保持されるそうです(タンパク質代謝回転速度が高いため)。
その後血漿中に放出されて各細胞の元へ行き細胞に取り込まれます。
その細胞内でも保持されています。
血漿中に流れているアミノ酸が勝手に筋繊維になって、筋肉にくっつくわけではありません。
血漿中のアミノ酸が細胞内に取り込まれないと筋組織は作られないのです。
(引用:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3595342/)
ということは、血漿中のアミノ酸濃度というものがポイントになるのではなってきますね。
血漿中のアミノ酸濃度が高いということは、
「アミノ酸が細胞に取り込まれていない」
「アミノ酸が細胞から放出されている(分解されている)」
が考えられます。
血漿アミノ酸濃度が低いということは
「腸から放出されていない」
「アミノ酸が細胞に取り込まれている」
と考えられます。
そもそも、タンパク質の摂取が少ないかもしれないし、タンパク質の吸収がうまくいっていないかもしれません。
y=ax+b
みたいにシンプルに解決できないんですよね。。。
筋量を増やそうとしたら
・タンパク質(アミノ酸)を消化吸収できること
・アミノ酸を細胞に取り込めること
が必要になりそうですね。
トレーニング方法考える前に、全身状態を確認しなければいけません・・・。
筋力低下とホルモンの働き
では、どうしたら細胞内に取り込むことができるでしょう。
それはホルモンの働きに委ねることになります。
細胞を合成する働きを「同化」と呼びますが、同化ホルモンの代表例はインスリンや成長ホルモンです。
え?インスリン?
インスリンは細胞内にグルコースを取り込むためのホルモンですよね?
その通りです。
アミノ酸を直接細胞内に入れるためではありません。
インスリンの働きが、筋量と関係するのは「体内タンパク質分解を抑制する」からなのです。
つまり、インスリンは細胞から血漿中にアミノ酸が放出されてしまうことを抑えます。
成長ホルモンの働きとしてタンパク質合成は有名です。
成長ホルモンは糖に対してはインスリンと逆の働きをします。
これらのホルモンの分泌が的確にコントロールされていることも筋量に影響します。
筋力トレーニング負荷と栄養
激しいトレーニングは筋の分解につながります。
トレーニングばかりを一生懸命に行っても、合成のための栄養が足りていなかったり、吸収がうまくいっていないと分解の方が上回ってしまいます。
そうすると、トレーニングをしているのに筋量が落ちてしまうことにもつながっていくのです。
(引用:http://www.rehabilimemo.com/entry/2017/04/15/132659)
トレーニングの負荷を相手の年齢とか性別とか疲労感だけで決めていくと、うまくいく場合とそうでない場合に出くわします。
その人の代謝能力を考慮して負荷を決めていかないとですね。。。
筋力低下と自律神経
そういった代謝能力、ホルモン分泌をコントロールしているものといえば、、、
自律神経ですね。
リハビリ、筋力低下、筋力トレーニングと何の関係があるんだ?
と考えるかもしれませんが、ここまでお伝えした内容にそのヒントが隠されています。
例えば、筋量のアップを狙ってタンパク質摂取を行なったとします。
まず最初にタンパク質の消化酵素にさらされる場所はどこでしょう?
「胃」ですね。
その「胃」の消化活動をコントロールしているのは?
交感神経と迷走神経(副交感神経)になります。
イライラしたり、考え事したりストレスを感じながら日々過ごすことや、睡眠時間が取れないことや、過剰な運動などでは副交感神経の刺激は少なくなります。
そうなると、胃の消化活動は停滞します。
その結果タンパク質の消化吸収に影響が出て来ます。
そうすれば筋量アップに必要な栄養(材料)が細胞に届きません。
どれだけトレーニングしても無駄になってしまいます。。。
交感神経が優位な状況というのは「血糖値をあげるホルモン」が出てきます。
そうなれば「血糖値をあげる」側面を持つ成長ホルモンの出番は減るかもしれません。
睡眠時間が少なければ成長ホルモンはなおさら分泌されにくくなるでしょう。
さらに最近、インスリン分泌の元になる膵臓β細胞を増やすためには副交感神経の刺激が重要であるとの報告も出ています。
交感神経が高ぶっている状態というのはインスリン分泌にも影響するのです。
インスリン、成長ホルモンなどの同化ホルモンの分泌低下は、筋量アップには繋がらない考え方もできます。
運動時、トレーニング時にはどうしても交感神経優位になります。
トレーニングしていない時の状況把握をすることも、筋量アップに関係してきますね。
筋力低下の原因はなんだ?
最初の方に戻りましょう。
何か活動制限、機能制限があった時、その原因は何なのでしょう?
「筋力低下」でしょうか?
こうやって見てくると、「筋力低下」も何かの結果のように見えてなりません。
例えば、筋量の減少に結びつようなイベントが体内で(あるいはライフスタイルの中で)起きて、それによって症状と結びついた。
その時、たまたま筋力テストを行なった時に筋力低下という現象が確認できた。
だとしたら、筋力トレーニングは原因の解決には直結しない雰囲気が出てきましたね。
筋力テストを行ったら低下している結果が得られた
→筋力トレーニング!
になる前に、「なぜ筋力が低下しているか?」を考えてみましょう。
もっと根本的な「その人自身(その人の考え方)」「その人の生活」というものを見ていった上でプログラムを構築しないとですね。
筋力トレーニグングの方法とかストレッチの方法(これらを枝葉のテクニックとか呼ばれたりします)について詳しく見ていくのも必要でしょうけど、トラブルが起きている原因について歩み寄っていく作業が本質なのだと思います。
よく、枝葉の議論、なんて揶揄されたりしますが、私は枝葉のテクニックも大事だと思いますよ。
さしあたっての解決方法を知ることは根本部分を解き明かすヒントになりますから。
枝葉のことが理解できないまま、本質の考えを展開しても、臨床とかけ離れる瞬間も現れます。
枝葉、いいじゃないですか。
少しずつ本質的な考えに降りていけばいいんです。
私も、まずは技術を身につけ、自分でできることを増やしていきながら、その理屈について考えていきました。
本質的な理論展開は技術を身につけたあとでもできますよ。
理論の学習が先、というやり方もありますが、自分の臨床現場を思い出してみると、何は無くともクライアントさんがいるわけなので、技術を優先した方が実践的ではありますね。
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