日本の抱える問題に、人口減少、高齢者率の高さが挙げられます。
人口は今後も減り続けることが統計上いわれている上に、高齢者の割合は高いままです。
そのため、社会保障費が国の予算のなかで大きな部分を占めるわけですが、人口減少が止まらないため国の歳入の見通しは暗いです。。。
かといって、突然人口が増えるわけではないですので、目下の対策としては「元気な高齢者」が多い状態を国は目指しています。
それが有効かどうかはなんとも言えませんが、労働者人口の少なさ、社会保障費の増大の両方を解決するアイデアとして理にかなっています。
この記事では「骨折予防」に絞った見解をいくつかの資料を参考にまとめました。
予防の取り組みや高齢者への生活指導にお役立てください。
高齢者数が増える意味と問題
我々が暮らす日本は高齢化を迎えています。
その影響は、様々な部分で出てくることでしょう。
最近の話題としては、診療報酬の改定なわけですけど、社会保障費、とりわけ医療費や介護費の上昇をなんとか抑えたいと、財務省は考えています。
そうはいっても、現状で「患者、利用者」となっている人は実際問題、存在していて、医療や介護サービスを受けているわけなので、社会保障費の膨張を抑制するために、患者数を突然減らせるものではないように思います。(できる部分もありそうですけど・・・)
年金をもらっている人数をいきなり減らすわけにもいかない。
年金の支給額をいきなり減らすわけにもいかない。
苦境に立ち続けています。
医療や介護の値段である「診療報酬、介護報酬」を下げることで、社会保障費の膨張を抑えようとする財務省に対して、厚労省や医師会は反対意見を出しています。
基本的な方向性は決まったようです。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000575289.pdf
改定率:https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000577669.pdf
高齢者の患者を減らすことは可能か
高齢者が増えてくると、それだけで病院を受診する疾病状態に陥ることがデータ上明らかです。
一つの要因に「骨折」が挙げられます。
骨折まで至らなくても、骨関節の痛みによって自立した生活が困難になり、介護状態に陥ることがあります。
そういった骨折や痛みによる活動低下状態を防ぐべく、介護予防の名の下に、体操教室、認知症予防、転倒予防教室などが行政や医療介護機関を中心に行われています。
そういった高齢者の教室やサークルなどでは、体操、ストレッチ、筋トレ、レクリエーションが多いようです。
今後「予防」への取り組みはもっと活発になることでしょう。
骨折に至る大きな原因は「骨粗鬆症」と「転倒」が挙げられます。
これらを防ぐことができれば、骨折または骨関節に起因する活動低下を防ぐことができて、いわゆる健康寿命を長くすることが可能かもしれません。
高齢者の疾病(骨折)予防でできること
そのために日常からできることはなんでしょう?
リハビリ担当者としてできることは限られるかもしれませんが、あえて「リハビリ担当者」という枠を超えて考えれば、私は「食事」がキーポイントになるであろうと考えます。
一般の人が骨粗鬆症の予防や改善を考えるときには「カルシウム」の摂取を思い浮かべます。
ただし、カルシウムの摂取は常識的な食事量に止めるならまだしも、サプリメントなどを用いてたくさん取り入れることは推奨されません。
カルシウムの摂取量と骨折の発生には関係がないようです。
カルシウムではないとしたら、どういった栄養を食事から取り入れたら良いでしょう?
高齢者の食事「タンパク質摂取量」
骨のような支持器官はコラーゲン組織で形成されています。
そのコラーゲンは様々なタイプがありますが、アミノ酸でできた物質です。
つまり、タンパク質から作られると思ってください。
タンパク質の摂取量と骨量で見ると、骨代謝においては低タンパク質は有害であるという見方をされています。
引用:Effect of Dietary Protein on Bone Loss in Elderly Men and Women: The Framingham Osteoporosis Study
逆に、食事中のタンパク質量が多いと、骨量減少も少ないようです。
骨の健康には食事によるタンパク質の摂取が重要な位置付けのようです。
では、タンパク質を食べまくれば良いのか?
一般的には、年齢が進むにつれて、タンパク質の摂取量は減っていきます。
タンパク質を分解する酵素(ペプシン、トリプシンなど)の働きによるものかもしれません。
消化器官そのものの状態によるものかもしれません。
タンパク質を消化、分解、吸収する能力が落ちていると、食べられなくなってしまうんですね。
高齢化
↓
消化吸収能力低下
↓
タンパク質摂取量低下
↓
骨量減少
↓
骨折
↓
不活動(活動性の低下)
↓
医療費、介護費増
という一つのループを考えれば、社会保障費の抑制のためにはよく食べること、特にタンパク質を食べることが重視されると考えることができます。
ただし、消化吸収能力が落ちた胃腸に対して、大量のタンパク質を取っても、栄養として摂取できず排泄することになってしまいます。
排泄できればまだよくて、腸内に溜まってしまう可能性(便秘)もあります。
消化吸収能力を保つために、若い時から適度に食べ続ける必要がありそうです。
高齢者がタンパク質を取りすぎるのは問題ない?
ではタンパク質の取りすぎでトラブルはないのか?
調べてみると、赤身肉の摂取が腎臓のトラブルにつながるという見解を見たことがあります。
引用:プロテインは腎臓にダメージを与える?〜現代の科学が示すひとつの答え
高齢になってくれば腎機能低下がある人の割合も高くなります。
そういう観点からしても、高齢者に対して大量のタンパク質摂取はオススメできません。
咀嚼嚥下機能から見てもスープなどで取り入れることが望ましいかもしれません。
大切なことは「弱ってしまう前の取り組み」です。まさに予防ですね。
高齢者になる前から大事な日光浴
成長期に限定した話かもしれませんが、ビタミンDは骨量に関係してきます。
そのビタミンDは食べ物からの摂取も可能ですが、日光に当たることで作られます。
紫外線を恐れすぎて、日光に当たらないことは将来の骨粗鬆症につながる可能性もあります。
季節による日光量の目安も載っていますので参考にされてください。
参考:http://www.orthomolecular.jp/nutrition/vitamin_d/
冬の季節に日光は期待できにくいですが、春や夏になったら十分に陽の光を浴びてみましょう。
骨折した高齢者をリハビリで担当するときは、最初は受傷部のケア、日常動作の獲得が中心になりますが、少しずつでも食事の方に目が向くようになるとその人に最適なゴール設定や生活指導の提案ができるようになります。
その時に代謝についての基礎知識があると、リハビリの効果を高めてくれることでしょう。
リハビリの担当者で栄養や食事に関する指導が難しければ、栄養士の力を借りて、「食事と運動機能」、「食事と認知機能」などをテーマにした教室を開催できるといいですね。
国は「健康な高齢者が増える取り組み」にインセンティブを準備しているようですよ。
まとめ
人口減少、高齢者率の増加は、日本の大きな課題です。
その課題に対しての取り組みは、あらゆる分野で進められています。
リハビリの分野からも積極的に貢献していけると、「疾病後のリハビリをしているだけ」の人材よりも周りに貢献できる人材となることでしょう。
周りの人のためでもありますけど、自分の未来のためにも情報発信をしていきましょう。
リハビリ技術者の臨床教育機関として、長年指導してきた内容(TGA)をオンライン動画で学ぶことができます。
体の悩みを抱えている患者、利用者に対して、直接アプローチできる能力は必須のものです。
【おしらせ】
リハビリではなく世の中のことを見つめた「福田のメルマガ」
毎週月曜日11:30にこっそりとお届けしています。
登録は無料でいつでも解除できます。
登録はこちらから。