こんにちは。ILPT 主宰 赤羽秀徳です。
前回に引き続き、
今回も「腰椎椎間板ヘルニア」について
お届けしていきたいと思います。
なぜなら。。
タイトルのように、
― MRI上椎間板ヘルニアがあっても、痛みが無い人も多い ―
ことを、多くの方に知ってほしいと感じているからです。
…
まず、以下の5項目をご覧ください。
・・
1:腰・下肢痛を有する(主に片側、ないしは片側優位)
・・
・・
2:安静時も症状を有する
・・
・・
3:SLRテストは70°以下陽性
(但し高齢者では絶対条件ではない)
・・
・・
4:MRIなど画像所見で椎間板の突出がみられ、
脊柱管狭窄所見を合併していない
・・
・・
5:症状と画像所見とが一致する
・・
以上の5項目は、ご存じでしょうか?
…
これは、
「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会
提唱の診断基準」
です。
つまり、
この5つを満たした時に
「腰椎椎間板ヘルニア」と
診断できる基準ということです。
◆腰椎椎間板ヘルニア診断基準の内訳
この診断基準の内訳は、
1.2.は、
【問診】により
3.は
【理学検査】により
4.5.は、
【画像所見】により
得られる情報ですね。
5つありますので、
覚える時にも、
問診 2つ
理学検査 一つ
画像所見関連 2つ
と覚えると覚えやすいかと
思います。
どれか一つの情報だけでは、
確定診断が難しいとされているので、
5つあるようです。
◆「ヘルニアだから」
さて、私は臨床で
次のような発言を聞くことが
よくありました。
「腰の痛みが続くので、MRIで調べてもらったら
ヘルニアでした」
「私は、ヘルニア持ちなのでしょうがないかな。。。」
など、
つまり、画像上の所見が
今の痛みの原因であると、
「限定」しているような発言です。
あなたは、いかがでしょうか?
そのような発言を
聞くことはありますか?
◆椎間板ヘルニアの診断は画像所見だけでは難しい
実は、
【画像上】の「腰椎椎間板ヘルニア」は、
多くの“無症状”の成人にみられる所見である、
といわれています。
腰痛や下肢痛が無くても
画像を撮ると「腰椎椎間板ヘルニア」の
所見がみられるということです。
このことからも、
腰椎椎間板ヘルニアの診断においては、
【問診】および
【理学検査】の重要性がかなり
強調されています。
◆問診のポイント
まず問診では、
腰椎椎間板ヘルニア診断基準の
1:腰・下肢痛を有する(主に片側、ないしは片側優位)
を確認するために、
痛みの 部位 および 分布領域 を
丁寧に確認することが重要とされています。
分布領域は、神経根の走行に
一致しているかが大切です。
(各神経根に対応する分布領域が、
あいまいになったときは、
その時、あるいはその日のうちに
手元にある書籍を確認すると記憶が
定着するでしょう)
この件に関しては、
次のような研究もあります。
「腰椎椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛
において、病歴と理学所見の意義を検討した
meta-analysis(文献総数37編)では、
病歴の有用性を述べた論文は、なかった。
診断に唯一有効であったのは、
疼痛の分布領域であったとしている」
…
この研究からも、
問診で、
痛みの【分布領域】を確認することは
外せませんね。
◆理学検査のポイント
次に、理学検査は、
腰椎椎間板ヘルニア診断基準では、
3:SLRテストは70°以下陽性
(但し高齢者では絶対条件ではない)
とされており、
SLRテスト陽性は、有用な所見とされています。
しかし、紹介したい研究があります。
(先ほどの同じ研究の中の報告ですが)
「腰椎椎間板ヘルニアが原因の坐骨神経痛
において、病歴と理学所見の意義を検討した
meta-analysis(文献総数37編)では、
SLRテストが腰椎椎間板ヘルニアによる
坐骨神経痛に対して信頼性のある徴候であり、
感度(sensitivity)0.85、
特異度(specificity)0.52
であったとしている」
さて、この研究の
【特異度】が、気になります。
…
【特異度】が 高い 評価法では、
ヘルニアでは、ない ケースは、
正しく、ヘルニアでは ない と
判定されます。
逆に
【特異度】が 低い 評価法では、
ヘルニアでは、ない ケースを
誤ってヘルニアと判断し
【偽陽性】の診断がついて
しまうことになります。
今回紹介した報告では、
特異度(specificity)0.52 と
されています。
したがって、
SLRテスト単独では、
およそ、半数のケースで、
【偽陽性】になってしまうことに
なります。
◆SLRテストの偽陽性を減らすために
皆さんも、
すでに工夫されていたり、
経験があるかと思いますが、
様々な方法により
ハムストリングの緊張を緩和することで
SLRの可動域が向上することがあります。
例えば、
下記のIAIRセミナーで
お伝えしている
腹部に対するアプローチ。
介入前後で、
SLRの角度が改善することが、
多くあります。
その他にも、
SLRの角度が改善する方法は、
骨盤からアプローチすることもできます。
これらの、アプローチを行うことにより
【偽陽性】か否かを判断できる評価結果が
増えていきます。
是非、正しい診断の一助にして
頂ければと思います。
◆まとめ
1.【画像上】の「腰椎椎間板ヘルニア」は、
多くの無症状の成人にみられる所見です。
2.「腰椎椎間板ヘルニア」の診断は、
問診・理学所見・神経学的所見・画像所見を
合わせ、【総合的な】判断が必要とされます。
3.誤った診断である【偽陰性】を減らすために
セラピストができる評価・アプロ―チを
広げていきましょう!
すべての人々の“ハッピー”のために。
参考書籍:
日本整形外科学会 日本脊椎脊髄病学会 監修
「腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン」
改訂第2版 南江堂
国際統合リハビリテーション協会
認定アドバンスインストラクター
複合的腰痛アプローチ
IAIR Lumber back Pain Technology(ILPT)主宰
赤羽秀徳
追伸1
偽陽性の方が、「私は、ヘルニアだから」という発言をし
あきらめていたらもったいないですね。
あきらめが希望に!変わる 視点をたくさんお伝えしています。
【ILPT腰痛治療セミナー】 今後の各地の日程詳細は、
こちらから>>> https://iairjapan.jp/backpain
追伸2
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